GW前の日曜日
大学に入ってそろそろ1ヶ月が過ぎようというある日の夕暮れ時。
明後日からはGWが始まり今年は10連休もあるので、どうしようかと鈴羽と話していた。
「鈴羽の会社は休みなの?」
「うん、一応はお休みなんだけどずっと休んでるわけにもいかないから何日かは仕事かな?」
「そっか、10日も休みがあったら何をしようかなって思ってさ」
鈴羽の仕事の都合もあるし、どこかに出かけるにしても今からじゃ旅館なんて空きがないだろうし。
ピロン。
「ん?メール?……緋莉から?」
「緋莉ちゃん?」
「うん、何だろ?」
『お姉ちゃんとついでにお兄ちゃん(*・ω・)ノ明後日からそっちに遊びに行くからヨロシクね〜(≧∇≦)』
僕の携帯に送ってくるのに僕がついでにって……
「緋莉ちゃん、何って?」
「明後日からこっちに遊びに来るってさ」
苦笑しながら鈴羽にメールを見せる。
「ふふっ、お兄ちゃん、ついでになってるわよ」
「こないだまでは、お兄ちゃんが先だったんだけどね」
緋莉も中学受験が終わって、ほっとしたのだろう。
受験した中学は結構な難関で、よく通ったと思う。
「またしかし急だなぁ、もうちょっと早く連絡してくれればいいのにね」
「緋莉ちゃんらしいといえばらしいんじゃない?」
「まぁそうだけど」
鈴羽の言う通り緋莉の行動理念は「思い立ったらすぐ実行」だからなぁ。
「これって母さんと父さんは知ってるのかな?」
「知ってるんじゃない?って言えないところが義母様と義父様ね……」
父さんは仕事に行くと泊まりはしょっちゅうだし母さんは……家で会うことの方が珍しいくらいだし。
「大丈夫なんじゃない?ほら、えっと……是蔵さんが何とかしてくれるわよ」
「ホント、是蔵さんがいてくれて助かるよ」
僕は、実家に長く仕えてくれている柔和な笑顔の運転手を思い浮かべる。
「それじゃあ、緋莉が来たらどこに遊びに行くか考えておかないとね」
「そうね、どこか楽しめるとこあったかしら」
「う〜ん、動物園とか水族館とか?」
「GWだといっぱいぽいけど大丈夫かしら?」
「朝から行けば大丈夫じゃないかな」
晩御飯の支度をするため僕はキッチンへ、鈴羽は僕についてきてキッチンの端にある椅子に座ってコーヒーを飲む。
料理が壊滅的にダメな鈴羽は、僕がキッチンにいくと決まってこの定位置に座るようになった。
曰く、料理をしている僕を見るのが好きなんだそうだ。
「う〜ん、やっぱり料理ができる男の人ってカッコいい〜」
「そう?今更じゃない?」
「ええ〜っ、そんなことないよ〜いつ見てもカッコいいよ」
「ははは、あんまり見られると恥ずかしいよ」
「ふふふ、それこそ今更じゃない?」
僕が料理を作るのも、ちょっとでも美味しく作りたいと思うのも全部、鈴羽のためなんだけどね。
この日の晩御飯は、クリームシチューにパエリア。
後は付け合わせにポテトサラダと野菜スティックを少々。
我ながら中々の出来栄えだった。
鈴羽と一緒に暮らしだしてから、出かけている時以外は僕がご飯を作るので、心なしか料理の腕が上がっている気がする。
もちろん鈴羽は、満足そうな顔をして完食していた。
ちなみに食後のコーヒーは鈴羽が淹れてくれる。
コーヒーくらい淹れれるわよ、らしい。
朝食の時はサイフォンで淹れるから僕がするんだけどね。
まだ少し涼しいベランダで2人並んでコーヒーを啜る。
街はすっかり夜支度を済ませた繁華街の明かりが見える。
「ふふふっ」
「ん?どうかした?」
ベランダの柵に乗せた肘に頭をのせ僕を見る鈴羽。
「なんだか不思議だなぁって思って」
「何が?」
「うん、ほんの一年前までは見知らぬ他人だったのに、今じゃ……」
「今じゃ?」
「こんなに大切な人なんだなぁって思ったの」
頭を上げてそう言って笑う鈴羽は、少し照れくさそうで。
「それは僕も同じだよ」
「ふふふ、それもそうね」
大好きな、愛する人がいつも側にいてくれる。
手を伸ばせばすぐに抱き寄せられるほどに。
「中……入ろっか?」
「うん」
少し風が冷たく感じた僕は鈴羽の手を取りリビングへと戻る。
「皐月君〜す〜き〜っ!」
「わっ!」
「えへへへ〜」
ソファに座ろうとした僕に抱きついて頬ずりする可愛い鈴羽さん。
よしよしと頭を撫でる僕。
「うふふっ皐月君の手……好き」
ふにゃっとした顔をして目を細める。
ホントいつもながら、あの外で見ることのあるクールな感じの鈴羽が信じられない。
しばらくすると満足したのか、鈴羽が顔を上げてキリッとした顔で言う。
「皐月くん、おふろ、はいろ?」
きっと今日ものぼせるんだろうなぁ。
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