表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/65

十一杯目 あきらちゃんは過去を語る

過去を語るって結構辛いよね。

でも話して共感してもらえると心が楽になるよね。

勇気を出して話すことが大事。


占い師さんが来て数日が経つ。

私はまだ自分の過去をママに話せずにいた。

怖いとか嫌だなとかという思いはない。

ただ不安なのである。

理解してもらえるのか

嫌な思いをさせてしまうのではないか

とにかくママの悲しい顔は見たくない

逃げているだけっていうのは分かる。

このままではいけないと分かってはいるけど勇気が出ないのだ。

自分がこれまで臆病な人間とは思わなかった。

でも今日は午前のカフェが終了し、お昼休憩の時間。

時間もちょうどいい。

話をするのにはもってこいの時間だ。

私はママをちらっと見る。

ママはスマホをいじっている。

私はしばらくママに目線をおくる。

するとママは私を見る。

私は慌ててママから目線をそらす。

するとママは私に声をかける。

「あきらちゃんらしくないわね。どうしたの?」

「あ、いえ、その・・・・」

ママの言うとおり、私らしくない。

ど、どうしよう。このままじゃ気まずい。

「なにかあったら相談して」

ママは優しい。

その優しさに何度助けられただろう。

私は勇気をふりしぼる。

「実はママに話したいことがあるんです」

「私の過去について」

「そう。座って」

「はい」

「ちょっと貸し切りにしてくるわね」

「ありがとうございます」

ママが貸し切りの看板を立て掛けてくれる。

ママの配慮には感謝する。

「ごめんね。お待たせしました。」

「いいえ」

ママは私の顔を見るとにこりとする。

私はその顔を見て安心して話をする。

「私の過去についてなんですけど」

「うん」

「実は私、両親を知らないんです」

「えっ?」

「私の両親は私を産んですぐに事故で亡くなったんです」

「そうなの」

「親戚をたらい回しにされてけっきょく叔父さん夫婦に引き取ってもらったんです」

「叔父さん夫婦は優しい人達で私を本当の娘のように可愛がってくれました。」

「でも叔父さん夫婦に子どもが出来たんです。」

「私にとっては義理の妹でした。」

「義理の妹が成長するたびに私はいつか叔父さん夫婦に邪魔者扱いされるんではないかという恐怖でいっぱいでした」

「大学にも行かせてもらって仕事についてこれで恩返しできると思いました」

「でもそれと同時に早く家を出たいという思いもありました」

「そして友達の紹介でこの街を知ったんです」

「この街なら生活できると思い、移住することにしました。でも反対されたんです。苦労する必要はないって。でもこれ以上、叔父さん夫婦には迷惑かけちゃいけないと思いもあってその思いを伝えました。そしたら叔父さん夫婦が泣いたんです。ごめんねって何度も何度も謝られて」

「結局、お別れが辛かったのでこっそり家を出て、この街に来たんです」

「そうだったの」

「はい。そしてママとご主人と出会ったんです」

「そしてこんなお店で働きたいと思いました。まさかここで働けるなんて思ってもいませんでした。ママとご主人には感謝してます」

「あきらちゃん」

「それが私の過去です」

「苦労したのね」

「いいえ。苦労したのは叔父さん夫婦です」

「ううん。あきらちゃんも苦労したと思うわよ。ありがとうね。話してくれて」

「苦労を分かっているあきらちゃんなら苦労をしている人の気持ちが分かるかもしれないわね」

「ママ」

「これからはその力をこのカフェでいかしてほしい。そんなあきらちゃんだから任せられるの」

「今まで言えなくて辛かったのでしょ?」

「はい」

「ごめんね。早く気づいてあげられなくて」

ママが頭を下げる。

「ママ。なんでママが頭を下げるのですか?頭を上げてください。ママは何も悪くないですよ。悪いのは話せなかった私です」

その話を聞いてご主人も出てくる。

「あきらちゃん。ママ。誰も悪くないよ。」

「ご主人」

「あなた」

ご主人の言葉でママは頭を上げる。

「あきらちゃん。ありがとう!そう思ってくれて。ママのいうとおり、そんなあきらちゃんだから任せられる部分がある」

「過去の乗り越えた今のあきらちゃんは輝けると思う。これから先も。」

「だから自信をもって」

「はい」

「その話はもうおしまい。今日は三人でご飯を食べよう!俺のおごり!」

「いいですか?」

「いいの。いいの。俺が食べたいだけだから」

「はい。ありがとうございます」

「あなた。ありがとう」

「あきらちゃん、これからも宜しくね」

「はい。宜しくお願いします」

「こちらこそ宜しくお願いします」

「まぁー。あなたったら」

「うふふ」

「えへへ」

私たちはその夜、笑いながらご飯を食べるのだった。

三人で食べたご飯はどこか懐かしい味がした。















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