二十杯目 子ども達は元気に豆をまく
今日は節分。
街の中では豆や恵方巻を買う人や鬼のお面をつけて走り回る子ども達の姿が見られた。
街は節分で活気にあふれていた。
一月が過ぎ、二月を迎えたがまだ寒波が過ぎず、寒い冬が続いている。
そんな寒い日に私達は恵方巻作りをしていた。
「あきらちゃん、そのお刺身を切り終わったらこのお刺身も切ってちょうだい」
「はい。わかりました」
「あきらちゃん、お刺身を切り終わったら、俺の方も手伝って」
「はい。わかりました」
朝からこんな感じで忙しい。
今日は早めに集まって準備を進めている。
本当はもう開店時間なのだが、今日はランチに恵方巻を出そうという話になり、今日は遅めの開店時間になっている。
カフェの中からは人の姿がはっきり見える。
カフェをちらっと見て、素通りする人やじーっとカフェの中を見ている子ども達の姿が見られた。
子ども達が笑顔で私に向かって手を振ってくれる。
私は作業をやめ、笑顔で手を振るのだった。
すると子ども達は満足したのかその場をあとにするのだった。
可愛い応援もあり、私は幸せな気持ちで作業を再開するのだった。
「ママ、お刺身、切り終わりました。」
「ありがとう。それじゃパパの手伝いをしてくれる?」
「はい。わかりました。」
「あきらちゃん、よろしくね」
「はい」
「それじゃ、巻いていこうか?」
「はい」
具材とご飯をのりで巻いていく。
「そうそう。あきらちゃんって器用だね」
「ありがとうございます」
「綺麗な恵方巻が出来たね。この調子で作っていこう」
「はい」
私が恵方巻をじーっと見つめているとご主人が笑いながら言った。
「あきらちゃんの分もあるから大丈夫だよ」
「えっ?」
「そんなに見つめなくてもいいんじゃない?」
「すみません。ちょっと食べようとしてました。」
「あはは」
ご主人が笑う。
私もつられて笑うのだった。
それから私達は集中して心を込めて恵方巻をどんどん作っていった。
ママはあたたかいけんちん汁を作ってくれた。
そして時間が経ち、開店前に恵方巻とけんちん汁を作り終えることが出来た。
私達は達成感と感動でハイタッチをした。
カフェの前にはたくさんのお客さんが並んでいる。
カフェの開店と同時にお客さんが入ってきた。
私はいつもと同じように笑顔でお客様を迎えた。
「いらっしゃいませ」
「あきらちゃん。こんにちは」
「こんにちは。山下さん。いつもご来店ありがとうございます」
「こちらこそ。いつも笑顔で迎えてくれてありがとうね」
「ゆっくりくつろいでくださいね」
「ありがとうね」
「おい、あきら」
「こら。駿!走ってはいけません」
「こんにちは。駿くん。美玲さん」
「あきら。これ、やる!」
「ありがとう。鬼のお面?」
「幼稚園で作ったんです。駿がどうしてもあきらさんにって」
「私に?」
「いらないならいいぜ」
「ありがとう!駿くん。大事にするね」
「おう」
「ゆっくりくつろいでね」
「あきらさん」
「はーい」
ひとどおり常連さんとの会話が終わり、接客に入る。
「あきらちゃん!恵方巻セット、お願い!」
「俺も!」
「はい、分かりました。」
カフェはお昼時になると混んできて、接客にも力が入ってくる。
「あきらお姉ちゃん!」
「んっ?」
「豆、あげる!」
「ぼくも」
「ありがとう」
可愛い笑顔で豆をくれる子ども達。
「待ってー!」
「待たないよ!」
外で鬼のお面をつけている子ども達に豆を投げる子ども達。
元気よく豆をまいている子ども達の様子をあたたかく見守る親達。
この街の人達のこういった姿を見られるのはとても幸せと感じるのだった。
「あきらちゃん、恵方巻美味しかったよ」
「ありがとうございます」
「また来年も食べに来るね」
「はい!お待ちしています」
「じゃ、またね」
「ありがとうございました。またお越しください」
最後のお客様をお見送りして、カフェを閉める。
「おつかれさまでした」
「おつかれさまでした」
そう言って私達は南南東に恵方巻を向けて黙々と食べるのだった。
それぞれ願いを込めて!




