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舞扇の心声  作者: 小悪魔
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舞扇の心声

世の中の 人生は思い通りには 行かないものだが、夢を持って 追い求める人々が多いが果たして?・・・どれだけの人が 夢が近づいて居るのか 果たして実現しているだろうか?

 世の中の書物に知識を求め 自分の知識として 使える人が果たして何人いるだろうか?色々な書物を読めば読むほどに 頭の中の引き出しに詰めて 今に此の事が、役立つだろうと? 思って来たことだろう、

 こうして振り返って見ると 人は高等な知識より 少しの知識と人としてのマナーや 思いやりがあれば 生きてゆくのには困らないのに、

 人より自分は優れて居なければと 思い込み生きている人が多いことだろう、 

夢敗れても 敗れても 生きて行かなくてはならない 現実があるのだ。 

 

振り返れば 辛い惨めな幼き日々・・・

それでも母恋しと 歯を食いしばり小さな手に舞扇・・・

戦後に生まれて 家の貧しさゆえに10歳の時 置屋に預けら  母を恨む事より

食べ物に釣られ 「はいと」、頷き そのまま、母と別れたあの日から

 幼き少女は世の荒海の中に、投げ出され・・・ それでも幼き少女には・・・、 

母の元に帰れるのを夢みし 稽古に家事掃除と励む少女・・・     だが 

1年、2年経っても母は・・迎に来なかった。

中学校の卒業の時自分は 母と母の男と弟の生活の為に、ここに売られて来た事を知ったのだったのだ 、中学卒業式帰りに、母と弟の居る家を 覗きに行った時 

中から楽しそうな笑い声が聞こえて来た、私が居なくても、母や弟それに私の知らない男の人と笑って暮らして居た。 もう自分の帰る所が無いと知り・・・

熱いものが込上げて 止めどなく頬を伝わる涙を 堪える事が出来ず、いつの間にか 幼いころ遊んだ砂浜に来ていた、ひとりぼっちの… 淋しさに胸が痛い 

涙が止めどなく出てくるのを、ふき取るように海風が、頬を撫ぜて行く、

 

どれくらい寄せては返す波を見つめて 居たのだろう? 風の冷たさに我に返る 

海の向こうが赤く染まり太陽が沈みかけていた。

急がなければ・・・稽古に遅れてしまう、自伝車に飛び乗り足に力を入れる ・・・

そうなのだ 泣いている暇など無い 私の居場所はこの稽古場だけだ、

私の悲しみ淋しさを この舞扇に乗せ生きて行かなければ 

私と言う人間が無くなって成ってしまう 先ずは稽古だ・・・

よそ見している暇はないのだ、自分に言い聞かせ かざす扇に夕風が心地よくささやいた。お前の道は 私の要が導いて行くのだから

私を肌身から放してはならないと  舞扇が心に囁いた。

(私の心の中を解かるなんて・・・なんと不思議な??)夜道に自分の道を示すかのように 1本の光が照らしていた、 

17歳の秋 養母が倒れ 代稽古をしなくてはならない立場になってしまい、年上の人達に あー思っただけで足が竦む、 

だが今まで愛情込めて 育ててくれた恩にと 舞扇を手に稽古場に向かう廊下

突然の雷雨の稲妻の光の中に吸い込まれ、扇を握りしめたまま 稽古場の舞台に正座している自分に気がついた、

周りに、そっと目をやったが、誰一人気が付いて居ないようだ、胸を撫で下ろしたような気持ちで舞台を降りて、縁側に腰かけて今の出来事を、どう解釈すれば良いのか、

又この体の軽さは、頭の中の靄も無く心もほんのり温かく 夢心地で、扇を そっと開き空にかざした。

扇から何やら囁くように 呼びかけて来た・・・これからは扇の示す道を我が道と心に刻み

如何なる事に成ろうとも恐れる事なく心身真心で対応して生きよ・・・

それは心地よく心身に沁みこんできた、その夜は布団に入っても中々眠りに付けず、窓から差し込む月の光の美しさに見とれて居た、


それから4年 舞扇は肌身離さず彼女のお守りになっていた、

キーキー突然目の前に車が目の前に止まった、事故?その場に倒れこんだ。「桜香 桜香」 優しい声に導かれ

美しいススキの波打つ中に来ていた、「その扇は人に開いて翳してはならない、要は常に自分に向けて肌身離さず心しておきなさい」ススキの波打つ音と共に何度も聞こえ消えていった。

どれ位の時間が流れたのだろうか? 目が覚めて周りを見回せば見知らぬ部屋のベッドの上に横たわっていた、「先生 先生〜」叫ぶ女性の声が我に返した。

(どうして?私はここに居るのだろう?)人が数名部屋に入ってきたようだ 「不思議だ、あれだけの事故に逢いながら無傷なんて?」(事故?私は事故に逢ったの?)

