A:世界が”嘘”を見せる日
え〜前書きでは人物紹介みたいなことを簡単にしていきたいと思います。では、まずは主人公である零時から。 剣山零時:基本的には面倒くさがりな性格であり、機械好き。半年前に魔法を習得して現在は実力高位だけど知識が少ない魔法使いの端くれ。魔法が今まで出会った中で驚いたことなので何があってもとくには動じたりしない。
一、
「・・・・あれ?」
トイレの扉を開けたと思ったらいつの間にか目の前に大きな湖がひろがっていた。いや、もしかしたらあのファミレスではいつの間にかトイレをこのような湖にしたのかもしれない・・・・まぁ、それはないか?いやいや、そういえばこの前店長が言ってたっけなぁ?そのときそこに俺もいたしなぁ・・・・幻覚じゃないし・・・
「おっと、それどころじゃなかった」
既にイエローゾーンからレッドゾーンまで移行しかけていた俺の我慢メーターをグリーンゾーン(安全圏)まで戻す作業をするためにいそいそと湖に歩を進める。
俺はそのまま湖のほとりに立って用を足したのだった。
「・・・ふ〜間に合ってよかった」
そんなことを思いながら後ろを振り返り・・・・
「・・・・」
「・・・・」
黙ったままの俺より頭一つ分ぐらい小さいだろうか?そのぐらいの少女がぎょっとしたような表情でこっちを見ていた。その顔は微妙に赤くなっており、俺と目を合わせるとあわててさらに赤く染まったその顔を隠すようにそむけたのだった。そして、その少女を見た俺のほうも勿論、ぎょっとしている。誰だって用を足していたところを見られればぎょっとするのは当然のことなのである。
それから何分が経過したのだろうか?俺にとっては一日ぐらいたったんじゃないかってぐらい長い長い沈黙があったのだが、実際は一分にも満たないところだったのだろう。
後ろから不意に水がかけられたような感じがしたのだ。
ギシャー!!
「うおっ!」
後ろのほうからそんな声がしたのであわてて少女がいるところまで飛びのく。安全圏だと自分で決めた少女のところまで移動してすばやく後ろを振り返る。広い広い湖の中から姿を現したのは深い青色で金色の目を持つ蛇っぽい生物。辺りに霧が立ち込めてきて正確な身長がわからない。その霧が余計俺に不安を与えてくれていた。
「サ、サーペント!?」
「サーペント?」
隣の少女は目に映る蛇がなんだか知っているようなのだが、俺にはわからない。わかることといえばこの女の子は間違いなくこの生物に恐怖を感じているということだろうか?俺は
「すげぇ!でっけえ蛇だ!」としか感じていなかった。
「と、とりあえず逃げるぞ?」
「う、うん!」
俺は隣にいる見ず知らずの少女にそういった。
普段だったら不審者(この場合俺)の言葉に耳を貸すことなどありえないのだが、今のほうがその状況よりひどいようなのでこの場合は同じ人間の言うことを聞いてくれたようだ。だが、相手(鰓がついてて蛇っぽい生物)は尻尾が器用だったらしい・・・・湖から尻尾を出すと俺のほうが近かったにもかかわらず目の前を走る少女をあっさりと捕まえたのだった。
「きゃ〜」
そのまま少女は湖に浮かぶ形で今にも蛇に食べられそうになっていた。あのサイズならすぐさま飲み込めるに違いない。そういえば蛇って丸呑みしてゆっくりと消化するって生物の先生が言ってたかな?
「・・・・さて、どうしたものだろうか?」
俺としては逃げたい。逃げて生き延びたい・・・というより、何でこんな状況になっているのか知りたいのだが・・・・いや、あの蛇が怒ったのは大体見当がつく。そのこと自体は構わないのだが・・・・なぜに俺はこんなところにいるのだろうかという疑問が先に浮かんでしまうのだ。
ぎしゃー!
