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ルートR LAST 遊園地の観覧車は二人の空間

ルートR最終話です。これで、すべてのルートシリーズが終わってしまいました・・・次回からどのようになるかはあとがきのほうにかいておきます。

五、

 空というものについて、考えたことはないだろうか?俺はある。

それは小学校低学年ほどのことであり、そのとき、俺は鳥になることを夢見ていた。

そう、それは大空に羽ばたきたいという願望を持った一人の男の子の物語だった。そして、それを実行するために家の二階から飛び降りて・・・・骨折して入院したのだ。それ以後、俺は世の中には出来ないことがあるということを知った。さらに、おまけとしてはまことに信じがたいことに・・・高いところが苦手になってしまった。

「やだ!絶対にあんなのに乗ったら死ぬ!落ちる!堕ちる!墜ちる!」

「大丈夫ですって!そうそうすぐに堕ちるもんじゃありませんよ!零時様!」

 俺は今、メルナと一緒に二人で遊園地に来ている。そして、午前中は二人でまったりとした雰囲気の中、色々な乗り物に乗ってメルナ特製のお弁当を一膳の箸で食べさせてもらい、午後になると・・・・俺専用の地獄が待っていた。

 ジェットコースターに乗ろうとメルナが言い出したため、俺は実力で近くのベンチにしがみついているのである。

「あれ、怖いって!落ちるような雰囲気味わうもん!死ぬ!」

 しかし、悲しいかな・・・・機械のメルナには勝てそうにもなく、あっという間に引き剥がされてしまった。

「さ、行きましょう♪」

「・・・・・」

 青い顔のまま、俺はメルナに引きずられながら心の中で極楽浄土の片道切符を買うために並ぶことにしたのだった。




ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!




「どうです?意外と楽しかったでしょう?」

 そうやって尋ねてくるメルナの表情はとてもうれしそうだ。青空によく映えて可愛いものだなぁ・・・・そういう俺も

「・・・・メルナ、俺の顔がどんな色しているかわかるか?」

「・・・真っ青です。そんなに怖かったんですか?」

 今の俺なら太陽輝くこの青空と対等の関係を保つことが出来そうだ。

「・・・あ〜小学校の頃に聞いた怪談話であったような感じになっちまった・・・メルナ、次は絶叫系はやめよう?次乗ったら俺間違いなく体中の血が青色になっちまう・・・」

「そうですねぇ〜それなら、零時様・・・観覧車ならば大丈夫でしょう?」

「いや、根本的に俺は高いところがだめだって言っているんだけどね♪」

「それなら、善は急げですね!」

 この子は人の話を聞いているのだろうか・・・・そう思いながら、俺は再びメルナに連れて行かれたのだった。


 観覧車の中、当然、俺とメルナだけとなってしまう。俺はだんだんと上にあがっていく観覧車の中で小さな子供のように縮こまって震えていた。

「・・・・零時さん、今日の朝のニュース見ました?」

「・・・いや、見てないけど・・・それがどうかしたのか?」

「実はですね、この遊園地の観覧車が整備不良だって内部告発があったそうなんですよ?今日でここ、その疑惑を否定するために閉まるそうです」

 彼女は話題づくりのためにそんなことを言ったのだろうが・・・

「・・・メルナ、ここ、これ、堕ちないよな?」

「ええ、堕ちないと思いますよ?」

「・・・さらに不安になってきた。ああ、俺の日ごろの行いが悪いのですか?神様、俺が何か悪いことをしましたか?」

 夜空を見上げてそんなことを呟きながら俺はメルナと向かい合って座っていたのだが、不安で不安でその場に立ち上がってうろうろし始めた。その所為かどうか知らないが、急に観覧車が揺れ始める。俺はあわてて先ほどの席に座って固まった。

「・・・なんかゆれてないか?風が出てきてるみたいなんだが・・・」

「そういえば、お昼から暴風警報が出てませんでした?」

「・・・あ、そうだったな・・・・」

「・・・・最悪ですね」

 メルナは移動して俺のほうにやってきた。そして、俺の手を握る。

「・・・へへっ、これで安心しましたか?」

「あ、ああ・・・」

と俺がいったところで俺たちのほうを下にして、観覧車のゴンドラが思い切り傾く。

「・・メルナ、今から戻れるか?」

「・・・はい、戻ります。どうしたんでしょう?」

 メルナが這うようにして先ほどまで自分が座っていた場所に座ると、ゴンドラは安定したのかどうかよくわからんが・・・再び、重量が均一にされたのだろう・・・・傾くことなく、普通になった。

