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一話限りのルートM:平凡な一日

なんとなくですが、雅主体の話を考えていました。ああ、ついでに書いておけばよかったなぁ・・・・

とある日の俺と雅の話

「兄さん、久しぶりの買い物だね?」

「ああ、そうだな・・・まぁ、めったに家族と買い物なんて俺はしないからなぁ・・・」

 今日は珍しく雅と共に近くのデパートへと買い物にやってきた。理由は

「ああ、悪いけどデパートで安売りがあっているから今日の晩御飯の材料を買ってきてね。何でも構わないわ。どうせ、零時が作るんだし・・・」というものである。無論、こういったのは俺たちの母親なわけなのだが・・・

「兄さん、今日は何を作るの?」

「そうだな・・・・面倒だからにんじんの姿煮なんてどうだろうか?」

「まじめに考えてる?」

「冗談、今日の献立は既に決まっている・・・煮込めば出来るおでんでいきたいと思う」

「めちゃくちゃ単純な理由だね・・・」

「それににんじんも入れればあっというまににんじんの姿煮の完成だ!」

 そんな話をしながら俺たちはデパートへとやってきた。

俺たちが向かった先のデパートは近隣の建物の中では大きいほうの部類に入り、ゲームコーナーやなんやら色々と詰め込まれているので学生が多く来ていたりもする。まぁ、普段だったら俺は商店街のほうに向かうのだが、今日は母さんからの言いつけを守るためにデパートを利用しているわけなのだが・・・話が逸れたが、学生が多く来るということは俺の知り合いも着ているというわけであり、その日も久しぶりに高1の頃の友人とであった。

「お、時柱じゃんか?」

「ああ、お前は・・・吉沢じゃないか?」

「違うぞ」

「ええと、吉崎か?」

「ちがう!」

「・・・・吉田!そうだ、吉田だ!」

「違う!いいかげん吉から離れろよ!俺の名前は高田だ!」

「おお、高田か・・・懐かしいな・・・」

「・・・いまさらかよ・・・ところで、そっちのかわいこちゃんはお前の彼女か?」

 まったく、お前はどこに眼球つけて脳みそ備え付けてんだ?

「違ぇよ、俺の妹だ。名前は雅って言うんだ」

「はじめまして」

 雅が挨拶をすると非常におどろいた顔になった。

「へぇ、いいなぁ。お前、妹いたのか・・・その性格、ぜんぜん似てねぇな素直でいい子みたいだし・・・おっと、俺、これから待ち合わせだから・・・じゃ、雅ちゃん、ばいばい・・・」

 去っていった吉田じゃなかった・・・・高田を見送ることもなく、俺たちは歩き出した。

「へへっ、彼女だって♪」

「はぁ、何喜んでんだか・・・」

 食品コーナーへとやってきておでんの中の具を考えていると脇にいた雅の肩を誰かが叩いた。

「やっほ、みっちゃん!」

「なっちゃん!」

 どうやら雅の友達だったようで、俺はそのまま無視して買い物を続ける。

「ねぇ、その人彼氏?」

「ち、違うよ!私の兄さんだよ!」

「ああ、なるほど〜これが自慢の兄さんか〜」

 どうやら俺の話をしているようなので無視するのも限界が来たと思い、顔を上げる。

「どうも、はじめまして・・・雅ちゃんの友達の沢波夏暮さわなみなつくです!名前はなんていうんですか?」

「え、ああ・・・俺は時柱零時って名前だが・・・」

「みっちゃんとは血がつながってないんですよね?」

「そうだけど?」

 そういうとにこりとして笑うなっちゃんさん。何?この元気を大量生産して頭の中に詰め込んでいるようなはちゃめちゃガールは?

