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A:嵐と海と魚と俺と?

十、

 ずっと部屋の中に塞ぎ込むのは非常に良くない。

身体的にも悪いし、精神的にも悪い。たとえ運動神経が鈍かろうが外に出るのが面倒だろうが、人間、一日に十分ほどは外に出て歩くべきだ。そして、思い切り体を動かして体と心にたまっている鬱憤を外にぶちまけてリフレッシュするのがいいことだろう。外の天気なんて関係ない!それが雨でも風でも嵐でも・・・・・・


「零時さん、遊びに行きましょう!」

 外ではものすごい風が吹いて雷が鳴り響いているだろう。

「無理だ。どう考えても嵐に外に出ようとする奴は外に出る前に病院に連絡を入れるべきだろうな」

 俺はそういって教師棒の手入れをしている。

「え〜!遊びに行きましょうよ!」

 麦藁帽子に水着を着ていて虫取り網を持っている。お前はどこに行きたいんだ?

「そうですよ、零時補佐官!」

「フェイル生徒会長、お言葉だが君たちの世界には嵐のときに外に出るような習慣でもあるのですかね?私の世界ではそんな風習はこれっぽっちもありませんでしたが?」

 こちらは水中眼鏡に何故か日焼け止めを塗っている。この世界に日焼け止めがあるのが驚いたのだが、塗るところを間違っている。

「あ、真っ白!」

「そりゃ、そうだろ・・・・」

「いつも部屋に閉じこもってばかりでは体を崩すとおもうぞ、零時?保護者側の私としてもお前たちには充分元気に遊んでもらいたいもんなんだがね〜?」

 ネリュ姉さんもそんなことを言っているのだが・・・

「ネリュ姉さん、そんなことを普通は言うでしょうが、この状況を考えてくださいよ・・・・さっき外に行ってきましたけどすごいことになってましたよ?」

 その光景は惨憺たるものだった。牛は空を

「も〜」といいながら舞い、洪水が起きていたりしていた。俺の目の前を王様らしき人が転げて行ったのが記憶に残っている。

「はぁ・・・・遊びになんて行けませんよ・・・・」

 俺はそういって三人を説得したのだが・・・・

「「「そんなの、零時(さん、補佐官、呼び捨て)がどうにかすればいいじゃない(ですか、でしょう、の)」」」

 という鶴の一声ならぬ、彼女たちの声で決定されたのだった。やれやれ、どうしたもんだろうか?


 目の前に広がるものは単なる海原・・・・

「あいたたた・・・・」

「わーい!海だ!」

「さぁ、泳ぎましょうか!!」

「酒だ酒だ!」

 散々こき使った挙句に彼女たちは俺に礼の一つも述べずに去っていった。何?この不当な扱い?

 この世界にも浮き輪があるなんて意外なのだが・・・とりあえずそれをもってフレアは浮いている。それにビーチボールを投げておぼれさせようとしているフェイル生徒会長。そして、砂浜でグラサンかけて何らかのアルコールを口に含むネリュ姉さん・・・・

「はぁ・・・・疲れた」

 ここまで俺は三人をワープさせた。この前使った魔方陣を使って移動したかったのだがネリュ姉さんが無言で

「あれはこの子たちには秘密だからなぁ〜」というアイコンタクトをしてきたのでご破算となった。

 その結果、俺はひぃひぃいいながら彼女たちをここまでつれてきたのである。おぼれていないかどうかフレアのほうを見るとあいつはこっちのほうを見てきた。

「零時さーん!一緒に泳ぎましょうよ!浮き輪貸してあげますから!」

 残念ながら浮き輪をつけて泳ぐ歳はとっくの昔に卒業している。

「いや、いい・・・・」

「そうですかぁ?」

 俺は次にフェイル生徒会長のほうを見る。

「零時補佐官、一緒に砂山でも作りませんか?」

「・・・・・会長が作ったやつを壊す役をさせてもらうからいい」

 やれやれ、海って奴は罪作りな奴だな・・・・

「お〜い、零時、一緒に酒でも飲まないか?」

「俺、未成年だから駄目ですよ。それに、酒には弱いですからね」

「ああ、欲望のままに襲っちまうのかぁ、なるほどなぁ・・・」

「違います、寝ちまうんです」

 この人たちはそれぞれで海を満喫しているところを見るとつれて着てよかったということなのだろう。

 しかし、俺はちょっと疲れたので休憩させてもらおうと陰ができている木陰に休ませてもらおうことにした。

 ちょっと休んでいるとフレアの声が聞こえてきた。俺はまだ目を開けていないのだが、遠いところから叫んでいるようだ。

「零時さん!」

「どうした?」

「とても大きなお魚さんですよ!」

「へぇ〜どんなのだって・・・・・」

 目を開けてその大きさを確認すると・・・・

「でかすぎじゃねぇか!?」

 フレアの縦五倍、横七倍の大きな魚がいた。あわてて駆け寄る俺。

「逃げろ!フレア!」

 途中、立ち上がったネリュさんが俺に告げる。

「零時、あの魚が今晩のおかずだ!」

「あれ、食えるんですか?」

「コックネリュをなめんじゃないよ!さぁ、買出しだ!」

 その前に漁師さんが必要だ!

