幕間 - sideR -
赤い絨毯に、煌びやかな装飾。そして、大きな玉座。全てが俺の物だ。
どっしりと玉座に座っている俺に、弟のダミアンが早足で近づいて来た。
「兄上、魔王が誕生したらしいが、どうするおつもりか?」
その顔には、焦りと恐怖と、少しの敵意が浮かんでいた。
「魔王は敵対しないと申しておる。何もする必要なかろう。無駄に民の心を陰らせる必要もない」
「し、しかし!」
ずっと俺の後ろにいるしかないダミアンは、前々から俺の意見に物申す事が多かった。自分の意見が正しいと心の底から思っているので、タチが悪い。
「魔王が生まれてすぐ、直々に書面を寄越したのだ。わざわざこちらから手を出す必要もない。それに、戦争に向かうのは我が国の宝たちだぞ?」
「そんなものは承知している。だが、魔王の脅威は拭えないだろう。兄上は魔族との戦争に怯えておられるのか?」
小馬鹿にしたような態度で鼻を鳴らす弟の溢れ出る小物感に、ついついため息を漏らしてしまった。こいつは小さすぎる。
「ダミアンよ、それはしかと考えた上での発言か?」
「兄上は甘すぎるんだ! このままではヘリウス王国が没落してしまう!」
「先を見据えての行動は起こしておる。お前には理解できぬだろうがな」
「もう、兄上には任せておけない」
そう言い残してダミアンは去って行った。
それから、何度も暗殺されそうになった。もちろん、そんな事で殺される俺ではないが。
「とはいえ、流石にこれはまずいな」
俺の目の前には勇者が立っていた。
「すみませんね、ダミアン様から殺れって言われてるんで死んでください」
「参ったな、見逃してくれないか?」
「それは無理だ。これからの作戦にお前は邪魔にしかならないしね」
素早く視線を動かす。今はまず、生き延びなければならない。
「じゃ、さようなら王様」
言うや否や、すぐ目の前で剣が踊った。勘で避けたが、肩が大きく裂けた。
「ぐっ……!」
鋭い痛みに顔を顰める。
一撃で殺せなかった事に驚いたのか、勇者は距離を取って笑いながら構え直した。
「意外とやるねぇ」
次はきっと避けられない。ジリジリと距離を取る。
「全く、勇者が殺しとは。世も末だな」
「勇者が正義なんて、誰が決めたんだろうね?」
「それもそうだな。だが、生憎お前に殺されるつもりはない!」
そう言って身を翻し、窓から飛び降りた。かなり高いが、少しでも助かる可能性に賭ける。
窓から勇者が身を乗り出すのが見えた。
「うぐっ……!」
何とか受け身は取れたが、強い衝撃が全身を襲う。もしかしたら、勇者が俺の死を確認しに来るかもしれない。
動かない体を叱咤し、なんとか木の影まで這いずったが、意識が朦朧としてきた。
「これまで、か」
あまりの顛末に自嘲する。
意識を失う瞬間、黒い長身の影が近づいて来るのが見えた気がしたーー。




