特別閑話 ハロウィンフェスタ
「カボチェを集めよう!」
とある秋の季節、ソフィーリアとアリスに声をかけた。
「カボチェ…………ですか?」
「カボチェってあれよね。外が緑で中が黄色い…………あれよね?」
「そうだ。そのカボチェを、今日は集めようと思う」
そう言って俺は、近くにあった愛剣ヴァルツを手にする。
この剣は鬼畜な鬼畜な現騎士団長に死の山と呼ばれる山に身一つでほっぽりだされたときに見つけ、俺の命を救ってくれた恩人…………恩剣だ。
岩山に鞘ごとぶっ刺さっていた。
因みにその後帰還した俺は、騎士団長をロープで簀巻にして上空50mから叩き落として死の山の山頂に置き去りにしてやった。
まぁ平気な顔で帰ってきやがったが………
そんなこんなでついに手に入れた貴重な休み。
俺は『ハロウィンフェスタ』にむけて、準備を進めることにした。
「えっと…………なんで急にカボチェを集めようと思ったんですか?」
「確かに収穫の時期だとは思うけれど…………そんなのは農家の人たちに任せればいいんじゃないかしら」
「まぁ今年はちょっと特別でね……………収穫しないと厄介なことになる」
「厄介なこと………ですか?」
「あぁ、リアとアリスは知らなかったんだっけ……………明日の10月31日。深夜零時になると………………カボチェが空を飛ぶ」
「「えっ?!」」
「しかも人を襲う」
「「ゑ?!」」
「合体もする」
「「えええぇぇぇぇ〜〜〜?!」」
「まぁ、その前に収穫しちゃえばいいだけなんだけどね…………そんなわけで、今日俺たちは農家さんの手伝いをしにいきます。因みに農家ってめちゃくちゃ強いから気をつけてね。
素手でコボルド制圧したりワイバーンとタイマン晴れるくらいには強いから。もし機嫌をそこねたらカボチェパラダイスより面倒なことになるよ」
「ナノシアくんがそこまで言う農家さんって………………もうそれ農家の域を超えてません?絶対冒険者のほうが儲かりますよね」
「まぁ確かにね。多分魔王軍とも戦えるくらいは強いんじゃない?」
「?ナノシア様、魔王軍ってなんですか?」
「っ、あぁ気にしないで!古代にいたとされる魔王とも戦えるんじゃないかなぁ?って思っただけだから!」
「そ、そうですか………」
あ、あぶねーー!もしかしたら転生者ってバレるかもしれなかった!ほとんど前世の記憶なんてないからどう説明すればいいか分からなかったし。
「と、とりあえず、今からカボチェ畑に向かいますよ!さぁ、準備して!」
「は、はい!」
「わかりましたわ!ナノシア様!」
そんなわけで、俺たちはカボチェ畑に着いたわけなんだが……………
「ナニコレ?」
見渡す限り、ゴブリンの死体が横たわり…………その近くには、無残に千切られたワイバーンの幼体。
そして周りには、鍬を持ち筋肉を誇張している農家の皆さんが………………
「ナニコレ」
もう一度、口に出す……………っていやいやいやいや!おかしいでしょ?!何この珍百景みたいな場所?!なんか農家さん雄叫びあげてるし!絶対農家の定義違うって!
後ろを向くと、口を四角にしながらアワアワしてるリアと、頭を抱えたアリスがいた。うん。だよね。そんな反応になるよね!
「アッハッハッハッハー!お久しぶりですナノシア坊!なんでも妻が二人もできたんですってなぁ!羨ましい限りですわ!」
そう言って一瞬で俺の背後をとり、背中をバシバシっと叩く。
若干、いやかなり痛いが堪えて、この惨状について聞いたのだが………………
「いや、なにそれバカなの?」
ほんとに、聞けば聞くほど頭が痛くなる。なにが『今年は出来が悪いっすね!魔物の血ぶっかければ栄養満点じゃね?よーし魔物狩りだー!』だよ!
上手くなるわけないじゃんむしろ臭くて不味くなるわ!
大体なんで肉体そのものまで放置されてんだよ!
リアとアリスの方を向くと、もう若干心を読み合っているのかうんうん、と頷いていた。
いや。ほんとになんで……………ハハハ。
そんな諦めの気持ちで家に帰ろうとすると、頭にカボチェを被ったゴブリンたちが一斉に起き上がる。
きっと、俺たちを怖がらせようと農家さんたちが不思議な力で持ち上げてるのだろう。こいつらならやりかねない。
まだ1回しか話してない農家の方を向くと、目をひん剥いて驚いていた。
って、お前らじゃないってことは!
「リア!アリス!魔物だ!戦闘じy「うおおおオぁ!」
…………………いや、ナニコレ。
農家さんが蹴りを放てばゴブリンが爆砕し、鍬を振るえば斬撃、肥料を撒けば散弾銃のように的確にゴブリンを討ち取っていく。
って、はっ?!
こんなこと考えてる場合じゃなかった!
俺は鞘から剣を取り出し、一番面倒なワイバーンの方に向かって駆け出す。
「リア!Aアシ!アリス!Cアタ!」
そんな略命令を飛ばすと、リアとアリスが正気に戻ったのかそれぞれ武器を取る。
リアが俺に向かって、今のところ使えるバフを全て使い、アリスはワイバーンに牽制で弓を放つ。矢はバシバシ弾かれているが、牽制なので得には問題ない。
その間に、俺は自身の剣にエンチャントしていき………ワイバーンの首を掻っ切る。
ズバッと切れた頭は、きれいな切断面を覗かせながら落ちる。
よしっ!とガッツポーズをしながら周りを見ると……………うん。見なかったことにしたい。
ゴブリンやコボルドの死体に囲まれながら、全身を血まみれにしてマッスルポーズを決めているおっさんたちがいた。
うげぇ……………気持ち悪。
あれ………………………もしかして……………………
「カボチェ、潰れてるんじゃね?」
俺の呟いたその一言は、やけにこの場に響き渡り、この後絶叫が鳴り響いたのは言うまでもないだろう。
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次の日
「「「「「「おかしくーださい!」」」」」」
街なかでそんな楽しげな子どもたちの声が響く中、農家の妻に折檻された男たちが悲鳴を上げているのであった。
(なお、他の普通の農家さんの育てたカボチェを、みんなで食べました)
(なお、農家の皆さんは、ゴブリンやコボルドの血に塗れたカボチェを食べさせられました。)
めでたしめでたし?
お久しぶりです!2週間ほど期間を開けてすいませんでした!塾が週五であったりイリュージョンコネクトというゲームのベータテストに当選して沼ってました。あと中々次が思いつきませんでした。
今週はテストなので、更新は来週以降になるかもしれません。
もしくは新作をまた投げるかもしれません。
なんか色々すいませんでした!