第11話
魔法少女の続きです。
あたし野々宮りるか、14歳。
折角魔法少女になったけれど、未だに怪人さん達とは戦えていません。
その代わり、何故か仲良くなっちゃいました。
赤い髪の炎のアイルトン先生、青い髪の氷のビーエム先生、そして彼らのお兄さんである黄色い髪の電気のギャラン先生がとても優しくて、ついついあたしの中にあるワンダーコアを狙っていることなんか、すっかり忘れてしまっています。
てへ。
…
「…ママ、る~ん…怖いねェ…お外すごい雨と風と雷だけど、大丈夫よね?…家は大丈夫よねェ?…」
りるかはテレビのニュースを見ながらも、ママとる~んに確かめた。
「…そうねェ…ちょっと怖いわねェ…でも、ママがついてるから大丈夫よ、りるか…」
りるかのママはそう言いながら、ソファーに一緒に腰掛けているりるかとる~んを抱きしめた。
ニュースでは接近している台風の情報をひっきりなしに流れていた。
……
「…なぁ…今回の台風、すごいことになってるけど…あの家は大丈夫だろうか?」
この間、思いがけずりるかの家でテストの打ち上げに参加し、そこでりるかの母に一目ぼれしてしまったギャランは心配でたまらない様子。
「…そうだよねェ…りるかちゃん達、大丈夫かなぁ?…猫とママさんだけだもんねェ…りるかちゃん、泣き虫さんだから…泣いてなきゃいいんだけど…」
やはりニュースを見ながら、ビーエムが呟いた。
激しい雨と風は、益々勢いを増してきているようだった。
「…あっ…りるかの家の辺り、停電になってるらしいな…う~ん…」
一緒にニュースを見ていたアイルトンが独り言のように言うと、ギャランが急に立ち上がった。
「行くぞ!お前達!」
「…えっ?どこに?こんな雨だけど…」
ビーエムがきょとんとした顔で尋ねると、真顔のギャランはアイルトンとビーエムを連れて、りるかの家に向かった。
……
「…きゃっ!ママ~!こわ~い!真っ暗よォ~…うわぁ~ん…ママ~!」
りるかは急に部屋の明かりとテレビが消え真っ暗になると、いきなり泣き出した。
「…大丈夫よ!りるか…ママはちゃんと傍にいますよ…大丈夫だから…ねっ…ちょっとる~んと一緒に待っててもらえる?ママね、今懐中電灯とろうそく取ってくるから…ほんのちょっとだけ待っててね…る~ん!りるかの傍にいてちょうだいね…ママ…今探してくるから…」
それだけ言うと、ママは手探りで部屋をゆっくりと進み、非常持ち出し袋やろうそくなどが置いてある納戸へ向かおうとしていた。
ガタン!ドタっ!
「…いたたたたた…」
「ママ!ママ大丈夫?…どこ?ママ、痛くしたの?ママ、ママ」
「…いたたたた…だっ…大丈夫…大丈夫よ…ちょっと転んじゃっただけだから…ちょっと待っててね…今、ろうそくとか持ってくるから…っつう…いたたたた…」
りるかのママは、真っ暗になった部屋のどこかに足を引っ掛け激しく転んで、体のあちこちをぶつけて、足もくじいてしまっていた。
それでも今のこの状況を打開しようとママなりに、一生懸命立ち上がろうとした。
そんな時だった。
ドンドンドン!
