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八杯目 看板娘はあきらちゃん?それともモカちゃん&ルリちゃん?

はっきりさせないといけないことってあるよね?

でもそれってはっきりさせる必要ってあるのかな?


午前中のカフェの時間が終わり、お昼休憩を使って買い出しに行ってくる。

街の商店街はすっかりハロウィン。

並んでいるものはハロウィン商品が多かった。

まだ早いけどハロウィンかぁー。

今年もなにかやるのかな?

私はそんな事を考えながら街の商店街は歩く。

歩いているとかぼちゃが目についた。

かぼちゃってデザートでも料理にも幅広く使えるよね。

かぼちゃを買おうかな?

ママの頼まれたリストにかぼちゃ2個と書かれていた。

「おにいさん。かぼちゃを2個ください」

「へーい。お!あきらちゃん。久しぶりだね」

「お久しぶりです」

「今日は買い出しかい?」

「そうです」

「重いから小さめのにしておくね」

「へーい。お待ちどうさま!かぼちゃだよ」

「ありがとうございます」

私はお金を払い、かぼちゃを受けとる。

「気を付けてな!またいらっしゃい!」

おにいさんの元気な声が街に響く。

私はママに頼まれたリストを見て買い出しをする。

ほとんどが街の商店街で売られているものだった。

買い出しをしてすっかり商店街の人とは顔馴染みになった。

皆、本当に愛想が良くて、明るいと感じた。

街に来て二年経つけどなかなかこういう街はないと感じた。


買い出しが終わり、歩いているとまた秋の空。

秋の空はキャンパスのようになっていて絵が描けそうだった。


「ママ、ただいま」

「おかえり。あきらちゃん」

「頼まれたもの、買ってきました」

「ありがとう。大変だったでしょ?ママが行けたらよかったんだけど。ごめんね。昨日、買い出しに行ったばかりなのに」

「大丈夫ですよ。ママ。一石二鳥です。商店街にも行けるし、買い物もできるし。これからは買い出しは私が行くので大丈夫ですよ!体力に自信がありますし」

「そう?ありがとう」

「はい」

「かぼちゃはあった?」

「はい。小さめのでよかったですか?」

「小さめのでむしろ助かるわ」

「今日はかぼちゃのプリンにしようかしら?」

「手伝いますね」

「ありがとう。あきらちゃん。かぼちゃを切るの上手いもんね」

「コツをつかんでいるだけですよ」

「私は切るのが苦手なのよ。特にかぼちゃは」

「これからは私が切りますね」

「お願いします。あきら先生」

そう言われてさっそく私はかぼちゃを切るのだった。


かぼちゃが切り終えると私は掃除をする。

午後からの開店時間に間に合うように環境を整えるのだった。

そして開店時間になり、私はいつものポジションで待機する。

すると扉がひらくと同時に私は「いらっしゃいませ」と挨拶するのだった。

今日の午後のお客様は少なく、そんなに忙しいとかはなかった。

いい雰囲気だったがあることでその雰囲気は一変する。

それはあるお客様の言葉だった。

「やっぱりこのカフェの看板娘はあきらちゃんでしょ」

「はぁ?なに言ってるのよ?モカちゃん&ルリちゃんに決まってるでしょ」

「あきらちゃん!」

「モカちゃん&ルリちゃん!」

「あきらちゃん!」

「モカちゃん&ルリちゃん!」

だんだんお客様はヒートアップしてしまう。

ママがすぐ止めに入るがなかなかおさまる気配がない。

すると一人のお客様がママには向かって言う。

「結局、看板娘はどっちなの?ママ」

ママも困った顔をする。

私は看板娘とかそんなのあまり気にしなかった。

むしろ看板娘はママかモカちゃん&ルリちゃんと思っていたから。

でもママが困ってる。

どうしたらいいんだろ?

私も困ってしまう。

するとまた一人のお客様が言う。

「この際、はっきりさせたほうがいいよ。ママ。あきらちゃんかモカちゃん&ルリちゃんか」

「はっきりさせたほうがもうこんな言い争いは起きないと思うしね」

ママも「そうね」とはいうがまだ困っている顔をしている。

私もそうかもしれないが思うが困ってしまう。

はっきりさせたべきなのか?