もっとも、そんなことを考えている間にも彼女は現在進行形で食べられそうになっており、蛇のほうは彼女を極上の獲物だぁ!と思いながら食べようとしているにちがいない。そして、俺はここにぼさっとつったっているだけか・・・・
「なんともまぁ、なさけねぇ話だなぁ・・・俺の師匠が聞いたらどうなるか・・・」
その場合は張り手の一つ・・・・いや、火の玉ぐらいは飛んできそうである。きっと
「この馬鹿!」とののしってくるに違いない・・・・
「まぁ、そういうわけで・・・」
誰に話しかけるでもなく、しいて言うなら自分自身の不安に話しかけるようにして俺は右腕を上げる。動物をしとめるなら・・・・あれが動物かどうかはわからんが・・・・残酷な話だが首と胴体を切り離せば問題なく倒れてくれるだろう。この前テレビでライオンがシマウマをハンティングしている映像を見たばかりだ。
「陽動作戦が勝手に発動しているようだし・・・・」
勝手に囮役となってくれた女の子に当てては本末転倒のこの一発勝負・・・・俺は全身系を集中して相手ののどを狙う。俺って実はチャンスに弱い人間だったりするのだが・・・今回失敗したら相当やばいことになりそうだ。
「おとなしく逝ってくれ!」
そして俺は右腕を振り下ろしたのだった。
振り落とした右腕の少し前の空間から見事に研ぎ澄まされた刃が蛇の頭と胴体を見事に切り離したのだった。
別のものも切れたような気がしたのだが、女の子には当たっていないようでほっとしている。
尻尾も指令を出していた脳みそがやられたためか、女の子を拘束していた力をあっという間に失い、離れた頭は・・・・なんと、そのまま消滅してしまったのだった。同じようにして胴体も時間差で消えていき・・・・当然、宙に浮いていた彼女は湖に落ちたのだった。まぁ、あの距離から水の中に落ちても大丈夫だろうとは思う。もしかしたらあの蛇みたいな生物が他にもあの中にいるかもしれないという可能性が捨てきれないというわけではないのだが・・・・
「まぁ、その可能性を気がつかなかったことにしよう♪」
後は彼女が岸に来るまで神に祈るばかりである。
沈んでいた彼女はようやく浮かんできたのだが・・・・
「がばっ!ごばっ!」
どうやらおぼれているように見える。もしかして・・・カナヅチ?
「あわわわ!そ、そりゃ無いだろ!」
あわてて衣服(学ラン)を脱ぎ捨ててパンツのみで得体の知れない水に飛び込む。ああ、将来の夢はライフセーバーだと決めておいて人命救助のための何かを知っていればよかったなぁと思いつつ、クロールでおぼれている(既に沈みかけている)女の子の体を掴む。
「ごはっ!」
一瞬、ものすごい力で掴まれて俺も同じようにおぼれそうになったのだが・・・相手のほうが体重が軽く、既に力がはいっていなかったので難を逃れることが出来た。そのまま引っ張るようにして二人して岸からはいでる。神様に祈ったからか、はたまた俺の泳ぎのセンスが良かったからか知らないが、とりあえず人命を救助することが出来た。
「げほ・・・げほ・・・」
隣でむせながらも辛うじて気絶していない女の子の背中をバンバン叩きさすりながら
「さて、これからどうすればいいのだろうか・・・人工呼吸はしなくていいようだ」という考えを頭の中で“第一回 水に濡れた女の子をどうするか?の議会”を開いて意見を募る。結果、濡れた服を乾かしたほうがよい!との結論が脊髄反応で決まった。
「ちょっと待ってろ。すぐにあったかくしてやるからな!」
落ちている一本の大きな木を引っ張ってきてそれに火をつける。女の子を引っ張ってそこに連れて行き、俺も学ランを拾ってきてパンツを乾かすことにした。女の子には学ランを渡して濡れている衣服を乾かしてもらい(勿論、彼女が脱いでいる間俺はパンツ一つで森の木に隠れんぼのオニ役を無言でしていた)それがそろそろ終わりそうになって・・・・
「・・・ありがとう・・・」
「ん?ああ・・・」
初めて聞いた・・・いや、まぁ、さっき逃げようとしたときに
「う、うん!」とつかまったときの
「きゃ〜」という声は聞いたのだが、それ以外の言葉を彼女の口から聞いて俺はなぜだかほっとした。俺的の考えなのだが、きっとあの化け物は俺が湖で用を足したので怒り狂ったので姿を現し、罰として彼女を捕まえたのではないか・・・という結果に至っている。つまり、これは俺のせいなのではないのだろうか?立ちしょんは犯罪だからだろうか?なんともまぁ、法律に詳しい蛇野郎だ・・・・だが、少女を襲ったら間違いなく立ちしょんより重罪確定に違いない・・・・
そう考えていた俺の耳に彼女の声が聞こえてくる。
「今日、“贄の日”だったの忘れてて・・・・」
「・・・“贄の日”?なんだ、それ?」
言葉から大体想像がつくのだが、ほら、あれだ
「物語性を崩さないのが主人公の王道」って奴だから聞いたほうがいいに決まっている。
「昔に残ってた風習で・・・・“午前零時過ぎに森の泉に行くとそこだけ日が変わり、生贄が最後に過ごす一日となる”って話で・・・そのことを忘れてたんです・・・・」
くすんと鳴いているようにも見えるその横顔に別に俺は感想など抱いておらず(実は嘘だ。ちなみに
「ああ、なんだ、俺の小便のせいじゃなかったんだ。よかったよかった」と思っていた)、それより大変なことを思い出した。
「というより、ここどこ?」
「あ、ここは王都ソードシアターってところの近くの森です。あの、あなたは私が召喚した人ですよね?」
「召喚?」
「ええ、あの魔方陣から出てきましたよ?覚えてますよね?」
俺が出てきたと思われる場所を指差す。
なるほど、確かにそこには魔方陣が描かれており、さらに中心には役目を終えたためか壊れているおぼんらしきものがあった。近くには杖らしきものが置かれていてなんともまぁ、魔法使いらしいといえば魔法使いらしいと俺は思った。やっぱり杖か何か持ってないと魔法使いに見えないよなぁ。俺も何かそういうの持とうかな?教師が授業に使う棒なんていいかもしれない。あれってどこで売っているんだろうか?
