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お雛様だけのひな人形

作者: 華七乃


「あー、今年ももうすぐひな祭りか……か」


 いつの間にか家に飾ってあったひな人形を見てもうそんな時期なんだ~と思った。

 小学校低学年の時は着物を着させてもらったりしてお祝いしていたが、今はもう中学生なので派手に祝うことはしなかった。


 だが、ひな人形だけは毎年必ず飾っていた。


 私の家は子供が兄と私だけなのでひな人形は雛壇と豪華だ。(とは言っても五段だが)


「あ、いけない!学校行かなくちゃ」


 家を出る前にもう一度だけひな人形を見てから私は学校に行った。



──────



「はぁ~今日も疲れた。ただいま~」

「おー、真由ちゃん、お帰りなさい」


 家に帰るとお祖母ちゃんが返事をしてくれた。


「真由ちゃんや、あとで渡したいものがあるからちょっと来てくれんかの?」

「うん?わかった」


 自分の部屋に鞄を置き、私服に着替えてからお祖母ちゃんがいる畳の部屋に向かった。


「お祖母ちゃん、渡したいものってなに?」

「おー、真由ちゃん来たか~。渡したいものはこれじゃよ」


 そう言ったお祖母ちゃんの持っているものを見てみると


「これって、お雛様?」

「そうじゃよ」


 お雛様だけのひな人形だった。


「さっきな、友達のところに行ってたんじゃよ、そしたらな、友達のところの娘さんはもう大人で嫁いでいてな、家に残っていたひな人形もほとんど汚れている状態だったらしいんじゃ、でもお雛様だけは綺麗なままじゃったんで捨ててしまうのも勿体ないから貰ってくれんかと言われたんで貰って来たんじゃよ」


 お雛様をよく見てみると確かに汚れなどはほとんどなくとても綺麗な状態だ。

 ……それになんだかこのお雛様を見ていると捨てるのはとても勿体ない事だと思えてくる。


「どうだい?真由ちゃん」

「う~ん、そうだね貰っておこうかな。とても綺麗だし、よく見ると結構可愛いし」

「そうかい、そうかい。そりゃーよかった」


 そう言ってお祖母ちゃんは洗濯物を取り込むために外に出ていった。

 私はしばらくお雛様を眺めていた。


(あ~あ、お雛様がこれだけ可愛いとなるとお内裏様はきっととってもかっこよかったんだろうな~……あ、このお雛様どこに置こうかな?)


 と、どこかに置ける場所はないかと探しているとちょうど雛壇が置いてある部屋の近くの棚が空いてることを思い出した。


(あそこなら皆の目に留まるし、このお雛様も映えるよね)


 私はその棚にお雛様を置き、少しだけまわりにお雛様に合うような小物を置いた。


(うん、我ながらいい出来映えだ)


「おー、真由ちゃんそこに置いてあげたんだねー」


 洗濯物を取り込み終ったお祖母ちゃんがそう言って畳の部屋に戻っていった。



 そうして、夜になりご飯を食べお風呂に入りその日は寝た。


 あんな事が起こるなんて少しも思わずに……



──────



 次の日も何ごともなく普通に学校に行き、放課後に友達と遊び家に帰って少し部屋でゴロゴロする。

 そして、夜ご飯を食べお風呂に入りまた部屋でゴロゴロし10時になったので寝た。



「う、う~ん……」


 この日は何故かとても寝苦しくなり仕方なく私は起きた。


「はぁ~……今何時だ?」


 見てみると時計は2時を少し過ぎた所を指していた。


「2時過ぎか……少し水でも飲んでくるか」


 下に降りて台所で水を飲んだ私は部屋に戻ろうとしてふと、お風呂場の電気がついているのに気がついた。

 お風呂場からは水を使う音や桶を使っている音がしている。


(お兄ちゃんかお父さんが入ってるのかな?)


 たまに二人は夜遅くに入ることがあるのでこの時私は少しも疑問を持たずにそのまま部屋に向かおうとした。


「あれ?」


 通り際にお雛様が置いてあるはずの棚一瞬お雛様が置いてない気がした。

 振り替えってもう一度見てみたがちゃんとお雛様はちゃんと置いてあった。私は気にせずそのまま部屋に戻り寝た。




──────



 その次の日の夜、また私は寝苦しくなり起きた。

 ふと、時計を見てみると昨日と同じ2時を少し過ぎた頃だった。


(本当、最近なんなんだろう……)


 そして、また水を飲むために下へ降りていくとお風呂場の電気がついていた。


(また夜中に入ってんの?)


