01.恋音を数える日々
お久しぶりです。
今回は登場人物を少なくしたいと思ってます。
これからよろしくおねがいします。
“ きりー…待ってよぉー ”
“ あたしね、きりのこと――… ”
思えばあの頃、あたしの胸はいつもあの人でいっぱいだった。
いつの間にかはじまっていた青春。
きっとあたしの一番おっきな恋は、どんな恋よりも儚く届かない恋。
*
「なぁ麻奈」
「ん?」
「そいや今日だよな」
「だねぇ……」
日向麻奈という平凡なこの名を再びあの人に呼ばれるかと思うと思わず恋音が鳴り出す。1年ぶりだろうか、久しぶりにあの人がここに帰ってくるのは。
「哀しくねーのかよ」
「……」
「悪りぃ」
「陽はさぁ、桐帰ってきて嬉しい?」
「どーだろな、分かんねーわ」
「そ」
…ああ、こうしちゃったのはあたしなんだ。
全部ぜんぶ、壊したのはあたしだ。いつからだろう、桐を恋愛感情で“ 好き ”になったのは。
……いつからだ。
皐陽、十六歳。
金髪にド派手なティーシャツを着てる、いわば不良。よくよく見ると整った顔つきをしてるあたしの幼馴染の一人。
「あたしたち、あの頃みたいに戻れるよね?」
「……」
「桐と笑って話せるよね?」
「ムリだよ麻奈、アイツは――…」
「結婚したから?」
結婚なんて言葉に程遠いあたしたちが、結婚を身近に感じるようになったのはあの人が結婚したからだ。
桐谷千尋、あたしたちより2つ年上の18歳。“ 桐 ”というアダ名であたしたち幼馴染は呼び合っていた。あたしと陽…それから桐は幼馴染だ。そして彼は…既婚者。
ドラマや漫画で駆け落ちなんてシーンがあるけど、忘れないでほしい。
残された人間の悲しみを。
あの日は確か、今日みたいな炎天下の日――…。
“ 桐ー?17歳おめでとー ”
“ まだ早ぇーよっ ”
“ いーじゃんーねっ陽 ”
“ そーだよ桐ー ”
“ あのさ――…俺、家出るわ ”
“ ――…は? ”
“ 結婚する ”
“ 結婚――って、桐まだ学生じゃん ”
違うんだ。
あたしが言いたいのはこんなことじゃない。
あたしが伝えたいのは―――…。
ずっとずっとアンタに抱いてきた気持ちなのに。
“ 学校辞める ”
“ 叔父さん叔母さんは? ”
“ 反対してた、だから遠いとこ行く ”
“ そんなのムリに決まってんじゃんッ ”
“ 俺はアイツがいれば何だってできるから ”
アイツ、それはきっと桐の彼女で桐があたしたちよりも大事だと思ってる存在。
あたしは…桐があの人と出逢う前から、ずっと、ずぅっと桐のことが好きなのに。
“ 桐…お前、麻奈の気持ち知ってんだろ? ”
“ 陽…やめて! ”
“ 何で結婚なんか―――… ”
“ もういいよ陽、行こ? ”
“ ――…ぉぅ ”
思えばこれが桐との最後の会話だったかもしれない。
あっさりしすぎてるって言われればあっさり…哀しいって言われれば…哀しい。
一瞬の内にあたしは失恋した。
*
「まーなっ」
「陽――…あたしっ」
「どした?」
「あたし今でも…桐のこと好きだ」
「……だろーな」
「え?」
「簡単に諦める訳ねーの分かってるから、これでも生まれた時から一緒にいんじゃん、俺ら」
「変なのー」
だよなー、と笑いながら陽は言う。
いつみてもあたしたちは変わってない。
1年経っても、10年経っても、陽とは何も変わらない気がするよ、まったく。
「そろそろ、行くか?」
「うん」
あの夏の日―――、
あたしがもし、桐に“ 好きだ ”と。想いを伝えてたとしたら、どうなってたんだろう。
奥さんなんて存在を恨むこともなかったと思う。桐と陽の仲が悪くなることもなかったと思う。
ぜんぶぜんぶ、狂わしたのはあたしなんだ。
ああ、くっだらない。
訳分かんなくなって思わず頭かきむしった。
いかん、あたしとしたことが…将来はげちまう。
ぼさぼさの髪、化粧にも興味なければ色気もない。
桐が出て行ってからかな…、どうでも良くなったのは。
一つだけ、桐に問いたい。
――桐は今、幸せですか?
はじめまして、又はこんにちは。
今回は、気の強い女の子を書きたくて、このお話を書くことにしました。
投稿は遅れるカモですが、精一杯がんばりますので、よろしくお願いします。
よければ感想、アドバイスください。
おねがいします。