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24. 桐生静は、掘り出し物を手にす

 ナナセのスキル無限の蔵に蓄えられていたテンデ・ダーメンの家財全てをベースキャンプにいる全員に分配した。

 食器や家具、ふかふかな絨毯や毛布といった生活必需品が腐る程入っていたのには驚いたがテンデ・ダーメンあの大男には感謝しかない。

 全員にテンデ・ダーメンの家財と一応配る前に事前勧告しておいた。なぜか?それは単純な理由である。奴隷を所有物としてこき使う外道な人物の持ち物だ。人によっては使いたくない。生理的に無理と言った嫌悪感がもしかすればあるかもしれない。そういった考慮を踏まえて、事前勧告していたんだが。杞憂であった。全員が全員、使えるものはナンデモ使う精神を持ち合わせていた。意外と皆、図太かった。

 そういった点は共感する。俺も使えるものはナンデモ利用する以上、文句は一つもない。

 テンデ・ダーメンあの大男の家財は無限の蔵の在庫全部品出し売り切れ大セールであった。あの大男も人のために役立てて本意であるだろう。知らぬは大男のみ。今頃くしゃみの一つはしてそうだな。

 皆が喜んで持ち帰る姿は一様に嬉しさでいっぱいだ。居住区が殺風景だっただけに色とりどりの家具などで埋め尽くされるのはいい。

 そういう俺の住む場所も数点選んで拝借しておいた。今からビフォーアフターが楽しみである。

 話は変わるが料理担当のハッちゃん達にとっても嬉しいことがあった。それは調味料である。食材を生かすも殺すも調味料一つで大きく差異が出る。その点、バリエーション豊富な調味料の数が多い。あの大男は食にもうるさいのかもしれない。そう推察する。結局はテンデ・ダーメンにはベースキャンプの充実を補填してくれた功労者として感謝している。本人には面と向かって言うつもりはないが。

 というわけで、今日の食事から料理が大きく変わるに違いない。

 ハッちゃん、楽しみにしてるぞ。




 昼食の焼き魚最高!ヤマメ似の魚は本格的に身がたっぷり。油があっさりして美味い。味が食欲をそそる。キノコは焼き魚と一緒に食べれば、歯ごたえがあって満腹感がある。果物の果汁は期待以上。果汁潤う。飲み水とは比べものにならないな。魚は日本人として食べないわけにはいかない。今後魚は生態系が破壊されない程度に捕獲は基本的にアリだな。皆、焼き魚と果汁両方好評だった。「わっ!魚だッ!でかいねッ!こんなのが泳いでるんだーッ!――おいしーーーッ!」と白石さんも俺と同じく魚を食べるのはあの日以来だから感動して美味しく頂いていた。ヨゾラ達魔物組も焼き魚は好評を博してペロッと食べたのには驚かされた。魚は今後も食べる。決まりだ。




 昼食を挟んで、壊れた馬車3台と武器を空輸ベースに確認しに行った。

 馬車に詳しい作業員こと馬人族の女性が言うには壊れてない違う部品を上手く利用すれば、小型の馬車1台は作れるだろうと。

 馬車の中には赤髪の名無しがゾンビに変えた者達のステータスプレートや魔道具があった。ステータスプレートは冒険者組合(ギルド)が発行してるものだそうで、国と国を移動する際や街に入る際に必要になるモノだそうだ。魔道具に関しては鑑定スキル持ちの鼠人族の女性が利用方法を説明してくれる。鑑定スキルを持っていなければ、魔道具と呼ばれる代物だとは気づけなかっただろう。もし捨てようとしたら精霊が魔道具だと教えてくれた可能性はあるが。

 ファミリア王国と敵対する国の間者とあって、魔道具もソレに対応した一級品であった。

 まず一つ。髪の色を変える魔道具。人数分あり試しに使ってみると一つ一つが変えられる色が違った。これは凄いなと感嘆した。

 次に銀翼の仮面と名称がある魔道具。コレは付けた対象の目の色を変える。看破妨害という付属能力があり、不意に相手が自身のステータスを覗こうとした時に妨害してくれるらしい。有能だ。目の色を変える点も素晴らしいの一言だ。ただ一つしかないのが残念でならない。こればかりは仕方ない。

 次に次元収納腕輪と名称がある魔道具。コレは名前の通り、物を収納することができる。されど、ナナセの無限の蔵と比較すると底が知れる。ナナセのは容量無しに対し、こちらは容量有り。どの程度入るか問えば、倉庫1個分と漠然としたものだった。倉庫1個分は理解できるが、どの程度の大きさの倉庫なのか想像が難しく今後利用して確かめるしかないだろう。

