六十二杯目 変わりたい
変わりたい理由はいくつでもある。
昼休み。
私はいつもの作業しているとカフェの扉が開く。
振り返るとそこには雅樹さんの姿があった。
「あきらちゃん。久しぶり!」
久しぶりの再会に私は喜ぶ。
「雅樹さん。お久しぶりです。お元気でしたか?」
「おかげさまで。あきらちゃんは元気だった?」
「はい。元気です」
「それは良かった」
「ところで今日はどうされたんですか?」
「実はあきらちゃんに相談があって」
「私に?なんでしょう?」
「俺の友人を助けてほしいんだ」
「えっ?助ける?何があったんですか!?」
「それは本人の口から言わせるからとりあえず話を聞いてほしくて今日、連れてきてるんだけどいいかな?今、忙しい?」
「あ!いえ!大丈夫です」
「本当?良かったー!ありがとう。あきらちゃん。じゃあ。さっそく連れてくるね」
「あ!はい!」
雅樹さんの友人かぁー。
どんな人だろう?
きっといい人だろうなぁ。
なんて考えながら待っていると雅樹さんと友人らしき男性が入ってくる。
「あきらちゃん。紹介するね。俺の友人のあっちゃんです」
「はじめまして。剱崎あきらと言います」
「ひぃー!」
男性は私を見てびくびくしながら陰に隠れてしまうのだった。
「ごめんね。あきらちゃん。ああいう奴なの。大丈夫だよ。あっちゃん!悪い人じゃないからさ」
「本、本当に?」
男性はびくびくしながら雅樹さんと会話をする。
「この人が俺が前から話してるあきらちゃんだよ。大丈夫!あきらちゃんならきっと力になってくれるよ!」
「・・・・」
「俺を信じて!」
すると男性は陰から出てくるのだった。
「すみません。すみません」
男性から謝られる。
「大丈夫ですよ。慣れているので」
男性は安心したのか口を開く。
「俺、安濃篤志と言います」
「安濃さん。珍しい名字なんですね」
「はい。よくそう言われます」
「とりあえず座って下さい。今、飲み物でも!」
「すみません。すみません」
「いいんですよ!飲み物は何になさいますか?」
「じゃあ・・・・コーヒーで」
「分かりました。雅樹さんは?」
「俺もコーヒーで」
「はい。少々お待ち下さい」
「大丈夫だったろ?」
「う、うん」
「お待たせしました。コーヒーになります」
「あ、ありがとうございます」
「ありがとう。あきらちゃん」
「いいえ。それでご相談というのは?」
「笑わないですか?」
「えっ?」
「あっちゃん。あきらちゃんはそういう人じゃないから」
「で、でも」
「大丈夫ですよ。安濃さん。私、笑いませんから」
「・・・そ、そうですか」
「はい」
「実は・・・俺、変わりたいんです」
「変わりたい?」
「はい。俺、もっと仲良くなりたい女性がいるんです」
「そうなんですね」
「同じ職場の女性なんですがこんな俺に親切にしてくれるし、優しい人なんです」
「素敵な女性なんですね」
「はい!とっても!どうしたらもっと仲良くなれるのかなぁって悩んでて」
「なるほど。安濃さんはその女性の方を大切に思っているんですね」
「は、はい」
「そうなんですね。だったら簡単ですよ」
「?」
「安濃さんの良さをもっとアピールするんです」
「お、俺の良さですか?」
「はい!」
「あきらちゃん。それはいいアイデアだね!」
「た、例えば?」
「例えば・・・そうですね。イメチェンしてみるとか?」
「イ、イメチェンですか!?」
「今の安濃さんの髪型は前髪が長すぎて表情とか見れないじゃないですか!前髪を短くするだけでもかなり印象が違うと思いますよ!」
「そ、そうですか・・・なるほど」
「あきらちゃん。さすがだね」
「イメチェンすれば気持ちも変わりますし、余裕も生まれると思うんですよね。だからまずはイメチェンをおすすめします」
「あ、あの!」
「それだけでいいんでしょうか!今の性格を直すとかしなくていいんでしょうか?」
「大丈夫ですよ!だって安濃さんのはいい性格してますよ!自信もって下さい」
「でも!」
「あっちゃん。大事なのは自分を好きになることだよ!あきらちゃんはそれが言いたいんだよ!」
「はい」
「あきらさん!こんな俺の為にありがとうございます。俺、変わります」
「あきらちゃんに相談して良かったろ?」
「うん。じゃあ。今日、美容室にでも行こうかな?」
「その調子です!安濃さん」
こうして安濃さんの相談も無事に終わった数日後。
「あきらさん!」
「はい!あっ!」
そこにはイメチェンした安濃さんの姿があった。
長かった前髪を切り、ショートカットになった安濃さんはとても爽やかな男性に変わっていた。
「安濃さん。かっこよくなりましたよ」
「えっ!本当ですか?あ、ありがとうございます」
もうそこには以前の彼の姿はなかった。
「これから仕事ですか?」
「はい。彼女にこの姿を見せるのは緊張します」
「大丈夫です!自信もってください」
「はい。行ってきます」
そう言って彼は爽やかに仕事場に向かうのだった。
人は一人では変われない。
誰かがいることによって変われるんだと感じるのだった。