 お風呂場からはやはり水音と桶を使っている音がしている。


(夜中に入るのやめてくれないかな~、少し注意しよう)


 お風呂場に近づいていくと何故か音が止み、急に静かになった。


(あれ、音が止んだ?どうしたんだろう)


 お風呂場に着いた私はドア越しに声をかけた。


「夜中にお風呂入るの止めなよ~、ご近所さんに迷惑だよ?」


 しかし、お風呂場は静かなままで何も反応がない。


(なんか変、それに不気味だな……)


 そう思いながらも私は意を決して


「あ、開けるよ~……」


 ドアを開けてみた。




「えっ……なんで……」




 さっきまで水音や桶を使っている音がしていたはずのお風呂場には誰もいなく、さらには水滴すら何処にもついていなかった。


「っ!!」


 怖くなった私はすぐに自分の部屋に戻り布団を被った。



────この時、棚にお雛様が居なかったことに私は気づかなかった…… 



(なんで、なんで誰もいないのに音がしてたの)


 布団のなかで縮こまっていると


ギシッ……ギシッ……


廊下を誰かが歩いている音がした。


 それに気がつき、さらに怖くなってもっと縮こまろうとしたが


(えっ?なんで……体が動かない……)


いつの間にか金縛りにあっていた。


ギシッ……ギシッ……ギシッ……


今度は階段を登ってくる音がした。


 私の部屋は階段を登ってすぐの所にある。


(もうヤダ、怖い、早く朝になって!……)


ギシッ……ギシッ……ギ……




 この日は途中で音が聞こえなくなり、体も動かせるようになっていて、それ以外のことは起こらずに朝になった。



──────



 次の日の夜、昨日の事があるので寝るのはとても怖かったが明日も学校があるので怯えながらも眠った。

 けれど、やはり寝苦しくなり目が覚めた。

時計を見てみると案の定、2時を少し過ぎていた。


ベットから起き上がろうとすると


「っ……っ!!」


何故か今日はすでに金縛りにあっていた。


ギシッ……ギシッ……


すると下の階の廊下を誰かが歩く音がした。


ギシッ……ギシッ……ギシッ……


そして、階段を登ってくる。


(やだやだやだやだ、なんで、なんで動かないの!)


 怖くて、怖くて、だが、目だけは動かせるようで私は目をぎゅっと強く閉じた。


ギシッ……ギシッ……ギ……


階段を登っていた音が消えた。

 そのまま昨日のように何ごともなく朝になるのかなと思った……その瞬間


突然、体が何者かに激しく、強く、大きく左右に揺さぶられた!


(やだ、なんなの!痛い!やだ、怖いよ、もうやめてやめてやめてやめてやめてやめて)


心の中でずっと"やめて"と繰り返していると


「───……ど─…どこだ……どこにやった……」


誰かの声が聞こえた。

その声には悲しみと、強い怨みがこもっているような気がした。


私は、その声が誰なのかが気になったので、とても怖かったが薄く目を開けてみた。


少ししか見えなかったが、それはとても綺麗な着物を着た髪の長い女の人だった。





そのうち、体を揺すぶられなくなり、声もだんだんと小さくなっていき聞こえなくなった。



──────



 朝になり、階段を下りていった私は昨日の女の人がどこかで見たことがあるような気がするなと考えていた。


 顔を洗うために洗面台に行こうと棚の所を通り過ぎようとしたとき、お雛様が倒れているのに気がついた。


「なんで倒れてるんだ?」


 立ててあげようとお雛様を持ち上げ、何となくお雛様を見たとき


「あっ!!」


気づいた。


(このお雛様……昨日の女の人にそっくりだ……)


 急に怖くなった私は急いでお雛様を立てて、その場から離れた。



 この日はちょうど休日だったのでお祖母ちゃんにお雛様が来てから起こっていた事を話すと


「お雛様は独りぼっちで寂しかったんじゃないか~?すぐ見えるところにちゃんとお内裏様のいる雛壇もあったからのー」


と言った。



 その日のうちに、お祖母ちゃんと一緒に近くのお寺にお雛様を持っていきお祓いをして貰いそのまま預かってもらった。





────その後、お風呂場の電気がつくことも、寝苦しくなることもなくなった。

初のホラー作品です。

誤字脱字等見つけたら教えてください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 実話調のお話でリアリティがあり、身近な恐怖を感じさせるな、と思いました。 [気になる点] 少し文章が単調で、また驚かされる展開があまり無く、そこが残念ではありました。 [一言] はじめまし…
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