零時・ア・カズキン
さて、今回からちょっとの間だけ話は番外編的なものになっていく予定です。今回のお題は「赤頭巾」。話あんまりしりませんが、そこは無理やり進めていきたいと思います!
赤頭巾
昔々、あるところに赤頭巾がいました。
「あ〜おいおい、俺が赤頭巾か?何?名前設定は『零時・ア・カズキン』?そりゃ、怪しい外国人かなんかじゃないのか?」
赤頭巾は今日、おばあちゃんのお家に行くことになっていました。病院から退院したお祝いということになっているのです。
「零時様、今日はおばあちゃんにこれをもっていってもらえます?」
「あ〜メルナがお母さん役か・・それなら、ばあちゃんはさしずめ、ソルってところか?ちなみに何を・・・オイル!?オイルと電池!?しかも充電できる新型だよ・・・それと充電器・・あ、きちんとワインもあるが・・・十本?どうやって持っていくんだ?」
中にはワインとおばあちゃんが大好きなチェリーパイが入っていました。
「お〜い、はいっているのは鉄板だけだぞ、メルナ?」
「え、あ〜現地調達でお願いしますね?」
「現地調達!?悪いが俺はチェリーパイなんて作ったこと無いぞ?」
「ほら、そこはもうノリでなんとか・・・」
「そうだな、チェリーをのっけて焼けばそれがすべてチェリーパイだ。失敗したってこげたってモザイク掛けられてもそれはチェリーパイ以外の何者でもないからな」
赤頭巾は元気に自分の家を出たのでした。
「気をつけていくのよ〜」
「おいおい、リヤカーでいくのかよ・・・何時間かかるんだ?」
森には危険がいっぱいあると、赤頭巾は幼いながらもとても利口でいい子でした。
「へぇ、へぇ・・・既に疲れたんだが?リヤカーで押していくのは利口な考えなのだろうか?そこのところ、ナレーターさんに漠然とした不安を抱くぞ?まぁ、こんな否定的な態度とってたら物語をまじめに進行させないんだろうがよ・・」
ちなみに、利口といってもずるがしこいほうで、幼い頃から博打に火遊び、責任を問われても他人にその責任を擦り付けられていました。そして、そのはめられて怒られる他人を見てにやりと笑うその姿を『返り血を浴びた獣』に例えられて『赤頭巾』という名前で通るようになったのでした。
「おいおい、めっちゃ機嫌損ねてるな・・・もう、俺の知ってる赤頭巾ちゃんじゃねぇよ。それ、ただの悪い少女じゃん?大体俺、男だし・・・」
さて、暗い森の中を歩いていく赤頭巾の右斜め四十五度、地上から百七十センチほど離れたところに二つの眼を持つ銀色に輝く毛を持った素っ裸の狼さんが現れました。それはもう、もじゃもじゃですごいのです!
「おおい!そんなに詳しく言わんで言いし、狼さんが服着てたら逆に文明人だと思っちまうよ!それにもじゃもじゃなのは当然だろ?毛を全部そられた狼出てきても別にこわくねぇよ!」
「やぁ〜そられて出てきても構わなかったんだがね♪」
「やっぱ、狼は瑞樹だったか・・・」
「そってくれるのなら女の子がいいなぁ♪そのとき僕はオオカミになりましょう♪」
「いや、そんなことを言わんでいいから・・・もうちょい、まじめにやってくれよ・・・大体、ここで狼さんは出らんだろ?」
「あ、そうだった・・・ごめん、間違えた」
狼さんは赤頭巾ちゃんをみておいしそうに見えたのでずるがしこいことを考えた狼さんは彼女が目指すおばあちゃんの家に先回りすることにしました。
「いや、正直言ってあの赤頭巾ちゃんはおいしくないどころか、どぶに捨てたほうがいいと思うね・・・・おっと、おばあちゃんはやっぱりソルちゃんか・・・」
「む、私が赤頭巾になって皆のものから称えられるヒーローになりたかった・・・・」
「いや、赤頭巾ちゃんを目指したかったの?別にあの子は食べられるだけだし・・・通りすがりのおっさんが倒したんじゃなかったんだっけ?」
狼さんは見事におばあちゃんを腹の中に納めると自らがベッドの中に忍び込んで赤頭巾ちゃんがやってくるのを待ちました。
「ほら、早くしないと零時がきちゃうよ!」
「おいおい、俺もうついちまったぞ?どうすんだよ?」
「しょうがない、ソルちゃんは脇にどいてて。食べられたことにするから・・・」
「あれ?おばあちゃんって確か一番出番少ないな・・・私の出番はもう無いかも・・・」
赤頭巾はベッドに寝ているおばあちゃんに近づいて尋ねました。
