悟りの力
「悟りの力って?」
「悟りの力というのはね、何かを強く決断したとき、発揮される力のことよ。
その決断が揺るぎないもので、固いものであるならば、絶大な魔力を得ることができる。つまり一気に、強くなれるのよ。」
「ふ~ん、あんがい簡単なんだな。」
彼女はフッフッフッ・・・と笑い、その笑い方は不気味なような可愛いような感じで・・・
「これが全然うまくいかないんだなぁ~!自分は強く決断したって思っても人間どこかには迷いがあるってものなのよね。たとえ、その迷いに自分は気づいていなくてもね。
人間、優柔不断はつきものなのよ。」
「なるほどなぁ・・・・・」
確かに、俺にも迷いがある・・・・・・
そうすることが正しいのか、間違っているのか・・・・・・何人もの人にやめたほうがいいと言われ続けてきた・・・・・
「でもね!その迷いを断ち切り、固く決断したときは、ほんっとうに強くなるんだから!
例をあげるなら、ニホンの王!あの人はすでに解脱した悟りの境地に達しているわ。
まあ、悟りの力を手に入れてる人でその人しか知らないだけなんだけどね。」
「この国の王が?すげぇな!あれ、でもなんで知ってるんだ?」
「あなた・・・・・・・あの人が昔、一つの戦争を止めたってこと知らないの?」
「戦争って・・・・・・あぁ!魔法聖戦か!そういえば、この国の王が止めたんだっけな」
「そういえばって、あなたねぇ・・・・・・それでもニホン人???」
このニホンは領土が狭い。大国が攻めて来たらすぐに全領土が荒地と化すぐらいに。
しかし、今まで、ニホンに攻めてきた国は1カ国しかない。
なぜなら、その王の存在。それに仕える数多くの達人レベルの魔人たち。魔法と剣術どちらも、上級者である魔剣士たち。この者たちのおかげで日本国は現在も平和を保っている。
それに、日本は領土が狭いが、人口は多い。
そして、日本には他にも強力な魔人や剣人、そして魔剣士が多くいる。
なぜなら、日本人は基本修行好きだからである。
私も好きだ。
目標があるから、頑張れる。
「そういえば、君ってどこから来たの?同盟国のシュセズからか?」
彼女は目をそらし
「そうよ。ニホンの国が気になったから来てみたの。」
「なんでこんなところに?」
「ひまだからかな?」
「ひ、ひまでこんな森に来てるのかよ・・・・・・」
どんな神経してるんだ?
「べ、べつにいいじゃない!人の勝手でしょ!」
彼女は頬を膨らまし、そっぽを向いた。可愛かった。
「そういえば名前聞いてなかったな。何て言うんだ?」
彼女はこちらを振り向き
「ミネアよ。あなたは?」
「フェイだ。よろしくな。」
「ええ、よろしく!」
こ、これって友達成立だよな?やったぜ!
「ところで、フェイくんは強くなりたいんでしょ?」
「当たり前だろ!強くならないといけないんだよ!」
「どうして?」
首をかしげるミネア
「そ、そりゃあ、やっぱり強くなったらかっこいいじゃないか。」
「あ、あなたねぇ・・・・そんな軽い気持ちで修行してたら一生強くならないわよ!」
ガチギレのミネア
「じょ、冗談だよ・・・本当の事いうと、人を守れる力がほしいんだ。」
「へぇ~結構いいとこあるじゃない!」
「あ、ありがとう」
照れるな・・・・・
「でも、男だったらもっとでか~い目標を持たないと!」
「お、おう・・・・例えば?」
「世界を救う!とかさ。」
「は、はあ?」
「だーかーら!世界を救うことを目標にしろって言ってるの!」
俺は笑いながら
「世界を救うだなんてそんな無茶なこと」
「む、無茶じゃな~い!私だってその目標にしてるのよ?おかげで、強くなったわ!」
「ま、まじで・・・?じゃあ、お前も悟りの力手に入れたのかよ?」
「完全じゃないけどね・・・・でもね、迷いはないわ。この目標にね。」
ミネアはいたって真剣だった。
完全じゃない・・・?
「ちょいまち。悟りの力って完全じゃなくても力が手に入るのかよ?」
「多少強くなるだけだけどね。というか、悟りの力じゃなくても人は目標に向かって努力していけば強くなるのよ!」
「お、おう・・・・・ようするに自力で強くなったってことだな?」
「違う!これはれっきとした悟りの力から手に入れた強さよ!」
「お、おう・・・」
俺は考えた・・・・自分は強くなりたいのか?その意志に嘘はないか?
迷っていないか?なぜ迷っている?
思い出せ・・・・あの時のことを・・・・
俺は・・・・
俺は・・・・
「強くなりたい。」
「えっ?」
「俺、強くなりたい!強くなって強くなって・・・・・」
まだ迷っている。迷うな俺。それでも男か。
固く決意したはずだ。あの時から。
俺は・・・・もう迷わない。
「強くなって・・・・この世界を救いたい。」
「えっ・・・」
彼女は口をポカーンと開け、驚いた様子だった。
そして、その顔はだんだん喜びに満ちた笑顔に変わり、
「よく言ったわ!男の中の男!」
と、今にも乾杯!って言いそうなくらいのテンションの声で、俺の肩に手でポンと叩いて言った。
テンションの変わりように焦る俺。
「だから・・・その・・・俺に魔法教えてくんないか?頼む!!」
頭を下げ頼み込む。
「言われなくてもそうするつもりよ!」
さっきと同じテンションの声で答えるミネア。
なんて良い人だ!
「ありがとう!」
ミネアの手を取り感謝の言葉。
ミネアの頬が少し赤く染まる。
「わ、わかったから!は、離してちょうだい!」
「あ、すまねぇ」
やばい、こんな美人の手をずっと握ってた。
なにやってんだ俺。
「んーまあ、とりあえずこれからもよろしくねフェイくん!」
「ああ、よろしく頼む!ミネア!」
そんなこんなで俺の修行生活が始まった。
彼はこの時は思ってもいなかっただろう。
自分が世界を救う存在になることを。