「会長、あれをしとめよう!」

 俺は器用に砂の城を作っていた会長のもとへとやってきた。

「・・・・何を言っているんですか?無益な殺生をしてはいけないんですよ?」

「で、でもフレアが・・・・」

「大丈夫でしょう・・・・」

「あ、そっちに攻撃がいったぞ!気をつけろよ!」

 目の前の砂の城がいきなり崩れた。どうやら、ネリュさんの忠告が遅かったようだ。

「・・・・・い、いいでしょう!私の力を貸してあげます!け、決して砂のお城を破壊されて頭に来たのではありません!」

 そのまま立ち上がってすいか割りように持ってきていた棒に魔力を包ませ特攻していく。

「プリンセスキャッスルの敵〜」

「はぁ・・・」

 俺はその後ろを追いかける羽目となったのだった。



 暴れまわる魚の頭のてっぺんでどこから取り出したのか知らないが、銛を魚に刺しているネリュさん。

「うはははははは!大漁じゃぁ!」

「・・・・・」

「くぬ!くぬ!くぬ!くぬぉぉぉぉ!!」

 何かに取り付かれたのか涙を流しながらフェイル生徒会長は木の棒で魚に攻撃を繰り返している。このままでは今晩の晩御飯は魚のたたきに違いないだろうな・・・・

「ていっ!ていっ!」

 フレアはフレアで浮き輪を使って魚の唇を叩いている。

「・・・・効果はあるのだろうか?」


 どうやら、全員で襲い掛かったのが吉と出たのか魚は目をばってん印にして倒れてしまった。

「ふぅ、やっと倒れてくれた………」

「よっしゃ、今日の晩御飯は魚だねぇ〜」

「………敵は討ちましたよ、砂のお城………」

 そういって全員が全員、それぞれの感想を述べているのは結構なのだが俺は黙っていた。

「で、これをどうやってもって帰るんです?」

「ああ、そうだったな」

 今頃思いついたのか、ネリュ姉さんはそういって首をかしげている。

「………考えてなかったんですか?」

「まぁ、零時に頼るしかないなぁ」

「………まだ、ネリュ姉さんって元気ですよね?」

 俺が尋ねると彼女はおなかを押さえだす。

「あいたた〜急に腹が〜せくし〜な水着をきていたから問題があったのか?」

「お、お母さん大丈夫!?」

「だ、大丈夫ですか?」

 俺は人を疑うということを知らないであろう、この二人組みを見た。そして、人を騙して生きるのが人の道だ!と思っているであろう一人の人物を見た。まず、二人の信頼を勝ち取ったために流れる

「にやり!」という表情が俺の頭にはりつく。

「零時さん!お願いです!」

「零時補佐官、頼みますよ〜」

 そして、この二人はおせっかいを焼くのが大好きだ。

「………わかったよ、もっていきゃ、いいんだろ?俺が!」

 そして、俺はここまで騙されている二人を可哀想には思えなかった。おなかが痛いといっていたネリュ姉さんはこっちを見ている二人の後ろでにやにやしながら俺を見ている。俺はこのとき

「この人には勝てない」と思ってしまった。


「ただいまぁ!」

 家に帰りつく。勿論、誰もそこにはいないし、いってくれるであろう人物たちは俺が背負っている魚の上に乗っている。正直、ここまで運んでくるのはしんどかった。

「ただいま〜」

「帰ってきたぞ〜」

「ただいま戻りました」

 魚の上に乗っている人物たちはそういって入ってくる。

「むぅ、家にいるんだから零時さん、きちんとおかえり〜って言ってくださいよ〜」

「………はいはい、お帰り、フレア」

「フレアだけかい?」

「お帰りなさいませ、ネリュ姉さん………」

「私は?」

「………お帰りなさい、フェイル生徒会長………」

 俺はそういって魚をおろすと体を動かした。見た目よりもめちゃくちゃ軽い魚で助かったな………

「さぁ、今から晩御飯だ!役に立たない零時はそこに座ってな!二人は私のサポートだ!」

「「了解っ!!」」

 戦力外通告を言い渡された俺は近くの椅子に座って目を閉じたのだった。


「零時さ〜ん、起きてください」

「ん?ああ、寝ちまったのか………」

 目の前にはとてもおいしそうに焼かれた魚の姿があった。

「さぁ、食べようか?零時、今日は本当によくがんばってくれた」

「あ、どうも………」

 俺はネリュ姉さんにねぎらわれて頭をかくしかなかった。

「見直しましたよ、零時補佐官?」

「………そんなら、今まで俺はなんだったんだ?」

「冗談です、頼りにしている補佐官ですからね」

 フェイル生徒会長はそういって首をすくめる。

「零時さん、いつもありがとうございます!」

「ああ、ありがとな、フレア」

 フレアは非常にニコニコしながらそんなことを言ってくれる………ふぅ、こんなことをいってもらえるなんて思ってもいなかったなぁ〜

「さぁ、食べるか!」

「いただきま〜す!」

「いただきます!」

「………ふぅ、いただきます」

 俺は体をもう一度だけほぐしてから手をつけ始めたのだった。まぁ、あまり手をつけようとは思わないが………

「これ、あげるよ、零時さん!」

「ささ、もっと食べてください!」

「もっと男は食べるもんだよ!」

「はは………どうも」

 皆はニコニコしながら俺に魚を渡してくれるのだが………

 ごめん、俺実は魚が苦手なんだわ…………


いやぁ、第九十部分となりました。あと十回で百回記念ですね〜百回記念ではいつもより結構長い話にしたいと思っています。

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