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41. 桐生静は、新たな仲間を紹介す

 アカメ・テンマと共にベースキャンプへ帰還後、白石さん達が出迎えてくれたので新たな仲間の紹介を行う。

「アカメとテンマだ」

「うわーっ、大っきいねッ!――てかオオタカだよねッ⁉︎私たちの世界にいるオオタカとは結構見た目や大きさ違うけど、すごーくカッコいいよッ!強そうだし、ものすごく頼りになりそう。テンマくんは頼もしい存在だねッ!」

 白石さんは身長が低いので、かなり見上げる形でないとテンマの顔を確認できない。見上げ、テンマの全長に驚きの声を上げた。アカメに関しては視線を逸らしてノーコメント。

 白石さんの気持ちは分かるぞ。俺もその気持ちが強くて狩ろうとしたわけだからな。まさかスキル持ちだとはつゆも思わなかったしな。

「セイ様はビックスパイダーとキングスカイバードの変異種を仲間にされたのですかなッ!感じ取れる魔力量の多さは……魔物一匹が持つには全く以ってそぐわぬ多さですぞッ!ビックリしましたぞッッ!」

 オロは全身をワナワナと震わせて驚く。目がクワッと動き、俺を見据える姿は――やってくれましたな?セイ様と全身で訴えかけてくるものがあり、どうやら俺はまた何かしらやらかしたのかもしれない。そう強く感じさせる強烈さがあった。やっべーぞと冗談を抜かせないレベルでな。

 アカメはビックスパイダーで、テンマがキングスカイバードの変異種か。キングスカイバードかなりカッコいい名前だな。かなり強そうなイメージだが実際に戦ってみて強いのは確認済みだ。名前に引けを取らない存在であろう。

「大きいですねぇー!セイさんの連れてくる魔物は皆さん強そうなオーラをバンバン感じられる方々ばかりですねぇー!すごーい!そんな方達を仲間にしちゃうセイさんはもっとすごーい!これでもっと安心でぇーす!」

 兎耳をピョコピョコ動かして喜びを表現するナナセはベースキャンプがさらに強固になったのを喜んでいるのだろう。現に今いる戦力だけでベースキャンプを守るのは容易かろう。逆に攻め込める戦力として見積れる。だが攻め込む気は毛頭ない。こちらに危害を加えるつもりで来る相手じゃない限り、アクションを起こす必要性はない。境界線外に近づく魔物は今現在一匹いやしないがベースキャンプに密集する魔力量の高いテンマを筆頭としたヨゾラ達に恐れて早々近づけないだろう。鈍感系ならばまた話は変わってくるが。今後出てこないと予測する。

 赤髪が何かしないとも限らないうちは戦力増強しておくに越したことはない。向こうはこちらの手札を知らない。知り尽くしてない今の状況下で闇雲に手出しするような相手でもない。テンデ・ダーメン侯爵の一件で同じ手は通じない。させないための一手だ。有象無象が集まる要因にはなってしまったが戦力分析して十分対処できると判断している。さらに対処可能をより盤石にするための布石として今回アカメとテンマが新たに戦力として加わえた。戦闘力を持つヨゾラ達がいる上、オロやエルフ一同もいざ戦闘が仮に始まればすぐに即戦力になってくれると予想している。まあオロ達が参戦するまでもない。そもそも戦わせるつもりは一切ない。その為の戦力であり、頼りになる仲間は整えた。今後も戦力増強は欠かすつもりはないけどな。

「ガゥガーゥ!」

「……ン!」

 声のする方向へ視線を向けるまでもない。声の主が誰かは察した。

 俺たちより早く到着していたヨゾラ・カゼマルが合流する。

 カゼマルの後ろにスライムが100匹いたのには流石に驚いたが。

「カゼマル」

「……ン?」

 当然悪気はない。当然の事をした。カゼマルは俺の考えを知らない。されど感じるものはあったのだろう。

「よくやった」

「……ン♪」

 冷たくて触り心地のいいカゼマルを肌で感じ、これでもかと撫でる。

「……!」×100

 フルフル震えるスライム100匹から敵対意識はなく、仲間として迎えてくださいという意思を感じ取れる。どれもこれもカゼマルには劣る実力だろう。だがしかし決めつけの判断は早計だ。この中にスキル持ちがいないとも限らない。十分に可能性はあり得る。100匹いるのだ。1匹スキル持ちがいたとして不思議じゃない。

