四十九杯目 恋の華は満開に咲く。
今日、恋の華が満開に咲きます。
「・・・・・」
「・・・・・」
幸司さんと香織は何も言わない。
お互いにうつむいたまま。
私はなんだか気まずくなる。
今日はお客様から了解を得て貸し切りにした。
ここにいるのはママと私とご主人と香織と幸司さんだけ。
ママとご主人はカウンターから様子を見守る。
沈黙が続く中、沈黙を破ったのは幸司さんだった。
「香織さん」
「・・・・」
「香織」
「・・・・」
香織に何も反応はなかった。
あのときのことがショックだったんだろう。
それでも幸司さんは話を続ける。
「やっぱり私のことを嫌いになりましたか。まぁ。そうですよね。香織さんを傷つけたのだから」
「・・・・」
「どうか私を許さないでください」
幸司さんが深々と頭を下げる。
私は申し訳ない気持ちと罪悪感でいっぱいになった。
誰も悪くないのに
あれは誤解だったのに
私は黙って見守ることしか出来なかった。
香織の目には涙が浮かぶ。
その涙が何を表しているのか分からなかった。
香織もやっと口を開く。
「もういいです」
「えっ?」
「幸司さんこそ私のこと、嫌いになったんでしょ?」
「香織、何言って」
「だって私、あの場所から逃げたんだもの」
「香織さん。あなたは間違っていない」
「違う。それは違う」
「何が違うの?」
「だって怖かったから。失うのが」
「私、幸司さんが本気で好きなの!でも情けないでしょ?逃げたんだから。」
「・・・・」
「幻滅されたって思ってたから。このカフェに来なかったの」
「・・・・」
「なのにどうしてそんなに優しい言葉をかけたり、謝ってくださるんですか!そうされたら私、期待しちゃう」
「・・・・あきらさん」
「はい」
「二人きりにしてもらってもいいですか?」
「・・・・」
私は黙ってその場から去った。
私もカウンターから二人を見守る。
聞こえるのは声だけだった。
「香織さん」
幸司さんの優しい声と香織の泣きじゃくる声が聞こえる。
「やっぱりあなたが好きだ。あなたを嫌いになれない」
「えっ?」
「そうやって泣いている顔もいとおしく思ってしまう。」
「皇本さん」
「私はあなたに幻滅などしません。この先、何があっても」
「・・・・」
「剱崎香織さん。私の恋人になっていただけませんか?」
「だって私・・・あ」
「だから私を愛してくれませんか?一人の男として」
「・・・本当にいいんですか?私で」
「香織さんじゃなきゃ駄目なんです」
「皇本さん」
「んっ?」
「私を皇本さんの恋人にしてください」
「ありがとうございます。もう泣かせません。必ず幸せにしてみせます」
「はい」
結ばれたことに安堵する私たち。
そしてカウンターから出てきて二人を祝福するのだった。
神様、色々ありましたが無事に結ばれました。ありがとうございます。
私は空に向かって心の中でお礼を言うのだった。




