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ルートRその四、俺は零時、奴はゼロ

ルートR第四話です。ちなみに、ルートRの物語自体はこれでほとんど終了です。

四、

「・・・・零時様、下がってください」

「おいおい、こんな街中でぶっぱなすのかよ?周りの人のことも考えろよ!」

 そういったのは俺ではないのだが、メルナは動きを止めて銃をおろす。あたりの人たちは

「魔獣が暴れだしたぞ!」

「警察を呼べ!」

と口々に言っている。

 メルナの動きを物理的にではなく、心情で止めた相手は俺に手招きをした。

「わりぃが、ここじゃ他の人に迷惑がかかる!ほら、早くこっちに来い!このままじゃ、お前もお前さんのあの大切にしている奴も捕まっちまうぞ!」

「わかった!」

 その声に聞き覚えがあった気がする俺は言われたとおりに走り出す。

「零時様!」

 メルナも当然俺を追いかけてくる。

「なぜ、こんなことになったんだ?」

 首をかしげる俺にローザと共に先陣を切って走り続ける男は首をすくめたのだった。

「さぁね?俺はなにも悪いことをしてないんだけどなぁ・・・」

 話は数時間前にさかのぼる。


「零時様、今日はとてもいいお天気ですよ?これはもう散歩をするしかありません!」

 拳を握り締めてそう力説するメルナに俺は手を振って答える。

「いいって、久しぶりにこうやって家でごろごろできるんだから・・・・それに、これからまた勉強しないといけないだろ?俺、忘れられてるけど受験生だよ?一応大学行きたいとおもってんだからさぁ・・・呼び方だってマスターから零時様になってるし・・・」

「いいじゃないですか!呼び方なんて・・・私たちの仲ですし!零時様はこのところずっと引きこもっていたはずですので、そろそろ天日干ししなくては腐ってしまいます!現に、私のレーダーによりますとあと数時間家の中に閉じこもっていれば体内に謎のきのこが発生するようです。既に、そのきのこの胞子が引っ付いている模様です」

「何だよ、それは?というより、それってでっち上げだろ?捏造なんだろ?」

 俺がそういって再びごろりと横になると今日のメルナはさらに食いついてきた。

「・・・・私が嘘を言うような機械でしたか?」

「・・・・いや、そういう子じゃないな・・・・」

「・・・この前の問題の回答も間違っていなかったはずですけど?」

「・・・そうだな、あれは先生に見せたら完璧だって言われたし・・・」

「それで、これが最近発見された新種のきのこなのですが・・・・

「さぁ、散歩に行こうか?人間、家の中にいたらなんだか大変なことになってしまう気がするからな・・・・」

 俺はメルナを引き連れて散歩に出たのだ。そう、そこまでは間違いではなかったのだが・・・街中でローザをメルナが発見したのが間違いだったのだ。そして、いつものように暴れ始め・・・・そこへ、黒いフードを被った一人の男が現れた。俺より数センチほど身長が高かった。

「お、ローザ・・・それがルナか?」

「あ〜マスタ〜!出てきちゃ駄目って言ったじゃないですか!」

「はぁ?何言ってんだ?出るもの出したらさっさと出ないと、ここは俺たちの家じゃないんだぞ?さっきだっておっさんが俺が出たらすぐにトイレに向かってったぞ?俺が出てなかったらあのおじさんは間違いなく大人として間違いを起こすところだったんだ!」

 そうやって俺のほうから顔が見えない立ち居地で彼は勝手にしゃべっていた。そして、メルナはローザのマスターを見つけるとそちらのほうに攻撃に入ったのだ・・・・


とまぁ、そうやって今に至っている。

「まぁ、ここまで来ればいいだろう」

 男は立ち止まって俺たち二人を見る。

「まぁ、俺も数年前はこんなもんだったのかなぁ?」

「記録にあるマスターの身長よりも数センチ、高いようです。あちらのほうがマスターよりもよい食事をしていたのでしょう」

「うるせぇよ。一時期はほら、ダイエットって奴にはまってたんだ。雑草ダイエットだったか?あれだよあれ」

「いいわけですね。一時期はダイエットではなくて仕事に困っていたと思いますよ?」

「・・・・とりあえず、こんなことしてたら意味がねぇ・・・・」

 男はそういって黒いフードを剥ぎ取った。

「・・・・!」

「ほら、マスター・・・二人とも驚いてますよ?今更そんな面、相手も見飽きてるんじゃないんですか?」

 見飽きてるも何も、その顔は・・・

「れ、零時様・・・零時様には・・・」

「な、何だ?」

「双子の兄がいたのですか?」

「さぁな?それなら今、初めて知ったぜ?」

 俺たちの目の前には不適に唇をゆがめている俺の姿があった。

「あ〜こっから面倒だから俺のことはゼロって呼んでくれ。そっちのほうがわかるだろ?」

「あ、ああ・・・」

 男はそういってにかりと笑う。

「こらこら、約束どおりたとえモノローグといえど、きちんとゼロって呼ばないと駄目だぞ?俺だって本名名乗りたいんだけどさぁ、ほら、これはお前の物語ってことで・・・・わかった?」