「ああ。問題ない。カゼマルを群れの王(リーダー)として頑張ってくれるか?」

 そう投げかければ、

「……‼︎」×100

 言われるまでもない。最初からそのつもりでここへ来た。群れの王はカゼマルだと快く受け入れてくれた。

「カゼマル、群れの王としてスライムの皆を引っ張って行ってくれるな?」

「……ン!」

 カゼマルは首肯し、スライム達の方へ向き直る。

「……ン‼︎」

 カゼマルの掛け声で100匹のスライムが一瞬で規則正しく整列する。カゼマルが剣の形に変質し、青空へ向ける。ソレに習って一部分を棒切れの形に変え、地面にトントン叩くと同じく青空へ。全身をブルブル震わせ、何か起こるのか――と思ったが何もない。ただ一陣の風が吹きカゼマルが鞘を収める場所は俺であると剣で示し、ソレに習い息を合わせて棒を俺の方向へ向けて下ろした。それだけだ。害意はない。仲間の証なのだろう。

「スライムの行動にしては実に珍しいですな。セイ様を信じてついて行く。伝えたい想いは魔物であっても同じなのでしょうな」

「そうなのかもな」

 スライム100匹が新たに仲間になった。




 朝食後、ハッちゃんの元へ。

「セイセイ」

 開口一番あだ名で呼ばれる。悪くないな。

「ハッちゃん――狸汁作れるか?」

 要件を述べる。アナグマの魔物を狩った事。解体後のソレらを使用して狸汁が作れるかを早速聞く。

「狸汁ニャー?」

「ああ」

「具体的にどんなのかニャー?」

 この世界には狸汁という料理はないのだろうか。

「狸汁とは――」

 俺の知る狸汁を説明する。

 実際に作った事はない。狸汁料理経験者でない俺の説明がどこまで伝わったかで、狸汁の完成が遠のく可能性がある。説明不足だった場合、白石さんに助け舟を出してもらおう。

「なるほどニャー。狸汁作れるニャー」

 ポンと自分の手と手を叩き、ハッちゃんは自信ありげに答えた。その返事を受け、狸汁が間違いなく食べれると手応えを感じる。

「ハッちゃん楽しみにしてていいんだな」

 ハッちゃんに手を差し伸べ、

「朝飯前ニャー」

 ガッシリと握手を交わした。

「俺はまた今日も外に出かける。夕食に合わせて作ってくれるか?」

「いいともニャー」

 快諾してくれたハッちゃんに何度もありがとうと伝え、桑の実の話に移る。

「ジャム作りニャー?」

「ああ」

「美味しいのかニャー?」

「味は保証する」

「セイセイが言うならやってみるニャー」

「ジャム作りはもちろん手伝うぞ?」

「ありがとニャー。セイセイにはジャム作りよりパン獲得に努めてほしいニャー」

 桑の実の話をした際にジャムをつけて食べるパンがとても美味しいと力説したところ、ハッちゃんは興味が湧いたようだ。料理を作る専門家であるハッちゃんに確認したらパンはこの世界にある。侯爵領にあるかは知らないそうだが探してみる価値はあるだろう。

「わかった。必ずパンは手に入れる」

「頼んだニャー」




 ハッちゃんと別れた後、空輸ベースの隣に設置した倉庫へ。

 倉庫の中に一歩踏み込めば、

「デュフフフフ♪」

 楽しげな雰囲気を感じさせるコロナさんの背中を確認。少し離れた場所にはバギオが座り込んだまま俺の方を向き、軽く手を振ってくる。俺も手を振り返し、バギオの隣まで移動。

