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御注文は?〜1パーセントの魔法使いで!〜

さて、今回から新しく始まる話です。既に魔法使いになっている零時ですが、今回は異世界に旅立つことになりました。

オープニングA

――――――王都ソードシアター郊外の森

「ここなら誰も来ないよね?」

 一人の少女がなにやら釣竿を取り出して呟いている。辺りに人はおらず、代わりにいるものとしたら樹齢百年以上の未知の木だけだろう。

「やっちゃいけないっていわれるとやっぱりやりたくなるもんなんだよ〜・・・」

 顔を上気しながら近くの木に話しかけるちょっと危なそうな少女。その顔はまさに今からいたずらを行う前の子どもの顔をしていた。その瞳は違った世の中を見てみたいということを静かに物語っている。

「・・・・さ、ここからは真剣にやらないと・・・」

 すっと表情を切り替えて大きい瞳を細める。その目に映るものは昨日のうちに彼女が準備しておいた魔方陣のようなものだが、中心には水を張った器がおかれており、夜空に移る星や月を映し出していた。辺りには霧も立ち込めてきて幻想的な景色を作り出していたのだった。



――――――同時刻、ファミレス

 俺の名前は剣山零時つるぎやまれいじ。半年前程に分け合って世間でいう魔法使いとなったのである。まぁ、今はそんなことどうでもいいんだがな・・・・

一人でお冷を飲みながらぼやいていた俺はようやくやってきた親友に視線を送る。

「よっこいせっと・・・もう明日になりかけてるよ・・・」

「おいおい、高校生が深夜にこんなところ来てもいいのかよ?」

「僕は問題ないけど・・・零時は何か家庭教師とのお勉強があったんじゃないの?」

「え、ああ・・・今日はちょっと用事があるらしいから家庭教師(やたらと強気できびし〜)はいねぇんだよ」

「そうかい、それなら計画は順調に進めそうだね・・・」

 俺たちのところへ一人のウェイトレスがやってきた。

「・・・・御注文はお決まりでしょうか?」

 どことなく暗いイメージのウェイトレスだった。

ここのウェイトレスを全部知っているというわけではないが、大半を知っている俺でも知らないような人だった。

まぁ、人がいなかったからそこらへんからつれてきたのかも知れんな・・・それに、この時間帯にはおれたち以外の客としたら奥さんに家から閉め出されたのか知らないが、顔に引っかき傷と殴られた後のあるおじさんとカップルぐらいか?前者はやけ食いしてるし、後者はイチゴパフェ一つでかなり粘っていると思われる。

「じゃ、俺はお冷のお代わりを・・・」

 今月はもう硬貨の中で一番権力を持っている額しか財布に入っていないのだ。何か頼んだらすごいことになる・・・というより、ここが俺のバイト先なので後で色々と減らされるに違いないだろうが・・・・

「ふ、零時・・・そういうものを注文とは言わないね・・・」

 かけている眼鏡をついと押し上げながらポーズを決める。

「なら、何が注文って言うんだ?」

「それはね・・・」

 無口のウェイトレスのほうに向き直って指をぱちんと鳴らした。

「僕は君が焼いたアップルパイが食べたいな♪」

「・・・・ご注文承りました」

 おおっ!そのまま受けるのか・・・・呆然としている俺に親指を突きつけてくる。ううむ、意外と成功するもんだなぁ・・・

「では、注文された品を確認します。“……な水”お一つと“料理が下手なウェイトレスが焼いたアップルパイ”がお一つですね?」

「え、その前者の“……”って部分、声が小さくて聞こえなかったんだけど?」

「いやいや、後者の“料理が下手”って・・・」

「ちなみに、アップルパイのほうは“炭化”と“跡形なし”が選べますがどちらにしますか?」

「「・・・・あの、もう一回オーダーを決めなおしますから待っててください」」

 俺たち二人は再びメニューを眺め始めたのだった。

「俺、オレンジジュース」

「じゃ、僕はコーヒーで・・・」

「かしこまりました」

 今度は注文を聞きなおすことなく去っていったウェイトレスの後姿を眺めながら親友、瑞樹みずきは俺に尋ねてくる。

「・・・・無口の割には面白いウェイトレスだねぇ〜」

「ああ、そうだな・・・瑞樹、俺ちょっとトイレに行ってくるわ」

「まったく、行儀が悪いな・・・」

「む、まだ注文したものが来てないから別に悪いってわけじゃないぞ」

 トイレに向かって俺は歩き出した。


ちりーん


「?」

 なんとなく鈴の音が響いたような気がしたのだが、どうやら新しい客が来たところのようだ。まぁ、そんなことは関係ないのでトイレの扉に手をかけたのだった。


―――――王都ソードシアター郊外の森

「よし!うまくつながった!引っ張るぞ〜!」

 彼女が使った魔法は成功率1パーセントのものだった。


―――――同時刻、ファミレス

「?」

 俺はなんだか違和感を感じながら・・・・いや、尿意を感じながら"扉"を開けたのだった。


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