パンフレットに騙された
桜坂学園。
生徒の自主性を重んじ、生徒会が主体となって学校運営にまで生徒の意見が反映される他とは違った学校。
そこの中等部に如月玲那と鬼龍院聖治は入学した。
学生時代の思い出は将来大人になってから時々振り返ってはあの時はよかったと言わざるをえない煌めきの時間。
人生において学生である時間などほんのわずかに過ぎないのにその数年の経験は何ものにも変えがたい貴重な時間。
学生である当時はその貴重さに気付かないのだ。大人になってからそのことに気付く。
学生という社会に出るまえの素晴らしい準備期間のありがたさ。社会に縛られる前ののびのびとした時間。
学業、部活、交友関係。やらなければならないことはあるものの、自由になる時間がどれだけあることか。
玲那は前世の厨二病を発症していた黒歴史を塗りつぶすくらいの新たな学生時代の青春を作りたいと思っていた。
自分の手でいろんな行事を計画して、意義のある学生時代を過ごしたい。
今の同じ青春の一部を共有する同級生にも素晴らしい学生生活をおくって欲しい。
だから、自らが学校運営にまで携わることのできるこの桜坂学園に入学したのだが……
なんだここ。
桜坂学園、そこは――――権力がものをいうただの金持ち学校だった。
才能あるものにはその道が開かれていると言われていた桜坂学園。
しかし実際は庶民で学業奨学生として入学した者を待ち受けているのはセレブ階層からの酷いイジメのターゲットに選ばれるというサプライズ。
生徒は誰もそれをおかしいことだなんて思っていない。
弱肉強食。権力のないものは虐げられて当然の扱いをされる。
運動会の行事などにはセレブ階級以外の学生を標的とした公然なる狩りもおこなわれている。いわゆる公開処刑ともいえばよいのだろうか。
イジメられている側は逆らうことなど許されない。逆らえば退学にされるからだ。
この桜坂学園を卒業したというブランド価値は将来どこの企業でもやとってもらえるほど価値があるのだ。中退などしたらその経歴に傷をつける。加えて庶民がセレブ階級層に逆らったりなどしたら一家もろとも社会から抹殺される可能性もある。
だからぎりぎりまで追い詰められても誰も逃げられないのだ。
現状を知り、玲那はその場に崩れ落ちる。
バラ色の学生生活を夢みて入学したのに……
いろいろプラン練ってたのに……
転校してもいいかな。
(パンフレットに騙された)




