ゲーム開始②
ハローみんな。今更ではありますがスナイパーに配布された銃の説明をします。
まずこのスナイパーライフル型エアガン。このイベントのためだけに作られた1つ数万円はする最新式モデル。紳士淑女にも扱える軽量タイプだよ。
出力は一応最低限に抑えられていて衝撃はちょっと大きいけれど当たっても皮膚が赤くなる程度ですむ。だから安心、腕もげたり頭にあたっても臓器は飛び散らないよ☆
射程は30mくらいかな?
命中精度はそれほどよろしくない。所詮おもちゃですし。銃1つ1つに癖があるけれど慣れると狙った所に撃てるようになる。数センチの誤差は致し方ない。
弾はビー玉大のカラフルペイント弾。当たると中のインクが飛び出ます。目に入っても大丈夫なように特殊なインクを使っているらしい。水では落ちないが薬液に浸すと簡単に色が落ちるから洗濯も楽でありがたい。
銃に弾は5発づつ装弾。
玲那の制服のポケットにはこの弾が大量に突っ込まれている。
弾を5発撃ちきっても再装弾には手間がかかるため戦闘中はあらかじめ装弾した銃を使い捨てで使用した方が効率が良い。
そんな訳で、玲那と堂本は動きの邪魔にならない程度に銃を武装していた。
伝達班の誘導に従い、標的の生徒を助けるため目的地に向かう。
階段を降り左右の通路を確認。
「右4、左6か。両方銃あり。どっちいきます先輩?」
右の通路から4名、左の通路から6名。全員銃を保持している。2人で片方づつ倒すよりも二手に分かれたほがいい。
「俺が左をやる」
銃を構えいつでも行ける体制の堂本。
「了解」
玲那も銃を構える。
堂本と呼吸を合わせ、揃った瞬間に飛び出す。
「GO!」
玲那はまず四人の顔面にペイントを撃ちこみ視界をジャックする。
「「「「うわああああ」」」」
突然のことに驚き、騒ぎながら乱射されるペイント弾に当たらないよう身をかわしながら彼らの手元の銃を撃ち落とす。
玲那は床に落ちた銃を回収する。弾が残っているものは取り出し、使い切ったものはそのまま転がしておく。
「ふむ、4人くらいなら楽勝ね」
呆気なく片付けた玲那は後ろを振り返り、堂本の様子を確認する。
「先輩、大丈夫でした?」
堂本の足元には6人の生徒が顔面蒼白に震えながら土下座し、銃を差し出していた。
なにその図。カツアゲか? 1対6で6人の方がカツアゲされるってどうなの。
「失せろ」
堂本が一言発すると彼らは我一目散に走りさっていった。
無抵抗降伏とは。なんて便利な堂本先輩。
玲那と堂本は奪った武器を装備し直し、目的地である倉庫の中に入る。
倉庫の奥には2名の男子生徒がぷるぷる震えて互いを抱きしめ座りこんでいた。
「君たち、大丈夫?」
玲那はできるだけ優しく話かけた。しかし――――
「透、僕たちもう終わりみたいだね」
「そんな……諦めるのか祐介! 一緒に2人で最後まで逃げ切ろうって約束したじゃないか! こんなところで終わるなんて!」
2人の世界に浸っている彼らに玲那の言葉は届いていなかった。
玲那は男子生徒を前に無言で2人のやり取りを見ていた。
「おい、貴様ら。話をっ!?」
堂本先輩が無理やりこちらの話を聞かせようとしたため玲那は慌てて先輩の口に自身の右手を押し付けた塞いだ。
彼らを見た玲那は思ったのだ。
(リ、リアルBLキタ――――!!!!!)
玲那はもともと腐女子であるが、最近はネタ不足で萌えるに萌えられないでいた。
どちらかといえばこの学園は女子生徒の方が人数も多く、ごくまれに百合カップルは目にしていたものの、BLカップルなんて見たことがなかった。
そんな萌不足の前に降臨したモブ男子同士のイチャイチャ。
玲那の中の一部がマグマの如く萌え滾った。
彼らが単に仲のよい友人同士であるとかそんな事実は置いといて、玲那の頭には薄い本1冊分くらいの彼らのストーリーが出来上がっていた。
現在、大事なサバイバルイベント中。
呑気にBL萌えしている場合ではない。ないのだが……
「先輩、彼らはしばらくこのままそっとしておきましょう。風紀のメンバーでここを固めて、時間前になったら例の場所に移動させてください」
「……わかった。お前がそう言うのなら」
いまだに2人の世界に浸る彼らを残し、玲那と堂本先輩は残る標的生徒を見つけるためその場をあとにした。
玲那と堂本が派手に動いてスナイパーを狩り、サポートの風紀メンバーやクラスメイトがひっそり標的の生徒を救いだし計画は順調にいっていた。
助け出した標的の生徒はカメラの回線を細工してある教室に集め、そこを風紀のメンバーで守らせる。
役15名、標的の半分は保護した。
しかし、それだけの標的がカメラから姿を消しているのだ。そろそろ気づかれるだろう。
制限時間まで残り20分を切った。
面白半分で参加していたスナイパーの生徒はまさか反撃を食らうなど思ってもみなかったものが大半。
玲那たちにより顔や胸にペイント弾を撃ち込まれカラフルに染め上げられた悲惨なスナイパーの生徒をみてやる気をなくし、早々に銃を放棄して観戦側に回っていった。
「たぶんもうスナイパーは50にも満たないくらいじゃないかしら」
「ああ、俺とお前で100くらいは討ち取ったはずだ。風紀の奴らも相当応戦したみたいだからおそらくそれくらいだろう」
標的はもう10人以上討ち取られている。
数名は今も逃げまわっているが捕まるのは時間の問題。
しかしその時間も残りわずか。
「さて、そろそろ相手も重い腰を上げてくる頃かな」
◇◇◇
「あーあ、堂本達にスナイパーかなり狩られちゃったね」
香城繭理がモニターをつまらなそうに眺め呟いた。
「カスどもが。堂本なんかに怯えやがって」
朱雀門焔もモニターを見ながら不甲斐ないスナイパーの生徒にイラついていた。
「あれ? なんか標的の数少なくない? さっきからどのモニターみても半分くらい映ってないんだけど」
「ああ? そんなわけ……確かに、明らかに少ないな。どういうことだ?」
「監視カメラには死角もあるけどさー、それにしたって標的が映ってなさすぎだよ」
香城と焔はモニターを端から端まで眺める。
「……おい、ここの24番のカメラ。まったく画像が動いていないぞ」
「ホントだ、もしかしてこれって細工されてる?」
「ふん、そういうことか。おい、残りのスナイパーをこの場所に向かわせろ」
焔は言い放つと自分用のペイント銃を手にして立ち上がった。
「あれれぇ~会長自ら出向いちゃうの?」
「ああ、ここまで好き勝手やってくれたんだ。俺様の手で止めを刺してやろうじゃないか」
酷くいやな笑みを浮かべた焔は特別観戦室から出て行った。
そして残りのスナイパー全員に鼠が逃げこんだ場所が告げられる。
「悪いが標的はひとりも生き残らせる気はない。残りの奴らをまとめて一掃してやる」
残り時間17分56秒。
その手に勝利を掴むのは――――




