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水曜日の彼女 2nd season  作者: 揣 仁希
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相合傘と水曜日


我が家に帰ってきてしばらく。

お正月も明けて鈴羽は仕事に出かけていった。


社会人ともなると、そうそうのんびりと長期の休みを取ることも大変そうだ。


僕の学校はまだ始まらないので、今日は部屋の掃除をしたり洗濯をしたりと主夫よろしくあれこれと片付けをしている。

とりあえず一息ついてベランダでコーヒーを飲んでいると冷たい風が頬を撫でていく。


「さむっ」


今年も暖冬だといつかのニュースで言っていたけど、まだまだ一月は冷え込みがキツイ。

年が明けて一段と寒さが増した様に思う。

寒さもそうだけどベランダから見上げた空は薄らと曇ってきていて、晩方には雨になりそうな予感がする。


「……今日はお鍋にでもしようかな」


部屋に戻って僕は冷蔵庫の中を見ながら晩御飯の献立を考える。

野菜と豆腐はあるから、あとはお肉とうどんあたりを買いに行こうかな。

僕は献立を考えながら玄関を出て……下に降りかけて傘を忘れて取りに戻る。


玄関脇には普通の傘が入った傘立てと黒の番傘と赤の蛇の目傘が並んだ、ちょっと別にあつらえた傘立てがある。

仲良く寄り添う様に並ぶ傘を見て何となく幸せな気分になった僕は黒の番傘を手に取り、買い物に出かけた。


いつものスーパーでお肉やうどんを買い、例によって店員のおばちゃんとあれやこれやらと雑談をして店を出る。

時計を見るとそろそろ鈴羽の仕事が終わる時間だった。

残業がなく定時ならもうすぐかな?

僕はそう思いメールを送る。


ピロン。


「早っ!?」


送った瞬間、返信がかえってくる。

鈴羽さん?仕事してます?


『もう終わるからそっちに行くね』


絵文字とハートマークが沢山並んだメールを見て、クスッと笑ってしまう。

僕は買い物袋と傘を手に鈴羽の会社の方に歩いていった。


会社帰りの人達が駅へと向かう流れに逆らって、僕は鈴羽を探す。

大勢の人の中でも鈴羽を見つけるのは然程苦労はしない。


だって一際綺麗なんだから。


「おかえり、鈴羽」

「ただいま、皐月君」


スーツ姿の鈴羽は今日も変わらず綺麗だ。

僕の腕に抱きついて嬉しそうにする彼女。


「今日は残業なかったの?」

「うん。皐月君からメール来たから帰ってきたの」

「……えと、大丈夫?」

「平気平気!そんなに仕事もなかったからね」


そんな話をしながら2人並んで今来た道を引き返して歩いていく。

僕は今日一日、何をしていたかを。鈴羽は会社での出来事なんかを、他愛もない話でも僕にとっては幸せを感じるひと時だ。


商店街のアーケードを出るとポツリポツリと雨が降り出していた。


「皐月君、傘もってきたんだね。ふふっ、やっと活躍するね」

「ははは、飾りにしておくのも勿体ないしせっかくだから使ってあげないと。さぁどうぞ」


番傘を開いて僕は鈴羽を招く。


「お邪魔します」


雨上がりの虹の様な笑みを浮かべた鈴羽と相合い傘をして、僕は降り出した雨に少し感謝する。


そんなにきつくもないけど、傘がないと結構濡れてしまいそうな雨。

男性用の少し大きめの番傘は、手を繋いで寄り添って丁度いいくらいだ。


今時、番傘なんてさしてる人なんていないからすれ違う人が振り返っていたりする。


「ふふふ」

「ん?どうかした?」

「なんかこういうのって……いいなって思って」

「こういう?番傘?それとも相合い傘?」

「んふっ、どっちも」


僕にぴったりと寄り添う鈴羽はそう言って艶やかに笑う。

そんな鈴羽を見た僕はもう一度、振り出し雨に感謝した。





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