 移動距離は大してないので直ぐにバギオの隣に着き、積み上げられた鉄や鋼や銀など塊の山を確認する。

「バギオすまないな」

 コロナさんを一日中見守っていたであろう姿を想像して労えば、

「コロナは魔力切れ起こすまで頑張ってたんだぞ?キリュウ(てめぇー)が言うべき相手はオレじゃねぇー。コロナに言ってやれよ」

「そうだな。その通りだった。悪い」

「全然悪かねぇー。キリュウ(てめぇー)がオレに言うのは当然だが今回の功労者はコロナだって事に変わりはねぇーぞ」

「バギオの言う通りだな――コロナさん、1日で半分以上も済ませてくれてありがとう。助かる」

「デュフフフフ♪いいわ。気にしないで」

 俺に一瞬だけ視線を向け伝えると再び集中するコロナさん。とてもやり甲斐があり、目の前の事に熱中している。その姿はまさに錬金術師だ。

「で、キリュウ(てめぇー)はコレらをどう利用するつもりだ?」

「ベースキャンプの防衛力の強化に役立てる予定だ」

「防衛力な……今後必要なのか?」

「あって越した事はない。あの時しておけばと後悔はしたくないだろう?」

「それもそうだな。キリュウ(てめぇー)が必要っつんなら役立てて不要なものはねぇーな」

「残り半分は今日中に終わるのか?」

「昨日から続けてだからな。まぁーコロナ次第ってところだろーな」

「昨日と同じく無理のない範囲でよろしく頼むな」

「おう。オレが見てるうちは無理はさせねーよ」




 小人族は畑にいた。

 小人族の代表にサクランボの種を渡す。

「ありがとう」

「喜んでくれて何よりだ」

 端から端まで見渡せば、立派な畑が広がっている。畑の至る所に芽が芽吹いており、種を植えたのは問題無し。果物の種を利用した栽培は今後期待出来そうだ。今回手に入れたサクランボなどにも期待しよう。

「昨日は美味しい串焼きありがとう」

「美味しかったか?」

「美味しかった」

 昨日の夜、偶然遭遇したこの子に次元収納腕輪に収納していた料理――ニワトリの肉を使用した串焼きを上げたのだ。串焼きのタレは購入した美味しい材料からハッちゃんが一から作っているため、超美味いぞ。

「また今度小人の皆に持っていく事を約束する」

「ありがとう。たのしみ」

 小人族の代表は嬉しそうに駆け出し、畑で仕事する面々に「串焼きもらえるよー」と腹から透き通った声を出す。

「やったー♪」全員が喜びを上げるのを見て、串焼きの美味さが既に浸透して共有されていたのが察せられる。

 ハッちゃんがドタバタしない隙間時間帯に作ってもらえるよう交渉する必要があるな。そう考え、畑を後にして再びハッちゃんの元に赴いたのは必然ではなかろうか。無事串焼きは小人の皆に渡される事に。快く快諾してくれたハッちゃんには感謝しかない。

 小人族の全員が元奴隷の格好のままだったのは気がかりだ。おおよそ畑の作業で汚れるから格好はそのままのスタンスを取っているのだろう。本日侯爵領に行く上で子供用の作業服があれば獲得必須。子供用のお菓子などもあれば直良。脳内メモ帳に書き込む。




 ヨゾラ達の元へ行き、アカメ・テンマの住む場所はアクセル達の隣に決まる。暗闇がいいと提案されたので骨組みは頑丈な木材を使用し、窓一つない建物(土+木材)をイメージして完成。殻は消化してしまってない。耐久性に不安は微かにあるが後日改善すれば問題ないので後回しだ。テンマは高い場所がお好みで、ベースキャンプの中で一番高い柱に支えられた木造建てをイメージ共有して完成させる。巨根の大黒柱と何重層の複数柱がしっかり地面深くに刺さっているので耐震に強い。検証のため大黒柱目掛けてアクセルの爆発的な加速を加えてみたが余裕で耐えた。魔の大森林産の木々はとても強いのがよーく理解できるというものだ。巨根は木の精霊に頼み、アクセル達の隣まで運んできたのは割愛。

 ヨゾラ達とアカメ・テンマ・スライム100匹は争う気配はない。仲良く出来そうな感じなので心配する必要はないだろう。

 その後、白石さん達に再び侯爵領へ向かう趣旨を伝え、ベースキャンプから飛ぶ。昨日同様皆が手を振るのはお決まりなのだろうか?手を振り返し、侯爵領に向けて一直線で飛んだ。

 これより魔道具を用いて桐生静から偽りの自分(仮初めの面)となる。

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