六十一杯目 護さんとあきらちゃん
あなたとずっといたい。
ー未来は分からない
鮫塚さんの言ったあの一言が頭から離れない。
嫌な夢から覚めて私は今日も早めに出勤した。
いつも通り、ちゃんと仕事をこなしたが気持ちがついていかない
正直、あんな言葉を聞きたくなかった。
落ち込んでいるとカフェの扉が開く。
私が後ろを振り返るとそこには護さんの姿があった。
「護さん?」
「ちょっとあきらさんが心配だったので来てしまいました」
「えっ?」
「傷ついたり、落ち込んでいないかと思って」
「護さん」
「謝罪しても許してもらえないと思います。ですが俺には謝ることしか出来ません」
「・・・・」
「本当に申し訳ありません」
「そんな謝らないで下さい。護さんは悪くありません。勝手に傷ついた私が悪いんです」
「あきらさん」
「確かにそうだと思います。誰にも未来のことなんてわかりません。でもそう言われたら悲しくなる。だって私は雅人さんとずっといたいのに」
「あきらさん!」
「えっ?」
すると護さんが優しく抱き締めてくれる。
「護さん、だめです!ちょっと」
「今だけはこうさせて下さい。俺を雅人さんだと思ってください」
「えっ?」
「泣いていいですよ!泣いてもいいんです」
「護さん」
護さんの優しい言葉を聞いて私は自然と涙を流すのだった。
「これ、飲んでください!俺がいれたコーヒーなんですけど」
「ありがとうございます」
私は彼から渡されたコーヒーを飲んで落ち着く。
「ごめんなさい。護さん。取り乱してしまって」
「いいえ。よっぽど辛かったんでしょう」
そうやって護さんは優しい言葉をかけてくれるのだった。
「ありがとうございます。私のために色々考えてくださったみたいで」
「あきらさんは俺にとって大切な人ですから」
「ありがとうございます」
「実は、私もあきらさんと同じなんです」
「えっ?」
「実は恋人がいるんです。でも父に反対されていて」
「そうだったんですね」
「はい」
「辛いですね」
「いえ。父の気持ちも分かります。不安なんでしょう!」
「・・・・・・」
「俺の彼女は片耳が聞こえないんです。ですが凄く優しくて明るい人なんです。そんな純粋な彼女に惹かれたんです」
「素敵ですね」
「ありがとうございます。彼女との結婚も考えています。必ず彼女を幸せにするつもりです」
「叶うといいですね」
「はい。その為にも父に彼女を1日でも早く認めてもらう為にも頑張ります」
「あんまり無理しないでくださいね」
「はい。未来は分からないですけど好きな人と作っていけたらいいですよね。俺はそう思います」
「護さんに励まされてばかりですね」
「いいんではないでしょうか?そんな日があっても」
「そういうもんなんですか?」
「そういうもんです」
「うふふ」
「あはは」
やっと私は笑うことができた。
人は一人では生きられない。
誰がいなきゃダメだってことを私は知った。