玄関のドアを誰かが叩く音がした。
「こんばんはぁ~!りるかちゃん!ママさん!大丈夫ですか?…私です!ギャランです!あの…この辺り停電だって知ったもんだから…心配してたんですけど…」
「は~い!大丈夫なんですけど…ごめんなさい…ちょっと待ってもらえますか?」
りるかのママは床に這い蹲る形でゆっくりと、外からの僅かな光を頼りに玄関へ向かった。
ガチャ…
やっとの思いで玄関の鍵を開けると、そこにはずぶ濡れの怪人達3人が立っていた。
「…だっ…大丈夫ですかっ!…今、私が電気をつけますから、安心してください!」
りるかのママを抱きかかえると、ギャランはすぐさま家の電気を復旧させた。
「…さっすが!ギャラン兄さん!…そうだ!りるかちゃん!大丈夫かい?」
「うわぁ~ん!先生達~!ありがとうございます~!…あのね…りるか達ね、すんごく怖かったの…雨の音と風の音とすごくって…怖かったんです~…うわぁ~ん…ママ~っ!そうだ!ママ!大丈夫なの?さっきすごい音したけど…ママが…ママが…うわぁ~ん…」
りるかは家中の電気がつくと、玄関まで走ってやってきていた。
「ママっ!ママ…」
「…いたたたた…大丈夫だから…りるか…暗くて何につまづいちゃったかわかんないんだけど…ママ、どじよねェ…っつう…いたたたた…」
りるかのママはギャランにお姫様抱っこでリビングのソファーまで連れてきてもらった。
その後を一緒に来ていたアイルトンとビーエムが入ってきた。
今の今まで心細かったりるかは、3人が来てくれてホッとしたのだった。
「ママ…大丈夫?どこぶつけたの?…りるかが手当てしてあげるね…ちょっと待っててね」
それだけ告げるとりるかは薬箱を取りに行った。
「あのっ…いたたたた…ありがとうございます…こんな酷い天気の中…わざわざすみません…助かりました…本当にありがとう…」
「いえっ…私達…こんなことぐらいしかお手伝いできませんが…それよりも足…大丈夫ですか?あの…ちょっと見せてもらえますか?すみません…」
ギャランは顔を赤らめながらも、りるかのママの怪我した足を診てあげた。
「いたたたた」
「…ママ~!薬箱持ってきたよォ~!」
「ありがとう…りるか…ごめんねェ…そうそう…皆さんにお茶お出ししてもらえる?ごめんね」
「えっ…でも…ママ…足怪我しちゃったし…りるか…湿布とか貼ってあげるよ…」
「あっ…りるかちゃん…ママさんの足は私が診ますよ…ちょっと腫れてきてるみたいだから…心配だけど…明日の朝一番で僕が病院に連れて行くから…ねっ…大丈夫だから…」
「そうですかぁ…すみません…じゃあ…お願いしま~す…あっ…そうそう…アイルトン先生とビーエム先生!そんなところに突っ立ってないで、こっちのソファーにどうぞォ…今お茶入れますから…」
りるかがお茶を入れると、アイルトンとビーエム、そしてりるかとる~んは談笑し始めた。
ママはギャランに怪我の手当てをしてもらっていた。
「…ホントにすみません…ありがとうございます…電気までつけてもらっちゃって…助かりました…」
「…ああ…いえ…私は…電気を扱うのが得意だから…こんなことぐらいしかできませんが…」
「いいえ…すごく助かりました…っつう…」
「大丈夫ですか?すみません…乱暴でしたか?」
「いいえ…大丈夫ですから…あ~…やっぱり男の人がいるってこんなにも心強いものなんですねェ…家はりるかとる~んとあたしだけだから…頼もしいわぁ…ありがとう…」
ママの発言に一瞬ドキッとしたギャランは「あのっ…あの…もし…もし…よかったら…私達、いつでも助けに来ますから…りるかちゃんとママさんとる~んくんをお守りしますから…だから…なんでも遠慮なくおっしゃってください!」と口走ってしまった。
「…ええっ!…でも…あなた達は…りるかのワンダーコアを抜き取りにいらしてるんじゃ…」
「いえっ!…ワンダーコアなんていりませんっ!そんな物よりもあなた達親子の方が大事ですからっ!」
ギャランの正直な気持ちに、そこにいた全員がびっくりしてしまった。
「…ギャラン兄さん…とうとう…言っちゃったねェ…」
「そうだな…とうとう言ってしまったな…まぁ…俺も近頃はワンダーコアのことなんて、少々どうでもよくなっていたがな…」
「ええ~~~っ!そうなんですかぁ~!…まだ一回も対決してないじゃないですかぁ~…りるか、魔法少女の衣装気に入ってるのにぃ~…」
「…あっ!りるか…魔法少女の衣装は別に対決の時だけに限らず、いつでも変身して着ていいんだよ…言ってなかったっけ?」
る~んは怪人達の正直に打ち明けられた気持ちを確認すると、安心したようにりるかにそう教えた。
「ええ~~~っ!そうなのォ~!…あっ…でも、嬉しいなぁ…先生達と普通に仲良くしてもらえるんなら…うふふふふ」
りるかは笑顔だった。
ビカッ!バリバリバリバリ!!!!
「きゃっ!こわ~い!」
断続的に続いていた雨の中、突然ひどく大きな雷が近所に落ちたようだった。
りるかは手で耳をふさぎ、目をつぶって体を丸めた。
「大丈夫だ…」
「大丈夫だよ!りるかちゃん」
アイルトンとビーエムが震えるりるかの背中をそっとトントンとした。
…
「きゃっ!いたたたたた」
「ママさん…大丈夫ですから…」
ギャランは雷に驚いて身をかがめるママを、そっと抱きしめた。
一晩中、怪人達はりるかの家に一緒にいてくれた。
最後まで読んでくださって本当にありがとうございました。
だんだんお話がおかしな方向になってまいりましたが、これからもどうぞよろしくおねがいいたします。