「よかったね、みっちゃん!」

「な、何が?」

「このこの!わかってるくせに!」

 雅をつついている彼女はそのようなことを言ってこっちに再び顔を戻してきた。本当に忙しい人だ。

「じゃ、私はこれでいきますね・・・せっかくの兄妹水入らずを邪魔してしまってすいません!それではっ!!」

 こっちが

「さよなら」を言う前に彼女はまるで疾風のように去っていった。

「・・・雅・・・あの子、すごい子だな?」

「そ、そうだね・・・・あはは・・」

「?」

 なにやら挙動不審な行動をとっている我が義妹に最大の疑問を抱きながら・・・・俺は再びいい食品を探し始めたのだった。


 ちょっと息抜きで屋上へと二人で向かうと今では非常に珍しくなった屋上でのヒーローショーがあっていた。

「兄さん!あれ見ていこうよ!」

「・・・はいはい、ところで今回出てくるヒーローをお前、知ってるのか?」

「大丈夫、どんなヒーローが出てきても私は彼らの味方なんだ♪」

 まったくもう、こいつの家族、出てこいといいたいな。あ、家族は俺だ・・・・なんてお約束はいいとして俺も子供たちに混じって席についた。

「あおっ、あおっ、あおっ・・・・この世を青く染めてやるぜぇ!」

 出てきたのは普通のヒーローショーに出てくる戦隊ものの多くでサブリーダーという二番手の地位を多く獲得している人だった。しかし、いっている台詞が悪だ。

『待てーい!』

 まだ悪人?が何も悪さをしていないのにヒーローの現れる声が聞こえてくる。

「なぁ、雅・・・」

「しっ!いいところだから黙ってて!」

 周りの子供たちも今にしては珍しいほど熱狂的な視線でヒーローの登場を待っている。

「組は赤組!」

「好物トマト!」

「血気盛んな!」

「赤き者!」

「我ら五人揃って!」


『本気で赤い(マジアカ)戦隊 アカインジャー!!』


 俺の中では世界が止まったのだが、周りからは

「ひゅ〜!」とか

「さいこ〜!」などという声が聞こえてくる。特にすごかったのが我が妹・・・

「やれー!やっぱ、赤はリーダーだ!」

 俺、めっちゃ恥ずかしいよ・・・穴を掘って自らその中に納まりたい・・・

「何!?何だ、貴様らは?」

 敵であろう、青の人(仮名)は当然のようにいきなり現れた赤い人たちに疑問符を並べる。俺にはどれも真っ赤なのでさっぱりだ。

「月曜日リーダー、クリムゾン!」

「火曜日リーダー、ワインレッド!」

「水曜日リーダー、マゼンタ!」

「木曜日リーダー、スカーレット!」

「金曜日リーダー、フレア!」

 そういってそれぞれがポーズをとる。ああ、全員赤だから日によってメインリーダーが代わるのか・・・じゃなくて、それなら土曜日と日曜日はどうするんだ?今日は日曜だぞ!?誰だよ、リーダーは?

「むむ、ならば今日はお前らのリーダーはいないのか?」

 どうやら青の人(未だ仮名)も同じように不思議に思ったようだ。

「ふふ、それは違う・・・」

 一人が(どれも俺には赤く見えるのでどれがどれだか不明)呟くようにしゃべる。

「土曜と日曜・・・それは全員がリーダーなのだ!」

「むぅ、そうなのか・・・」

 納得した!?

「我らの邪魔をするというのなら、消えてもらうしかないな・・いけ、小さな青い人たちよ!」

 そういってわらわら現れたのは全身青いタイツを着た人たちだった。ああ、いわゆる雑魚ね・・・と思っていたのだが、赤い人たちはコブシを握り締める。

「馬鹿野郎!」

 いきなり一人がそんな声を出す。青の人たちは固まった。

「そんな卑怯なこと・・・お天道様が許しても我らが許さん!勝負するのなら一対一だ!そっちで代表選手を選出しろ!こちらからも一人、選ばさせてもらおう!」

「え、ああ・・」

 そうやって青の人たちはまとまって話し始める。赤い人たちも集まって話を始めた。

「・・ここはリーダーの私が行こう!」

「いや、リーダーであるこの私が行く!」

「奴らの不正を暴き、正義の鉄槌を下すのは私だ!」

「甘いな、お前のコブシよりも私のコブシのほうが熱く煮えたぎっている!」

「今日のリーダーは私だ!」

 今度は仲間割れを始めたらしく、青の人たちはどうやら代表選手を選出していて待っているようだった。しかも、怪人っぽい青の人ではなく、雑魚のほうだった。おいおい、どうなってんだ?

