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水曜日の彼女 2nd season  作者: 揣 仁希
24/54

会食の火曜日



喜多嶋さんと友人になってから一か月が過ぎ、季節は6月に入りすっかり夏めいてきた。

あれから偶に喜多嶋さんと鈴羽も交えて夕食を食べに行ったりする間柄になっている。

特に取り立てて小難しい話はしないけれど、社会人としてどうあるべきか、人の上に立つ人間としてどうあるべきかを少しは学んだような気がする。





「皐月君!どうかな?」

「うん、似合ってるよ。凄く綺麗だ」

「そう?えへへっ」


鈴羽の仕事が終わった帰り道、僕らは待ち合わせをしていつか来たホテルのレストランに食事に来ていた。

と言うのも僕と喜多嶋さんが最近よく会っているのを聞いた門崎会長さんが自分も仲間にいれてくれと駄々をこねたせいだ。


何度も会ってはいるけど、ほんとに大企業の創業者なのかと疑わしくなるくらい自由な人で鈴羽の苦労が偲ばれる。


ともあれ場所が場所だけに僕も鈴羽も一応ドレスコードに合わせ、僕はあまり変わらないけど鈴羽は普段のスーツ姿ではなく薄い青色のワンピースタイプのドレスを着ている。


会長さんがとっていたホテルの部屋を出て僕の腕にそっと手を回し微笑む鈴羽はいつもに増して綺麗だった。


「ホテルの部屋までとってるんだね……門崎会長」

「そうなのよ、別にいらないって言ったのに……何だか変にご機嫌で」

「あはは、会長さんらしいと言えばらしいけどね」

「全くもうっ!」


あの人をくったような笑い顔の好々爺を思い出すと僕も自然に笑みが溢れる。

エレベーターに乗り最上階のレストランへと向かう。




「お久しぶりでございます。立花様、九条様」

「ご無沙汰してます。佐々さん」

「こんばんは、お久しぶりです」


レストランの入り口では料理長である佐々さんが出迎えてくれた。

料理長直々にということもありレストラン内のお客さんーー如何にも上流階級って感じの人達がーーの視線が僕らに集まる。


そりゃそうだよね、うん。僕も場違いだと思ってるよ。


佐々さんに案内されたのはテーブル席ではなく奥の方にあった個室だった。


「おぉっ!久しぶりじゃのぅ!」

「やあ、久しぶり」

「ご無沙汰してます。門崎会長、桂木社長」

「こないだぶりだね、立花くん」

「はい、こないだぶりですね。喜多嶋さん」


個室に入った僕と鈴羽を待っていたのは、門崎会長にフリークエージェンシーの桂木社長、喜多嶋さん、それに年配のご婦人がいた。

門崎会長始め男性3人は面識があるけど……このご婦人は誰だろう?


「まぁ堅苦しいのは抜きにして座りたまえよ、立花くん」

「あ、はい」

「会長!堅苦しいのはってこの面子で堅苦しくならない訳ないでしょう!」

「そ、そうは言うてもじゃな、いや、まぁ、その……何じゃ」

「全く……」


席について鈴羽が門崎会長にお小言をぶちぶちと言い出したのを喜多嶋さんと桂木社長が苦笑いして見ている。


「ふふふ、九条さんは相変わらずね?お元気そうで何よりですわ」

「はい、お陰様で。奥様もお変わりなく」


奥様?え?ってことはこの人は……


「あら、いけない。挨拶がまだでしたね。私、門崎の妻で千草と申します。宜しくね、立花さん」

「門崎会長の奥様……あ、はい!宜しくお願い致します」

「ごめんなさいね、この人があんまり楽しそうに話すものだからついて来ちゃったの」

「べ、別にワシはそんな楽しそうに話とらんわい」

「よく言うぜ、ついこないだだって俺んとこに来て喜多嶋が抜け駆けしただの何だのとしたこま喋って帰ったくせに」


桂木社長が意地悪そうに笑いつつ門崎会長をつつくと喜多嶋さんはバツの悪そうな顔をして苦笑していた。

しばらくすると料理が運ばれてきて、そこからは和気藹々とした会食になった。

喜多嶋さんと同じく門崎会長と桂木社長もあの茶会の場にいたので、その話題で盛り上がった。

結局桂木社長とも一個人として友人関係になるということになったんだけど……


「何でじゃ!ワシも友達でいいではないかっ!」

「ダメです!会長は私の上司です、公私混同になりかねません!」

「いやじゃ〜!そもそもこの場を用意したのはワシじゃぞ!桂木だけっておかしいじゃろが!」

「ダメなものはダメです!大体皐月君と友達って……会長お幾つですか!」

「歳を超えた友情もあるかもしれんじゃろ……」

「ダメですっ!」


鈴羽にピシャリと言われて、シュンとしてしまう大企業の創業者会長。

隣では喜多嶋さんと桂木さんが我関せずと某知らぬ顔をしていて、奥さんは終始ニコニコとそんな会長さんを見ていた。


結局、鈴羽に押し切られり形で会長が企んだ僕と友達になろう計画は消滅した。

そりゃそうだよ……


食事が終わり門崎会長は会社から呼び出しを受けて渋々と帰っていき、僕は桂木さんとアドレスの交換をしてレストランを出る。



「今日はありがとうね。あの人も楽しかったと思いますわ」

「いえ、こちらこそ何か……色々とすみませんでした」

「ふふっあの人子供がそのまま大きくなったみたいな人だから……」


レストランを出たところで奥さんはそう言ってやれやれといった感じで笑う。

おっとりとしていて、何だろうか……すごく優しい気持ちにさせてくれる。そんな雰囲気の人だ。


「これからも門崎と仲良くしてあげてくださいね」

「こちらこそ、いつもお世話になりっぱなしで。宜しくお願いします」

「あんまり良くしすぎるとすぐに調子に乗るから程々にね、皐月君」

「ふふふ、九条さんはほんとに変わらないわね」

「それは……奥様に鍛えられましたから」


それではご機嫌よう。と奥さんは桂木さんが待たせていた車に乗り帰っていった。




「奥様は元々会長の秘書だったの、つまり私の先輩よ」

「ああ、なるほどね。だから鈴羽と親いわけだ」

「うん、私が入社したときはまだ秘書をしてたから色々と教えてもらったの」


僕と鈴羽は門崎会長がとってくれた部屋で寛ぎながら今日の事を振り返っていた。

部屋からは僕達の住む街の夜景が一望出来る。

証明を落とした部屋のソファに座って鈴羽とゆったりとした時間を過ごす。


今日の食事会が火曜日だったのは明日が僕も鈴羽も休みなのを知っている会長さんが気を使ってくれたんだろう。


「……ねぇ皐月君」

「ん?」


僕の首に腕を回して抱きつく鈴羽を僕もしっかりと抱きとめる。

ソファに倒れこみ何度も口付けを交わす。

サラサラの髪をかきあげ微笑む鈴羽は月の光の下、本当に綺麗だ。

僕はそんな最愛の女性(ひと)を抱きしめ囁く。


「愛してる」

「うん、私も……愛してるわ」


もう一度キスをしてから僕は鈴羽を抱き抱え寝室の扉をくぐった。





お読み頂きありがとうございます\(//∇//)\


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