 次にただの指輪。魔道具と一緒の場所にあったものだが鑑定結果は魔道具ではない。指輪に何かしらの力があるか試しに装着したが何も起こらない。本当にただの指輪だ。指輪の表面に何かマークのような紋章が刻まれており、紋章の意味は不明。ただ分かることは一つ。使い道は今の所ない。以上。

 最後に武器の話だ。武器は全てミスリル製で出来ているようで、普通の一般的な武器に比べてキレ味が格段いい上に魔力纏もしくは魔術を乗せて戦うのに特化しているそうだ。伝導率がいいとお墨付きで鑑定持ちの鼠人から太鼓判を押された。

 馬車の中のものと武器を総合して判断するに敵国の間者はそれなりの実力者であったのが予想される。そんな団体を相手にあの赤髪の名無しは一人で相手取った。そう仮定して想定すると異常な強さを持っているのは確定だろう。少しの時間で読み取れるものはあったものの、名無しの底の深さは計り知れない。総評価しておく。

 何から何までありがとうと鼠人の女性にお礼を伝え、全ての魔道具とミスリル製武器とステータスプレートは次元収納腕輪に収納する。次元収納腕輪は左手に早速装着して、その場を後にした。




 俺の住む場所をヨゾラ達と一緒にビフォーアフターしていると来客があった。中に招き入れて、白石さん・オロ爺・ナナセの3人と話し合い兼雑談。名目上は赤髪の名無しと交戦する前のゾンビ戦の話であるが。

「えぇえぇー⁉︎ゾンビィー⁉︎」

 絶叫するナナセ。

「ゾンビと戦ったの?桐生くんッ!」

「ああ。ヨゾラとカゼマルが先陣切ってくれたから俺は戦ってないけどな」

「ガゥガーゥ!」

「……!」

「凄いねッ!」

「ガウ!」

「……!」

『もっと褒めろ!』

「頑張ったみたいだし、全力でモフモフしてあげるッ!うりゃうりゃりゃーーーッ!」

 白石さんがヨゾラとカゼマルを体全体を使ってモフる。

 見てるだけで、俺も癒される。

「ひぇー!ゾンビィー!怖いぃー!」

「ナナセ大丈夫か?」

「大丈夫じゃないですぅー!もしもですよぉー!もしもここにゾンビが襲ってきたらどうするんですかぁー⁉︎」

「もしも話か」

「ナナセ殿はここにゾンビが侵入された場合について気になる様子ですか」

「いやいや、ちょっと待ってよっ。現実味のない話だよッ?」

「現実味はないが、もしも話だ」

「マコ殿もしも話ですよ」

「もしも話なら、うーん。やっぱりゾンビ系の話を想定するなら侵入される前に立てこもるのは基本だよねッ」

「確かに戦える力がない非戦闘員は立てこもるのは間違いなくベストだろうな」

「マコ殿の言うとおりですな」

「さすがはマコさんですぅー。立てこもる、メモメモ」

「侵入される前提ならバリケード作るべきだよね。あとバリケードには触れたら感電するやつもセットでッ」

「電気柵か。なるほどな。それは活躍しそうだな。だがバリケードは作る必要はないな」

「そうですな。電気柵と奇妙なアイデアがマコ殿から出ましたが。セイ様が既に境界線に壁を作っておいでですからな。壁に到達するにも穴が手間に待っております。ゾンビ程度なら壁をよじ登る知能はなく、壁に到達する前に穴に落ちて串刺しで終了ではないでしょうかな」

「完全無欠ってことですねぇー!セイさん、もうバッチリ準備してくれてるじゃないですかぁーーー!」

「そもそも初日に作ってるから襲われる心配する必要はないんだがな。もしも話な以上はそもそもない段階からの話を想定するべきか?」

「桐生くん、もーーーッ!君って規格外だよねッ!バイオハザードの世界に住んでても余裕で生き抜きそうだから君の壁や穴の話はナシだよッ!侵入される前提の話でバリケードって話をしてるじゃん。話聞いてたッ?――はいっ。話を戻しますッ!バリケードを作るにしても支柱打ち込んだりワイヤー巡らせたり作業があるんだよッ」

「白石さんのもしも話に対する意欲は理解したが。ここには支柱やワイヤーはないぞ?一から作るつもりか?それに境界線全部バリケードで囲むのは現実的にありえないだろう?一番肝心の電気がそもそもない。もしも話にしても欠点が多過ぎる」

「ふむふむ。確かにマコ殿の案は正に良きアイデアですな。しかしセイ様の仰る通り、ソレを行うもの全てが不足した状態の場合は論外としか言いようがありませんな。少々辛辣に聞こえるかもしれませんが、もしもその状況になった際に無い物ねだりでは対策は空論でしかないのです。マコ殿」

