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第22話~監禁②

 眼が覚めたとき、何が起こっているのか理解できなかった。薄暗い一室。床に転ばされ、両手足が縄で縛りつけられいていた。意識がぼんやりと覚醒していくと共に、先程までの成り行きを思い出した。

 標の仕業に間違いはなかった。疑いたくはないが、あいつは俺を監禁したんだ。この工場は自宅から遠く離れている上、俺たち以外は誰も知らない。周りに気づかれずに幽閉するなら、これ以上の場所はない。


 そこまで考えた時、ぎしぎし音を立てて隅のドアが開いた。


「起きましたか兄さん。お気分は如何です?」


 この状況で気分も何もねえよ、と思ったがとりあえずの疑問をぶつけた。


「まあまあだね。だけど一体全体どうしてこうなってるのかサッパリ判らないがな。俺をどうするつもりだ? 何が目的だ?」


「兄さんが悪いんですよ。大人しく私のことを受け入れてくだされば、こんなことはせずに済んだんです」


「それで」


 俺は低い声で返した。


「こんな真似をしたのか?」


 標はピクリと眉を動かして俺を見た。その反応から、憎しみのためにしたことではないと考える。いや、俺があちこちの女と遊びまわってるのが原因で、堪忍袋の尾が切れたのかかと思うと、慙愧に耐えないが。

 

「兄さんの身の安全は保障します。なので抵抗だけはしないでください。当分は、私とここにいてもらいます」


 標は淡々と、半分説き伏せるように言った。もう半分は恫喝だ。

 だがこうなった以上は仕方ない。俺は一番気がかりなことを尋ねた。


「飯とか出るの?」


「もちろんですよ」


 標は少し食い気味に答えた。別に腹が減っていたわけではないのだが、飯抜きではたまったものじゃない。よかった、最悪飢え死にの心配はなさそうだ。


「トイレは?」


 俺がそう尋ねると、

「トイレ?」


 標はうーん、と首を傾げた。

 ハッキリ言うが俺は、小便が出やすいタイプだ。一日十回は行ってる。我ながら多いよなあと思うが、生理現象は我慢のしようがないだろう。しかし手足が縛られてるこの状況では好き勝手にトイレにもいけない。


「トイレに行きたいですか?」


「あ、当たり前だろ。べ、別に今はいいけどよ。でもずっとこんな所にいたらいつかはしたくなるかもしれない。それはどうすんだよ」


 俺は道理を説き伏せるように言った。俺のしたことは確かに悪いとは思ってる。しかし、それとこれとは話が別だ。標もまさか、たった一人の兄にそこまで度を越したことはしてこないだろう。

 と。思っていたのだが。


「私が飲みますから大丈夫ですよ」


「…………な、ななななんと」


 立派な平城京、と言わなかった自分を褒めてやりたかった。つまり標は、用を足したい時は俺の服を脱がしそのまま排泄物の処理までしてくれると言うのだ。冗談じゃない、そんなAVみたいなプレイを妹にさせられるか。


「おまえな。馬鹿も休み休み言えよ」


 俺がそう言うと、標は心外だとばかりに反論した。


「私は真剣そのものですよ?」


「人のおしっこを飲むってことがか? もし本気なら一度脳外科で見てもらった方がいいぞ」


「兄さん絡み以外は正常ですよ」


 標はクスクスと笑いながら、俺の体に身をすり寄せてきた。当然のことだが、手足に枷がはめられてる俺は動けず、標のされるがままになっている。標は俺に覆いかぶさり、柔らかな肢体の感触が全身を這いずり回る。そのまま標は俺の耳元に息を吹きかけた。


「柊さんとはもうこういうことはしましたか?」


 鼓膜の奥まで響くような柔らかな声で、標はそう耳打ちした。俺はびくん、と震えながら「いや」と否定するのが精一杯だった。


「そんな関係じゃないって言っただろ」


「嬉しい。やはり兄さんは私の為に初体験をとっといてくれたんですね」


 それは男に言うのではなく、女が言われる台詞なのではないかと思ったが、内心に留めておくだけにしておいた。俺自身、標とそういう関係になることを想像しなかったわけではなかったからだ。


 標は俺の全身をまさぐりながら、耳元でこう囁いた。


「兄さん、私の言うことを聞いていれば痛くしませんからね。大人しく、大人しくしていてください」

 

何と三年振りの投稿!

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