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A:彼の心情

十一、

「ねぇねぇ、フレアの家にいるあの居候さんって物凄い魔法使いなんだよね?」

 フレアのクラスの友達が近づいてきてそんなことを尋ねてくる。

「何の話しているの?」

「私たちも混ぜてよ!」

 続々と集まってくる人たちにフレアは驚いているようだったのだが、先ほど質問してきた人物に対して、フレアはまるで自分のことのように自慢げに答える。

「うん!すごい人だよ!私が知っている中で一番頼りになる人なんだよ!」

「へぇ〜すごいね、でも、人間的にはどうなのかな?ほら、自分の力を過信している人って結構いるよね?それで身を破滅させちゃう人なんて五万といると先生も言っていたし?」

「う〜ん、そこまではわかんないなぁ・・・・」

「意外と臆病だったりして?」

「なら、零時さんに聞いておくね?」



「はぁ、今日も終わった終わった・・・」

 俺はゆったりとした夜の時間を満喫していた。

「けど、やっぱり図書管理は大変だな・・・・蔵書の管理、点検、発注、処分・・・あと、年内計算とかもしないといけないのが面倒だな・・・・大体、フェイル生徒会長の仕事だったみたいだし・・・」

 そのようにぼやいていると隣から槍が飛んできた。

「まぁ、補佐官なのですからその位して当然ですよ」

「確かにそうだけどよ・・・・たまには暇も欲しいものだな〜」

「なら、教室に行って授業を受ければよろしいでしょう?」

 まるで詐欺師が詐欺を働いた後に見せるような笑顔を俺に向ける。きっと、この人物は俺が自分のクラスをどこだったか忘れてしまったことを覚えているのだろう。それに、いまさら授業などに出ても内容など分かりなどしない。

「・・・・」

「でしょうね、いまさら授業など受けてもわからないと思いますけどね?」

「・・・・・」

 さらに無言となって目をつぶって首を振るフェイル生徒会長・・・ふ、やはりお見通しというわけか・・・・

「ま、それなら個人的に教えてあげてもいいですけど?」

 片目を開けて俺のほうを見てくる。


「零時補佐官、そこはそうじゃありませんよ?もうちょっと事務処理関係の書類を任せたほうが良かったのでしょうか?」


 ああ、一瞬だけ教えてくれているフェイル生徒会長の勇姿を垣間見たような気がするぜ。

「・・・・ああ、今度教えてくれ」

「わかりました」

 遠慮しておこうとしてもこのおせっかい好きのことだ・・・・絶対に強固な態度で迫ってくるに違いない、俺はとりあえずあいまいにしておくことにした。

「零時さーん!」

「ん?」

 扉をばたんと開けてはいってきたのはフレアだった。本日は皿洗いをしていたので部屋にいなかったのである。

「どうした?なんだかおかしな顔をして・・・」

「ちょっと聞きたいことがあるんですけど?」

 この前そういって持ってきたものはこの世界の歴史の問題だった。新参者の俺に解けるはずなどなく、二人して悩んでいた結果・・・・見かねたフェイル生徒会長がばしっと答えに二人を引きずっていってくれたのである・・・・後に、俺とフレアは生徒会長にみっちりと歴史を叩き込まれた。そのおかげである程度までならこの世界の歴史について知っている。

「悪いが、この前みたいに問題を持ってこられても答えられないぞ?俺はもう、徹夜で勉強なんて嫌だからな?」

「大丈夫ですよ、今度から一週間で十四時間ほどみっちりと歴史を頭に入れ込んで上げますからね」

 にやりと笑っているフェイル生徒会長を俺は一瞥してフレアに文句を言うことにした。

「・・・・ほら見ろ、生徒会長さんが本気になっちまったぞ?ふらふらで倒れても今度は俺は知らんぞ?」

「いえ、勉強のことではないんです」

 首を振っているフレアに俺とフェイル生徒会長は首をかしげた。それなら・・・・何かフレア関係の話なのだろう。

「なんだ?明日の晩御飯の献立会議か?」

「それも違いますよ」

「じゃ、明日の弁当の中身予想か?」

「違います」

「それなら・・・ああ、明日の朝食のことか?ネリュ姉さんは確か・・・・」

「違いますっ!!」

「あれ?てっきり食事のことかと・・・・」

「なんで私は食事のことしか頭になさそうなんですか!」

 珍しく怒りながらそんなことを言ってくる。

「ああ、すまんすまんこれが違うなら・・・・なんだ?」

「当ててみてください」

「・・・・すまん、わからん」

「早すぎです!」

「・・・おやつのことか?」

「だから、違います!!」

 フェイル生徒会長に視線を送る。ここで生徒会長が当てればお怒りも収まるだろう。がんばれ、生徒会長!