「・・・・なら、俺を召喚したのはあんたかよ?」
「はい♪以後、お見知りおきを!」
ちなみにそういう台詞は召喚された側が言うのが理にかなっていると思われる。
「なぁ、俺を帰してくれよ・・・いや、還してくれよか?」
「え〜せっかくものすごく強い魔法使いを呼び出したのに・・・」
「か・え・し・て・く・れ!」
もてるほどの眼力を最大限に酷使して俺は相手に懇願した。さすがにびびったらしく、彼女は目を泳がせながら口を何度かパクパクして俺のほうを今度はきちんと見てきた。だが、未だにその目には恐れがあるようで少々やりすぎたかもしれない。
「え、え〜っと、本当のところはその・・・・先ほどあなたが放った魔法の刃のせいであなたを釣り上げた道具が見事に真っ二つにされてですね・・・・湖の奥底に沈んじゃいました。召喚してあなたをきちんと還そうと思っていたんですけど・・・・それがないとこの召喚魔法って成功しないんですよ・・・・」
「にゃ、にゃにぃ〜」
あれ?じゃ、これって自業自得?でも俺、人助けしたよね?ギブアンドテイクでもとの世界に帰してくれてもいいんじゃない?あ、駄目?
「・・・・・」
真っ白に・・・ただひたすら真っ白に染まった俺の代わりか知らないが辺りに漂っていた濃厚の霧がはれていく。
「あ、よ、よかったぁ・・・霧もなくなったからこれで“贄の日”は終了です♪」
ぎこちなく・・・ただひたすらぎこちなく女の子はそんなことを言って俺を元気付けようとしてくれたのがわかったのだが・・・・俺、これからどうしよう?今からでも湖に入って沈んでしまった釣竿らしきものを探してきたほうがいいのかもしれない・・・・いや、そうしないと還れないのだろう。それならば、それならばいくしかあるまい!男はあるとき、決断せねばいかんのだ!(例:限定版を買うか通常版を買うか)
立ち上がって湖に突っ走り始めた俺を後ろからぶつかるようにして女の子が止める。後ろからの一撃に俺はパンツいっちょのままで地面にキス。鼻から流れる血や、体中をすりむいて(パンツをはいていたので最重要部分は無事)出てくる少量の血を痛むまもなく、女の子の声が聞こえてくる。
「だ、駄目ですよ!“贄の日”が終わったので湖には新たな生物が息を潜めています!今そんなことしたらきっとお口を開けてあなたを待ってるに決まってます!」
慌てたようにそんな感じでいってくる。ううむ、確かにそういわれると飛び込んだときに化け物の口が出てきたら俺、避けきる自信が無いんだよなぁ・・・
「ほ、他にも還る方法がありますよ!ああ、家に帰りたくなったなぁ〜って思ったときにはちゃんと私が責任もって還る方法を考えておきます!」
「・・・・本当に大丈夫?」
「勿論です!」
「・・・あんた、両親いる?」
「ええと、お母さんならいますよ!」
「・・・わかった。とりあえず真面目な話、保護者と話すことにしよう。悪いけど家に連れてってくれ・・・」
「はい!」
とても元気よく返事してくれたのでヨカッタヨカッタ。こんな世界にいたらやけになって
「ハンター零時」って自称にしちゃうところだった。
学ランをきちんと着て女の子と一緒に夜明けとなり始めた空を眺めながら森の道を進む。本当にこの道は大丈夫だろうか・・・熊とか出ないよね?いや、状況的にもっとやばそうなのが出てきそうだけどさ。不安を消すためにどうしたらいいかわからなかったのでとりあえず俺は女の子のほうを向いて彼女の名前を尋ねることにした。
さてさて、どうだったでしょうか?面白かったならば幸いです。しかしまぁ、零時も異世界デビュー(?)ですよ。別に何かあるってわけでもありませんけどね・・・今回の話では予定としてはAとBに分けられており、Aでは王道を・・・Bではちょっと変わった話にする予定です。今のところはずっとAを通していきたいと思っていますので、皆様、応援よろしくお願いしますね?何か聞きたいことやよくわからないところがあれば感想、メッセージのどちらでもいいので送ってください。というより、送ってくれるとうれしいのですが・・・・それでは、皆さん、また今度!




