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五十五杯目 あきらちゃんと紳士

ありがとう!


5月も終わりを迎えようとしている。

そんなことを名残惜しそうに気持ちいい風が吹いていた。

今日もカフェがオープンする。

今日はどんな出会いがあるのだろうか?

凄く楽しみ!

なんて考えていると一人の紳士がカフェにやってくるのだった。

「ごめんください」

「いらっしゃいませ。お好きな席にどうぞ!」

「すまないね。お嬢さん」

「いえいえ。どうぞ」

「ありがとう」

「なにかご注文は?」

「すまないが温かい紅茶をいただけないかな?」

「分かりました。少々お待ち下さい」

オーダーをとると私は紅茶をいれるのだった。


「お待たせしました。温かい紅茶になります」

「ありがとう」

「本日はバラのジャムが入った紅茶になります」

「それはまた上品だ!うん、うまい」

「ありがとうございます」

「お嬢さん、紅茶をいれるのが上手いね。気に入った!」

「ありがとうございます」

「私は、神谷(かみや)と言います。お嬢さんの名前は?」

「あきらと言います」

「あきら?君、あきらと言うのか?」

「はい。そうですけど何か?」

「いや、すまない。あまりにも懐かしい名前だったからつい」

「あ、そうだったんですね。すみません!」

「お嬢さんが謝ることない」

「でも」

「いいんだ。忘れてくれ」

「は、はい」

その後、気まずくなってしまった。

でも私もなんだか神谷という名字を懐かしく思うのだった。

私は香織に手紙を出した。

あの神谷さんについて書いたのだった。

そして数日後、手紙が届いた。それには衝撃的な事が書かれていたのだ。


ある日、私がいつものように掃除をしていると「あきらさん!」と声をかけてくれるあの神谷さんの姿があった。

「神谷さん、どうしたんですか?」

「実はあきらさんに話さなければならないことがあって」

「はい」

私は神谷さんをカフェに招いた。

そしてバラのジャムが入った紅茶をいれるのだった。

神谷さんにそれを一口飲むと口を開くのだった。

「信じられないかもしれないが実は私は君の祖父なんだ」

「初めて君があきらと名乗ってくれた時、なにか感じるものがあってね!調べたんだよ!すると亡くなった息子にあきらっていう娘がいたことを知ってね!親戚をたらい回しにされて叔父夫婦に引き取られたって話も聞いた。苦労させてすまなかった。すぐに引き取れなくてすまなかった」

神谷さんが謝る。

ー許してあげて。おじいさんの事。

香織の言葉が頭によぎる。

でも私の答えは決まっている。

「神谷さん、いや。おじいさん。ありがとう」

「えっ?」

「勇気を持って名乗ってくれて嬉しかった」

「あきら」

「私ね。確かに親戚をたらい回しにされて、両親を亡くして、不幸だと思っていた。でも違った。優しい叔父さん夫婦に育てられてこの町でママたちと出会えて、こんな温かい人達や優しい人達の元で働けて凄く幸せだよ!だから自分を責めないで!おじいさん!私、凄く幸せだよ!この町に来て!こうやっておじいさんに会えて嬉しかっ

「私を許してくれるのかい?」

「もう過去は過去だもの!これからは共に生きよう!」

「うん。うん。ありがとう!あきら」

「おじいさん!」

私たちは抱き締めあう。

今までの分を取り戻すように。

そして星は涙のように溢れていた。









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