でもママの意見に従おうと決意するのだった。

二人のお客様はママをじーと見つめる。

するとママは決心したかのように言う。

「そこまで言うなら仕方ないわね。明日までにははっきりさせるわ」

そういうと二人のお客様や意見を言った二人のお客様は納得し、帰ったのだった。

お客様もいなくなり、静かな時間が流れる。

困り果てているママに私は紅茶をいれるのだった。

ママはしばらく黙っており、私もそんなママを心配する。

しばらく経ってママは私を呼ぶ。

「あきらちゃん、ごめんね。こういうことになってしまって」

「いいえ。ママのせいじゃないですよ。」

「私もね。考えてたの。どっちが看板娘なのかって」

「あきらちゃんはもう立派に成長してくれて最近ではお店を任せてもいいってぐらいになったわ」

「それは本当ですか?」

「本当よ」

「本当はあきらちゃんが看板娘だと思うのよ」

「でも納得できない自分がいてね」

「モカちゃん&ルリちゃんはポメラニアンだけど私の家族だし、娘のような存在なの」

「だから看板娘はモカちゃん&ルリちゃんだと思っている自分もいる。難しいわ」

「なるほど」

私はそれだけでとてもうれしかった。

だって自分を認めてくれているのだから。

それだけで涙が出そうになった。

でもはっきりさせる必要ってあるのかな?と思った。

だってママがこんなにも苦しんでいるのだから。

「ママ」

「んっ?」

「看板娘はやっぱりモカちゃん&ルリちゃんだと思います」

「だって長年、この店を守ってきたのはモカちゃん&ルリちゃんだと思います。もちろんママがいて、ご主人がいてのお店ですよ」

「私は途中から入っていた者だし、私にはそんな肩書きは勿体ないと思います」

「ママ、深く考えなくて大丈夫です。私は何を言われても傷ついたり、ここを辞めようとは思いません。ママの思いを大切にしてください」

「あきらちゃん」

「だから悲しい顔はしないでください。ママには笑っていてほしいから」

言葉をかけるとママは「ありがとう」と言い、そのまま黙っていた。

私はこの日、早めに帰ったのだった。


そして当日。

私は固唾を飲んでママを優しく見守る。

今日もあの言い争っていた二人のお客様が来ていた。

二人は紅茶を頼んだ。

私は紅茶をいれるとそのテーブルに向かう。

「お待たせしました。紅茶になります」

「ありがとうございます」

二人は紅茶を一口飲んだ。

そして話を切り出す。

「結局、看板娘はどっちなの?ママ」

するとママはにっこりと笑ってこういった。

「二人とも大正解ですよ」

「えっ?」

「このカフェの看板娘はあきらちゃんとモカちゃん&ルリちゃんです。」

二人は目はテンになり、私も目がテンになる。

私も看板娘?ママ、何言ってるの?

無反応の私たちにママは話を続ける。

「だってあきらちゃんもモカちゃん&ルリちゃんも大事な家族だもの!選べるわけないわ」

「世の中にははっきりしないといけないことがあるかもしれない。でもはっきりする必要があるのか?って考えたらはっきりする必要はないと思ったの!だってどっちも傷つけたくないもの!」

「あきらちゃんやモカちゃん&ルリちゃんはこのカフェの為に一生懸命になってくれている。

私はこの子達に看板娘という称号を贈りたい」

「ママ」

「ママ」

「だから申し訳ないけど看板娘はあきらちゃんとモカちゃんとルリちゃんにしたいの!納得してもらえる?」

ママは二人に問いかける。

すると二人はだまってママの話を聞き、口を開いた。

「ママの言葉、すごく感動しました」

「すみませんでした」

「謝ることないわ。ありがとうね!大切なことを教えてくれて」

「ママ」

「また来てちょうだいね」

「はい!」

そういうと二人は仲良く帰っていった。

ママの話がすごくじーんときてしまった。

私はただ感謝するのだった。

「ママ」

「んっ?」

「ありがとうございました」

「わたしこそありがとうね。あきらちゃんがいたからそういう言葉が出てきたのね」

「これからも宜しくね。看板娘さん」

「はい」

私は大きな声で返事をするのだった。


それからというものこのカフェの看板娘は私とモカちゃん&ルリちゃんという話になり、お客様の疑問は解消され、また居心地のいい雰囲気になりました。

「看板娘が増えると明るくなるね」

「そうだよね」

そういってくれるお客様も増えました。

私はすごい肩書きをもらったなと思い、感動しました。

「看板娘」その肩書きに負けないように頑張りたいと思う一日でした。










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