 ゼロは再び笑ってそういった。

「そうそう、それでいいの」

「・・・・マスター、それより零時さんに話したいことがあったんじゃないんですか?」

 こほんとせきをしてローザがそんなことを言う。それについて思い出したのか彼は手をぽんとうって俺のほうを見る。

「そうだった!零時、悪いがお前の近くに・・・・家とかないか?」

「家?」

 俺は首を傾げるしかなかった。

「話しても信じてくれるかどうかわからんが、俺はこの世界の人間じゃないんだ。まぁ、ローザに至っては知っての通り、人間でもないんだが・・・この世界に住んでてわかったんだが、この世界では魔法は受け入れられているわけだし・・・・その、なんだ、俺たちはこの世界を別に嫌ってはいないんだが別れの挨拶をし忘れた連中が結構いるんだ。だからさ、色々やって元の世界に戻ろうとがんばったんだが・・・・ちょっとだけ時間が足りなかったみたいなんだよ。その間、俺たちはこっちで住んでた場所を追われちまってよぉ、代わりに場所を探してるわけだ。どうだ?こっちの世界じゃ、俺らは戸籍なんてないもんだから苦労するの何の・・・」

 そういってやれやれこまったねと呟くゼロ。

「でも、この前ローザが言ってたことは・・・?」

「ああ?あれ?あれはまぁ、あってるんだけど、とりあえずエネルギーを溜めるって目的だったんだ。そこにいる・・・・ルナだったかな?それに暴れてもらってローザの持ってるエネルギー吸収装置を元に戻るために必要な機械に与えてたぐらいだな。このまえ屋上でも俺たちあったでしょ?いやぁ、あの後ものすごくローザにしかられたんだよねぇ」

 やれやれ・・・・さて、これからどうしようか?

「メルナ、どうしようか?」

「・・・・・零時様に敵対するものはすべて敵です」

「いや、そりゃまぁ・・・・俺に敵対するものはすべて文字通り敵だろうよ?メルナ、何を言って・・」

 その言葉をさえぎってメルナは続ける。

「・・・ですが、例外として零時様が敵対する相手でも手を貸すというのなら私はそれに従います。背負うべき主君の友達が増えただけです」

 そういっていつの間にか構えていた銃をおろす。

「よかったなぁ、ローザ。これで平和に話が進みそうだぞ?」

「そうですね、これで一安心ですよ♪」

 そういって笑っているのだが・・・・・

「まことに申し訳ないんだが、俺が知ってる物件なんて・・・ないぞ?」

 そう伝えると彼らはあからさまに落胆したような表情になった。

「マスター、これで私たちはまた根無し草ですね?」

「なぁに、またガムテープとダンボールで家を立て直せばいいさ・・・・・この前の突風で家が壊されたがな・・・」

 そういって二人して肩を落としている。

「色々と迷惑掛けたな・・・・あの爺さんに『ごめんなさい』って伝えておいてくれ」

「待ってください!」

 去ろうとした二人を止める。

「・・・・私の家に来て構いません」

「メルナ?そんなことしたらソルだって黙ってないんじゃ・・・?」

「構いません!私は零時様そばに一生仕えますから!」

「ひゅ〜零時の彼女はすごいねぇ〜」

「マスター、あれが“らぶらぶ”って奴ですね?」

 いつの間にかうれしそうな顔でこっちを見てきている二人組・・・

「住所どこ?後は俺らが何とかするからさ・・・・」

 ゼロとローザはメルナから住所を聞き出すとあっさりと消え去ったのだった。

「メルナ・・・・」

「はは、勝手に私は何を言ってるんでしょうね?」

 そういってその場に崩れ落ちるメルナ。彼女は涙を流していた・・・・

「所詮は主人の言うことを聞くための機械なのに、何を勝手なことを・・・」

「既に涙を流してる時点で機械じゃないと思うけどな・・・さ、さっさとたって帰るぞ。散歩ももういいだろう?充分歩いたし、走ったりもしたからな・・・」

 メルナをたたせて二人して歩き始める。

「・・・・私、駄目ですね?時雨様を背負ってすべてをこなさないといけないのに先走っていつも零時様に背負われています」

「あ〜俺はメルナなんて背負ってねぇよ。メルナ、お前も見たろ?さっきの二人。あの人たちは支えあってる。背負って背負われてをずっと経験してきた仲じゃないのか?」

 黙りこんでしまったメルナを見ることなく、俺は一方的に続ける。

「一生一緒にいてくれるんだろ?そんなら、支えあって生きていける・・・あの二人のように俺たちもなれないかな?」

 俺は前だけを見ていた。

「・・・は、はい・・・・ですが、私は機械です。機械は人じゃありません・・・・これから先、私のようなものを背負っていっても思いだけかもしれません。私は私を制御できないことだってあるかもしれません・・」

「いや、メルナならできるさ・・・お前、前に言ってたろ?『ゼロを倒すようにプログラムされてる』ってさ?だけど、今回は見事に制御できてたじゃねぇか?」

「それは・・・零時様がいてくれたからです」

「そうだろ?だから俺がずっとお前の隣にいればお前は自分を制御できるのなら・・・俺はずっとお前の隣にいてやろうじゃねぇか?ま、今日は俺がお前を支えてやってる立場だけど・・・」

 あ〜あ、こんなのは照れくさくていけねぇや。

「・・・今度は俺を支えてくれよ?」

「・・・・はいっ!!」

 俺はしがみついてきているメルナを引きずるようにして家に帰ったのだった。


さて、どうだったでしょうか?もはやゲストと化している以前の零時・・・まぁ、彼の物語ではないですからね。今回はこの御注文は?が何故、途中で主人公交代などがあるのか・・・いや、何故、話自体が変わっているのか伝えておきたいと思います。これは別に作者の思い付きではなく、もとから決まっていたことなのです。そうした理由は、最後に持ってくる話に繋ぎたいとおもっているからです。さて、次回でこのルートRも終了してしまいますが、嘆かないでくださいね?いや、嘆く人なんていないと思いますが・・・・とりあえず、第三部は短編の零時を主人公にしたいと今のところ思っています。それでは、皆さんまた今度!

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