「え〜それでは今から人気投票による代表選出をお願いしたいと思います。では、多数決で・・・」

 赤い人たちがそのようなことを言い出した。子供たちはえらく喜んでいるようで・・・

「じゃ、まずは『赤いコブシは返り血さ・・・』がキャッチコピーのクリムゾン・・・はい、十票。次は・・・・」

 いや、返り血って何!?子供が聞いててそんなのいいの?

「・・・『ほろ酔い気分で戦場へ・・・』がキャッチコピーのワインレッド・・・・十票」

 ほろ酔い?それもう酔っ払いだろ?

 その後も意味不明な(マゼンタ:テレビの色素の一つ・・・ フレア:意味は赤々とした・・・)キャッチコピーで手をあげてもらった結果、すべて十票で同数だった。

「あれ?きちんと皆手をあげましたか?」

 どうやらこれは赤い人たちにも想定外の出来事だったようだ。そこへ、雅が手をあげる。

「いえ、ここに手をあげていない人がいます!」

「ん?君か?」

「いえ、私の兄さんです!」

 そういえば、手をあげてなかった・・・

「む、それならば誰がいい?」

「いや、聞かれてもどれも一緒だし・・・それに、合体技とか見てないので、悪者とか普通は合体技で倒すのが常道じゃないんですか?」

「なるほど・・・・みんな、合体技だ!」

 俺の適当な一言で合体技へと移行した赤い人たち・・・それに見るからに狼狽したのは青い人たちである。

「え、まじ?」

『喰らえ、赤赤赤赤赤まっかっかばず〜か!』

 合体技を喰らった人(代表で選出された雑魚)が飛んでいった。ありゃ、魔法を使ったな・・・いや、やりすぎだろ、完璧に・・・・

「く、なかなかやるな・・・今日は撤退だ!」

 雑魚一人がやられたのにあわててその場から逃げ出す青い人たち・・・

「・・・ありがとう、名前はなんと?」

「時柱雅って言います!」

「君じゃなくて・・・」

「サインください!」

 俺に何かを言おうとしていた赤い人たちは雅の熱烈なお願いに断りきれずにサインを書き出す。そして、それを切り口に

「ずるいぞ〜」

「ぼくも!」とかいって子供たちがヒーローに向かっていったのだった。どうやら悪者には勝てても子供たちには勝てないようで、サインをもらった雅(既に五人分もらっている)をつれて俺はその場から去ったのだった。



「「ただいま〜」」

「おかえり」

 家へと帰ってきた俺たちに何故か、いないはずの母さんが返事をしてくれた。

「あれ?今日はどうしたの?」

「ふふ、たまには兄妹でデートするのもいいかと思ってね・・・」

「なるほど、それなら狙ったようなタイミングでヒーローショーがあるのも頷ける・・・」

 どうやらこの買い物自体が母さんの考えだったようだ。

「ま、今日は疲れているみたいだから私が夕食を作るわ。あんたたちは部屋を片付けてきなさいな」



 風呂から上がって部屋にいると雅がやってきた。

「兄さん、今日は楽しかったよ!」

「ああ、そうだな・・・まぁ、たまには騒がしいのもいいもんだなぁ・・・」

「今度もまた、ヒーローショーを一緒に見に行こうね♪」

「・・・・・ま、まぁ、たまにならな・・・」

 雅は笑って俺の部屋を出て行ったのだった。


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