「さっき 目覚めたようでしたのに?」(眠い もう少し寝て居よう うふ 私の悪戯心が・・)「いかがですか?」ドクターの回診である、

「私はいつ?帰れますか?」(何処も痛まないのに何時までここに置いて置くつもりだ)「相手の方が全部検査するように言われていますので」

「もう 大丈夫ですから帰してください もうじきお弟子さん方の発表会が有るのでお稽古付けなくては成らないのです」「今日事故の相手が来ますのでその旨申してください」事故に遭遇してからいろんな人が来て どの人が相手か判らないほど出入りしていたのである。病室はえらく豪華な特別室 介護の女性つきで 至れり尽くせりである 西園寺家の養女になった桜香 大学生で家元 明るいやんちゃな女性である。

 

(今日は久々の稽古も何にもない、川にでも行って来よう)川原の前で大きく両手を広げ(気持ちいい〜)大ノ字に草叢に寝ころび流れる雲に草の香りに心穏やか目を閉じた。   足元に子猫が体を摺り寄せて来た、思わず(かわいい〜)抱き寄せた  この子猫が扇と桜香との絆を保つことに成る事に桜香には判るはずもない

離れがたく子猫を抱いたまま稽古場に入った。

「お家元大丈夫ですか?」「え?」思わず周りを見渡した「顔色悪いですよ」子猫は座布団の上に私の顔を見上げて座っていた、思わず吹き出した桜香 その様子を見て弟子たちの緊張が解け和やかな場に変わった。



「お家元起きてください」可愛い声に目覚めたが誰も居ない?

枕のそばに子猫がまん丸の目をして見つめていた、

「貴方が起こしたの?」(そうだよ)「貴方  言葉はなせるの?」(お家元だけには判るのですよ)「不思議な事もあるものだね」桜香はまだ夢の中だと思い改めて

子猫に笑いかけた(夢ではありません 心の中でお話出来るのです、誰にも私の声は聞こえません 他の人には猫の鳴き声に聞こえるでしょう)「そうなんだ」、

 ミーちゃんは可愛いから素直に信じる事ができるわ」桜香は子猫を抱き庭に降りた、少し肌寒い爽やかな空気が気持ち良く身体を撫でてくれるのが心地よい 

朝食済ませて「ミーちゃんこれから勉強に行ってくるからお留守番していてね。」「お家

元お車がお待ちです」「はーい 今行きます」

キャンバスにも 初夏を感じる木漏れ日が優しく学生達を迎えているように見える。

入れ口の階段に足を架けた時目の前が揺らいだ、(芝生まで戻らなくては)頭の中で誰かが叫んだと同時の様に校舎から離れた芝生の上に座っている桜香・・・

(この頃何かが、起きている?いつも何かに守られている?)

思わず扇を胸に当て握りしめていた、 

心に温かい優しいものが溢れて 木漏れ日の芝生の中に我が身を預け横たわった

ドドーン校舎の科学室から爆発が起きたのである。

遠くに慌ただしく色々の騒がしく人々の声や救急車の音・・・


慌てた人々の騒がしさに、薄目を開けて回りを見回した、

(ここは 何処だろう?まさか 病院?)なぜ・・・私まで運ばれたのだろう?

少し周りが落ち着くまで、このまま静かにしていた方が・・・思いつつ眠気が・・・

「この方まだ意識が無いようです」「点滴に気を付けてしばらく様子を見よう、」

(私 意識あるのに やぶ医者だね)うふふふ (お家元 いい加減にしないと)その声に目を開けた 見たことも無い若い男性がベットの横に立っていた、

(あなたは誰?)声も出さず問いかけた(いつもお側に居る僕です)彼も声も出さず

答えて来た(もしかして ミーちゃん?)(当たり―)可笑しそうに笑顔がのぞいて来た。

続く・・・


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