表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ミートソースの作り方(仮)  作者: 鈴木 アイリス
1/6

#01

美味しいミートソースの作り方(仮)



#01



息子は私が作るミートソースが大好きだと言う。口の回りを真っ赤に汚して、ママのが一番美味しいって、満面の笑顔で言う。

息子と同じ年の頃の私は、ミートソーススパゲッティが大嫌いだった。


材料


合挽ミンチ、玉ねぎ、ニンニク、トマト、トマト缶、コンソメ、塩コショウ、オリーブオイル、赤ワイン(酒)、あればローリエ


「さっさと全部食べて」

「残したら、お父さんがまた怒るから」

「叩かれるよ、早く!」

テーブルの上には、市販のルーで作ったスパゲッティ山盛りの皿。食べても食べても減らず、味すらわからない。吐き気をもよおしても、涙が流れていても、ただひたすらフォークを口へ運ぶしかない。皿が空になるまで食べ続けなければならないのだから。

私の食事は抜きか山盛り。中でも一番辛かったのがミートソーススパゲッティだったって話だ。


私は実父を知らない。両親は私が生まれてすぐ離婚したからだ。私に名を付け産湯に入れてくれたのは叔父。その叔父をお父さんと呼び、叔母をお母さんと呼び、母をママと呼んでいた。頼もしい兄貴と優しい姉貴がいた。土佐犬がたくさんいた。幼い私はそこが自分の家、本物の家族だと勘違いしていた。毎日を幸せに暮らしていたから。

でも、その生活は突然、あっけなくとりあげられてしまうことになった。


「子供好きでいい人らしいよ。あんたはまだ若いんだから、そろそろ再婚して、新しい家庭を作らなきゃ。娘のためにもね」

「そんな気にはなれないんだけど」

「ぐずぐずしてたら、貰い手がなくなるだけよ。ただでさえ、子持ちでマイナスなんだから。家も仕事もあって親の面倒もみなくていい、そんな都合のいい相手なんて、簡単には見つかりっこないよ」

「わかったわ。会ってみる」


大人は子供の知らないところで勝手に話を始める。子供のためと言いながら。本当は自分たちのためなんじゃないか、と穿った見方をしてしまうのは私の歪んだ性格のせいだろうか。大人に従うしかない子供の気持ちを本当にわかっているんだろうか。


材料は揃った。

そして、地獄が始まった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