七杯目 会長はママとあきらちゃんと共にお茶会を催す。
憩いの場所とかなかなかないよね。
そういう場所を自分達で作れたら素敵だよね
カフェもそういう場所を目指したい。
すっかり季節は秋模様。
街を歩くと秋一色。
「もう秋かぁー」
買い出しの帰り、私は秋の空を眺める。
すると秋の空を飛行機が横切る。
飛行機雲が残り、秋の空は絵画のようになっていた。
「ママ、ただいま」
「おかえりなさい。 買い出しおつかれさま」
「いいえ。 手伝いますね」
「ありがとう」
そう言って私はママの手伝いをする。
今日のカフェは午後からの開店。
なので久しぶりに午前中はのんびりできた。
「午前中は何をしていたの?」
ママが聞いてくる。
私は笑顔で「本を読んでました」と答えた。
「読書の秋ね」
「はい」
「ママは午前中は何してたんですか?」
「自宅ヨガかしら。最近、はまっていて」
「運動の秋ですね」
「そうね。○○の秋って結構あるわよね。考えると」
「そうですよね。恋の秋とか・・・」
「恋の秋?」
「あっ!いいえ。そういうのもあるなぁーと思っただけで」
「そう」
「はい」
いけない。ママには恋人が出来たって言っていなかった。
危なかった。
まだ言うのは早いかな?
今度、雅人さんと休日に紅葉狩りに行くことになっている。
交際は順調で私は恋の秋も楽しんでいるかも。
なんて思っているとあっという間に午後のカフェの開店時間になっていた。
「いらっしゃいませ」
カフェの扉が開くと私は今日も元気よく挨拶する。
お客様も元気よく挨拶をしてくれる。
もう「いらっしゃいませ」から私の接客が始まっているのだった。
「あきらちゃん」
すると一人の紳士が声をかけてくれる。
「はい!少々おまちください」
他のお客様の接客が終わると先ほど声をかけてくれた紳士の元に駆け寄る。
「お待たせしました。会長さん!来てくださったんですね」
「せっかくのお誘いがあったからね。」
「ありがとうございます」
この紳士の方はこの街の会長の前田さん。
お世話になっている方です。
「お飲み物はいかがなさいますか?」
「あきらちゃんのコーヒーが飲みたいな」
「ありがとうございます。かしこまりました。」
「楽しみにしてるよ」
「はい」
私はさっそくコーヒーをいれる。
「オーダー入ったんだね」
「はい」
他のお客様が声をかけてくれる。
「あきらちゃんのコーヒーは格別だからね」
「ありがとうございます」
「会長が気に入ってくれるといいね」
「はい」
私はその言葉にプレッシャーも感じたが心遣いも感じた。
「お待たせしました。コーヒーになります」
「ありがとう。さっそく頂きます」
「はい」
前田さんは香りを嗅いでからコーヒーを飲む。
私は緊張しながら待つ。
しばらく経って前田さんは口を開いた。
「あきらちゃん」
「はい」
「すごくおいしいよ。ありがとう」
「本、本当ですか?」
「コーヒー専門店を開ける味だよ」
「そんなにおいしいですか?」
「なんだか優しい味がする。それに飲みやすい」
「きっとあきらちゃんの性格が出てるんだね」
「毎日でも飲みたいコーヒーだよ」
「ありがとうございます」
「こちらこそ」
やったー。会長である前田さんに認めてもらえた。
嬉しい。
他のお客様も見守っていたが安堵している雰囲気だった。
時間が経つにつれ、お客様が減っていくが前田さんは残っていた。
もうすぐ開店時間になる。
すると前田さんはママを呼んだ。
「ママ、ちょっといいかな?」
「はーい!」
厨房にいたママは前田さんに駆け寄る。
「実はママにお願いがあって」
「はい。なんでしょう?」
前田さんは困った顔で話をする。
「カフェを貸し切りって出来るかな?」
「出来ますよ」
「助かった」
前田さんは安心した顔になる。
「実は数名でお茶会を開こうと思ってたんだけどなかなか場所が無くて困ってたんだよ。ありがとう。本当に助かる」
「いえいえ」
「それと私だけだとお茶会がまわらないからお茶出しとかをあきらちゃんとママに手伝ってもらえると助かるんだけどどうかな?」
「私は大丈夫だけどあきらちゃんはどう?」
「私も大丈夫です」
「ありがとう。お願いします」
「貸し切りはいつにしますか?」
「急なんだけど明日でいいかな?」
「分かりました。お待ちしております」
「じゃあ明日、宜しくお願いします。」
前田さんはお会計をすませて帰っていった。
「お茶会かぁー。緊張します」
「あきらちゃんは2回目よね」
「はい。またうまくできるか心配です」
「大丈夫よ!いつもどおりやればいいんだから」
「はい」
ママはそう言って私を励ましてくれた。
私はお茶会はやりがいがあると考えるのだった。
そしてお茶会当日。
私とママは早めに来てお茶会の準備をする。
すると前田さんがやって来て前田さんの指示に従って準備をする。
前田さんのチェックが終わり、お茶会の準備が整った。
私達はのんびりしながら待つ。
しばらく待っていると数名の紳士とご婦人がやってきた。
「まぁー。素敵なカフェね」
「そうじゃのう」
「本日はお越しいただき、ありがとうございます。このカフェのママです。ママって呼んでください」
「剱崎あきらです。本日は宜しくお願いします。」
私達が挨拶するとご婦人や紳士も挨拶する。
「こちらこそ。このようなお茶会を開いていただき、ありがとうございます」
「宜しくね。あきらちゃん。ママさん」
「はい」
挨拶をすませると前田さんの進行でお茶会が開かれるのだった。
お茶会の時間はとても優雅なものだった。
一人一人の紳士やご婦人が主役という感じがした。
「紅茶のおかわりはいかがでしょうか?」
「一杯いただくわ。ありがとう。あきらちゃん」
「いいえ」
私とママは脇役だけど居心地のよい雰囲気を味わえた。
お茶会ではママと私が作った特製のかぼちゃケーキーを振る舞われた。
かぼちゃケーキーをご婦人や紳士達は美味しそうに食べてくれた。
「食べやすくて、甘さ控えめで美味しいわ」
かぼちゃケーキーは好評だった。
それからは私たちも雑談の中に入り、色々と話した。
そしてだんだん日が暮れていった。
ママと私は最後に自分達で作ったカップケーキーやクッキーを渡した。
大喜びで受け取ってくれた方もいれば中には泣く方もいた。
お茶会はこうして大成功に終わった。
お茶会が終わり、私とママと前田さんは私の入れたコーヒーを飲みながら星を見ていた。
「今日はありがとう。素敵なお茶会になりました。二人のおかげです」
「いえいえ。素敵な思い出になりました」
「またお茶会を開いてくださいね。うちのカフェで」
ママが笑顔で言う。
すると前田さんも笑顔で言う。
「はい。また開きます」
二人は笑いあい、私も笑うのだった。
今日のお茶会は私にとっていい思い出になった。
またやりたいなぁー。
空を見てみると星がきらりと輝いていた。
私達に光を照らすように。