「えーっと、つまりマコさんの話はもしも話では通用しないってことですかぁー?」

「もーーーッ。グーの音も出ないよッ!二人にボコボコにされたよーッ!二人とも指摘してくれるのはありがたいけど、私としては前提条件にバリケードありだとバリケード作るのに材料と手間とかこーーーんなにッ大変だよねッ!って話をしてるだけだよッ」

「そうだな。仮に境界線全部バリケードが囲めたとする。なら電気はどうする?電気柵を設置するにしても広いベースキャンプを賄うだけの電圧が安定して供給されないと電気柵の意味がない」

「うっ、そこまで考えてるわけないじゃん!桐生くんがいるわけだし、ババババッと電気を生み出せたりできるんじゃないのかなッ⁈」

「俺がいる前提というわけか?」

「もーーーッ!桐生くんのいじわるッ!アンポンタンッ!ドSッ!私の負けッ!降参ッ!まいりましたーーーッ!」

「セイ様この辺りでいいのでは?電圧でゾンビが倒せるかどうかは不確かで分かりませぬ。可能ならセイ様が電気を生み出すより物理で処理してもらった方がはるかに早いでしょう。もしも話はこの辺で、マコ殿は降参されたようですので……」

「もしも話だからな。元も子もないか。白石さん、悪かった」

「……許しません――と言いたいとこだけど、桐生くんの話は正論だから許すッ」

「とりあえずは作るより今の方がいいというわけですねぇー。セイさんが居ればぁ、ここは一番安全な場所ですぅー!安心しましたぁー!」

「もしも話は終了だな」

「最終的にはもしも話は別にいりませんでしたな」

「そうだねッ。桐生くんがどれだけ凄いのかがよーくわかったよッ。タイトルにするならゾンビだらけの世界で一人で余裕で生き抜くって感じかなッ。その主人公は桐生くんで、他の人達が共同戦線でゾンビと戦ってるのに一人だけ別の場所で余裕で生き抜くってお話とか今ので作れそうだよねッ!よし決めたッ!私無事に帰れたら桐生くんを基にした物語の絵本を描くよッ!いいよね?桐生くんッ⁉︎」

「……突拍子な話だな。白石さんがそれでいいのなら俺からは何もないぞ?」

「じゃあ決まりッ!その為に帰る手段を探さなくちゃねッ!」

「まだまだやるべきことが山積みで手が回らないがソレも最優先事項の中にある。いずれは探さないといけないな」

「セイ様は自分の故郷に帰られるお考えなのですかな?」

「えぇえぇー⁉︎セイさん帰るのぉー⁉︎」

「ああ。最終的な目的地はそうだ。だが今じゃない。今すべき事は今の目の前のことだ。ここにいる皆が暮らしていくだけの基盤を作り、この地を安住の地にしてからだけどな」

「セイ様あなたは本当に……」

「セイさぁーん。尊敬しまぁすぅー!」

「!」

 ナナセに抱きつかれた。

「桐生くんッ!」

「待て、これは不可抗力じゃないだろうか?」

「不可抗力?」

「ああ。不可抗力だ」

「オロ爺もそう思う?」

「いいえ。全く不可抗力ではありませんな。これはもうセイ様が持ち合わせた必然としか言えませんな。ハハハハハッ。セイ様あれ程昨日説き伏せたというのにまた同じ轍を踏まれますかなッ?」

「なぜだ?必然?オロ爺何を言ってるんだ?なぜ不可抗力だと分かってくれない?ナナセも二人に何とか言ってくれ」

「尊敬するセイさんともっと仲良くなりたいですぅー。セイさんもみんなと仲良くしたぁーぃーってそう思いますよねぇー。二人にはちゃんと伝わってますよぉ〜♪」

「桐生くん、デレデレしちゃって下心あるでしょッ?」

「セイ様、申し開きはありませんな?」

「さっきのもしも話だが白石さんの電気柵はとても魅力的だった。実用性もある。そうだッ!いいことを思いついたぞ?精霊が教えてくれたんだが魔石を利用した感知対策をだな――」

「桐生くんッ!」

「セイ様ッ!」

「「たっぷりと反省していただきますよッ(してくれるかなッ)!」」

「……わかった。くっ、殺――」

「「冗談抜きで反省していただきましょうかッ(してもらうっきゃないねッ)‼︎」」

 こうして、俺は白石さんとオロ爺両名に再び正座で2時間コースに突入したのは話すまでもないか。密着が過剰なナナセのみ不問なのは現実的にどうかと思うのは俺だけだろうか?否、誰かがきっと解ってくれる――そう強く切に思う。

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