「なぁ、今から地上まで何分かかると思う?」

「ええと、あと・・・・五分ぐらいでしょうか?」

 五分か・・・・普段はあっという間に過ぎ去る時間だと思うのだが、今日は格段に長く感じられるな・・・

「メルナ、死ぬ前にお前に伝えたいことがある・・・・」

「まだ死ぬとは決まってませんよ!望みを捨てないでください!零時様らしくもありませんよ!」

「・・・そうだな、俺らしくない・・・って、俺は魔法使いだった!こんなことぐらい、空とびゃ、一発じゃんか?」

 何が一発なのかわからんが、とりあえず今から外に出れば・・・・

「あ〜零時様?」

「どうした?」

 メルナは窓から飛び出ようとしている俺を制して再び座るように促す。

「・・・・あのですね、もうちょっと一緒に座ってませんか?」

「おいおい、このままいたら間違いなく一緒にべちゃってなるぜ?まるで上空に放り投げたトマトよりも悲惨な結果になることは目に見えてわかってると思うんだが?」

 物好きもいいところだと思いながらも、俺は席に座る。

「ありがとうございます♪」

「いいよ、それよりなんか話でもするか?」

 別に今じゃなくても話せる時間はたくさんあるのだが、しんみりとした空気がそこには漂っていた。


「・・・零時様、私といて楽しいですか?」

 そろそろ地上が迫ってきているってところでメルナはそんなことを尋ねてくる。

「あ?何言ってんだよ・・・・そりゃ、楽しいぞ?」

「そうですか・・・私も楽しいです。ですが、それ以前に私は零時様が楽しんでおられるかどうかのほうが大切なんです。あなたが楽しいと思えば私も楽しい。逆にあなたが楽しくないと思っておられないのなら私は楽しくない・・・ここ最近、私はその事ばかりを考えていて仕事にミスしても気がつかない日もありました。これは私としては非常にいけないことだと自覚しています」

「・・・・そうか、まぁ、そこまで思ってくれてるのなら俺はうれしいぞ?」

「ええ、私もそのように零時様が思ってくれているのなら、いいんです・・・・あの、零時様、零時様は・・・・いえ、何でもありません。もう、地上ですからね・・・・」

 ゴンドラは無事に地上へと向かっていく。俺はメルナのほうを見ながら彼女に質問する。

「・・・メルナ、俺は何だっけ?」

「・・・・魔法使い・・・ですか?」

「そうだ、だが、それだけじゃないんだ・・・俺はなぁ・・・」

 俺は右手を掲げ、それを振り下ろす。

「・・・・お前の恋人だ!」

 俺たちが乗っていたゴンドラは頂上まで戻っていった。気がついてみれば、他の乗客なんていやしない。皆この観覧車が危険であると早々に判断していたようだ。

「ほら、これでまだまだ地上にはたどり着かんぞ?メルナ、お前の言いたいことを言ったら俺はゴンドラから降りることにする」

 そういうとメルナは目をぱちくりしたのだが不意に優しい顔になった。

「・・・零時様・・・・私は・・・私は・・・・」

 彼女は目に涙をため、俺に飛びついてきた。

「のわっ!!」

「私も、私もあなたのことが大好きです!」




 俺は言わなかっただろうか?彼女と俺の体重が均等になっているのか知らないが、それのおかげでうまくゴンドラが傾かないようになっていたということを・・・




「メルナ、俺たち新聞に載ってるぜ?」

「そのようですね・・・・」

 俺は今、病院のベッドの上にいる。メルナも隣でどこか、壊れたところがないかメンテナンスを受けていた。

「まったくよう、もうちょっと早めに魔法を使っとけばよかった」

「すみません、私の所為で零時様に怪我をさせてしまって・・・」

「気にするな、メルナのおかげで俺は遊園地をつぶせるほどの力を所持していたことがわかったからなぁ・・・」

 遊園地は見事に閉鎖。まぁ、俺がつぶしたわけでもないんだがなぁ・・・

「メルナ、今度は他の遊園地にデートに行くか?」

「はいっ!そうですね!」

「今度、観覧車が壊れたら俺を支えてくれよ?」

「勿論です!」

 俺は隣にやってきたメルナの微笑みかけてそれに答えるようにメルナは笑ってくれた。


俺たちは支えあうしかないな・・・・と俺は思いながらも

「いや、やっぱり二度と観覧車には乗らないようにするか?」と思ったのだった。

〜END〜


本当にルートシリーズ終わりましたねぇ〜思えば更新スピードがめちゃめちゃでおかしいところもありながらも、なんとかここまでやってこれたと思っています。これもひとしおに読者の皆さんのおかげですね・・・・じゃ、次からは本編なんかとはまったく関係のない話しをしていきたいと思っています。それまでに何か皆様からご要望などがありましたそれをテーマにして書きたいと思います。ちなみに、予定では短編のキャラを少し使ってまた物語を作って終わりにしようかと思っています。それでは皆さん、ルートシリーズご愛読ありがとうございました!第一部よりもおもしろかったなどという感想を抱いている方はご感想よろしくお願いします!

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