「あり?なんて尋ねるんだったっけ?」
「あ〜そりゃ、あれだよ・・・確か、『何でそんなに耳がとんがっているの?』っていうんじゃなかったっけ?」
「まぁ、それでいいや。それでいこう!おばあちゃん、なんでそんなに耳がとんがっているの?」
「・・・それはね、獣耳をつけているからだよ・・・これをつけることによって十人に最低一人は萌えるからだよ・・・・」
「おいおい、そんな理由かよ・・・いまさら年増のばあさんに萌えてどうすんだよ・・・・」
「む!私がその獣耳とやらをつけたら絶対に零時に鼻血を出させてやろう!」
「ソル、お前は食われたことになってんだからな?」
おばあちゃんとなった狼さんはもっとこっちに来るように言いました。その低くてしゃがれた声を聞いた赤頭巾はびっくりしたので尋ねました。
「・・・・まぁ、おばあちゃん!何でそんなに低くてしゃがれた声なの!?」
「そんなに低いかい?僕としては零時より声高いし、女性が歌っているアニソンだってカラオケいって素で結構いい点取れるよ?」
「話しすすまねぇよ!そういうことにしといてくれよ!」
「わかったよ、これはねぇ・・・・赤頭巾に恐怖を与える・・・冗談、冗談だからそのワインボトルを上にかかげないでくれ!ええと、この声は・・・・風邪をひいているからだよ?」
さらに近づいた赤頭巾は布団のしたから突き出ている大きな口を見て驚き、おばあちゃんに尋ねました。
「お、おばあちゃん!何でそんなに口が大きいの!?」
「それはね、ええと・・・・実はおばあちゃんはワニさんだったんだ。あ、口が大きい理由だったね・・・あ、狼だった・・・まぁ、いいや。それはね、お前を頭から飲み込むためさ♪一口でがぶりといくぜぇ♪」
「なんだかすげぇ、陽気な狼だな・・・」
赤頭巾ちゃんが目を見開いたときに広がったのは狼さんの大きな口で、彼女は丸呑みにされたのでした。
「いや、正直無理だからね」
「わかってるって、俺はお前に食われたってことにしといてくれ・・・・ところでお前、さっき口あけたときに虫歯があったぞ?」
「え?まじ?今度歯科医にいってこようかな・・・」
狼さんは眠くなってそのまま眠ってしまいました。
「さて、グッドナイト・・・おなかかいっぱいだ・・・」
「可愛そうに・・・何も食べてないのに食べただなんてな・・・とうとう瑞樹もおかしくなったか・・・」
「そうだな、可愛そうに・・・」
「そこ、まじめに僕がやろうとしているんだから邪魔しないでよ!」
場所は変わって、赤頭巾の家・・・あまりにも帰りが遅い赤頭巾にお母さんは心配していました。
「零時様ったら・・・こほん、違った、赤頭巾ったら・・・また朝帰りかしら?」
「いや、そういう赤頭巾もいないと思うけどね・・・・メルナさん、あまりにも兄さんの帰りが遅いので見に行きましょう!」
赤頭巾の家には知り合いの漁師がきていたので一緒に様子を見に行くことにしました。
「惜しい!漢字が違う!本当は猟師!網で狼捕らえて大漁っていうの?」
「雅さん、そんなこと言ったらまたナレーターさんが暴走しますよ・・・・」
漁師とお母さんはおばあさんの家へと向かいました。
「どうやらこのまま通すみたいだね?」
「そうみたいですね・・・大丈夫なんでしょうか?」
そして、おばあちゃんの家のベッドで寝ている狼さんを見つけたのでした。
「ありゃ?寝てないし、兄さんたち枕投げしてるよ・・・」
「まったく、めちゃくちゃにする気ですか?」
「いや、既にめちゃくちゃだよ・・・」
漁師は寝ている狼を網で捕らえました。
「あ、メルナに雅・・・おい、狼・・・さっさと寝ろよ?」
「そっちがやろうって言ってたくせに・・・」
「ところで・・・なんで漁師なんだ?猟師だろ?」
「いいんだよ・・・・さ、狼を捕まえたぞ!大漁じゃぁ!」
「・・・これでいいのだろうか?」
捕らえられた狼は外につるされました。
「さて、腹を裂くか・・・」
「裂いても飲み込んだはずの二人はそこにいるけどね・・・」
「まず、飲み込めてないから・・・」
飲み込まれた二人は無事に出てくることが出来ました。めでたしめでたし♪
「あ、そうか・・・別に赤頭巾ちゃんの話じゃ誰からも称えられないのか・・・」
「今頃知ったのか、ソル・・・・」
「本当にもう、ぐだぐだだね・・・・」