「・・・フレアさん、私はわかってますよ」

 フェイル生徒会長はちゃんと俺のアイコンタクトを理解してくれたらしい。いかにも

「私、頭がいいんですよ」みたいな表情をしている。

「本当ですか?」

「ええ、本当です・・・・」

 少し間をおいて答える。

「今、おなかが空いているのでしょう?」

「だから、違いますってぇぇぇぇぇ!!!」


ぐぅ〜


「あ・・・・」

 音がしてきたのはフレアの方向だ。

「ほら、そうなんですよね?どうです、私はお見通しなんですよ〜♪」

 得意げに俺に片目をつぶってくる。ううむ、今おなかが空いていたから怒っていたのか・・・・やはり、生徒会長というだけあって違うな・・・いずれ、国を治めるほどまでに成長するかもしれん。

「さ、ネリュさんには後で話しておきますのでお菓子をどうぞ?」

「ああ、すいません・・・・」

 おとなしくお菓子をもらって食べ始める。先ほどまでの大騒ぎはどこに行ってしまったのだろうか?フレアは静かになってお菓子を食べている。

「ん〜じゃ、そろそろ寝るかぁ〜」

 俺は立ち上がって体を鳴らす。

「そうですね・・・フレアさん、きちんと歯磨きをしないと虫歯になってしまいますよ?」

「ええ、わかってます」


「じゃ、おやすみ」

「明日も学校ですね〜」

「じゃ、明かり消すぞ〜」


ぱちっ


「・・・・ぐぅ」

「す〜」

 俺も目をつぶって寝ようとして・・・・

「って、違います!」

 隣のフレアが立ち上がった。既にフェイル生徒会長は眠ってしまっているらしい。切り替えが早すぎる・・・・・

「・・・どうした?またトイレについてきて欲しいのか?」

「まだいいですって!いえ、そんなことより・・・零時さんに聞きたいことがあるんですけど?」

 暗がりなのでどんな顔をしているのかわからないが・・・・フレアはどうやら何かを考えているようだった。

「何だ?」

「ええっとですね、今日、学校で友達と零時さんのことについて話し合ったんです」

「何?俺についてのことを何について話し合ったの?」

 他人が俺の何を話し合うんだ?・・・まぁ、過去に一度そんなこともあったなぁ、そういや〜螺子のことについて話し合ってたな・・・・

「ええっとですね、零時さんは自分の力を過信したことがありますか?」

「・・・・は?よくわからんのだが?」

「ええっと、ちょっと待ってくださいね、今まとめてますから・・・」

 そうですね〜と少々唸ってからフレアは続ける。

「・・・・零時さんが魔法の力を使っていて自意識過剰になったことってありますか?」

 声には真剣なものを含ませている。これはまじめに答えたほうがいいのだろうが・・・・

「・・・・う〜ん、どうだろうなぁ〜過信したことはないと思うな・・・・ほら、フレアを助けたときのこと、覚えてるか?」

「勿論です、あれからうねうねするのは苦手になりました・・・」

「あの時、俺は自分の力のことを過信したということはなかったな・・・・逆に助けられるか不安だった」

「え?」

 ぎょっとした表情でこっちを見てくる。

「祈りながら戦ったな。出来るだけフレアにあたらないようにしようとがんばったっていったほうがいいだろうなぁ・・・・会長と戦った時だってそうだった。正直言ってあれはやばいと思ったなぁ・・・・だって、俺まだ魔法使いになって一年にも経たないからな」

「そ、そうなんですか?」

「ああ、まぁ、魔法使いになること自体、事故だったわけだし・・・・・とりあえず、俺は自分の力を過信したことはまだないな・・・・自分の力を信じることが逆に出来ていない、不安な気持ちと共に使っているのが現実だな」

 なんともまぁ、理解しがたい話となってしまったが・・・・・これが今のところの正直な話だろう。

「で、でも・・・・他人が零時さんを頼ったら零時さんは絶対に成し遂げてますよね?」

「う〜ん、正直、どうなんだろうな?まぁ、これまで大事に至ったことはないからそれもじじつなんだろうなぁ?」

「やっぱりそうですよね?私には無理ですよ〜。零時さんみたいに一人で何でも出来ません」

「どうかな、俺だって他人を頼ることなんて多くあるよ?たとえ、どんなに小さいことでも成し遂げることが出来るのなら、フレアだって大きなことを成し遂げることが出来ると思う。今は自分のことで手がいっぱいなんだけどさ、余裕が出来たときに他人を手伝ってあげるのがいいと思う」

 そういって俺はフレアの頭を軽く叩いてやった。

「だからさ、お前が思っているほどに俺はまだまだ、至っていないと思うぜ?俺はどこの誰かもわからない俺を拾ってくれたネリュ姉さんにフレア、友達になってくれたフェイル生徒会長の頼みだったら何が何でも成し遂げて見せたいと思ってる。それに、俺だってフレアを頼っている部分もあるからな」

「そ、そうだったんですか?私・・・気づきませんでしたよ?」

「ま、これからもよろしく頼む・・・ああ、さっきの話、恥ずかしいから話すなよ?」

「わ、わかりました!」

「さて、明日も早いから早く寝ないときついぜ?ああ、明日俺を起こしてくれ、頼りにしてるぜ?」

「は、はいっ!おやすみなさい!」

 そういってフレアは静かに寝息を立て始めたのだった。

「ったく、フェイル生徒会長並に寝るのがはやいな〜」

 俺はそういってフレアの隣に寝転がって目を閉じたのだった。



「ね、どうだった?」

 フレアの近くに友達が集まってくる。それに対してフレアは笑って答えた。

「内緒!教えちゃ駄目だって言われましたから♪」


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