多分、平和な日常の最後の日
次回から、それぞれの話に行くことにしている予定です。ものすごい量になるような気がしますが、のほほーんとがんばっていきたいと思います。
七、
春の陽気に誘われて、俺はお昼休みを・・・・小テストのやり直しで過ごしていたのであった。とても、有意義にお昼休みを使っているのは認めるが、なんとなく・・・・悲しい気がする。廊下からは高校三年生にもなってプロレスごっこらしきものをしている暇そうな連中の嬉々とした声が聞こえてくる。そのたびに、俺の心を台風が通過していく。
「・・・・やってられるかぁ!!」
「ダメよ、それをするまでゼロ君にはお昼休みはなし。いや、休みなし!」
どこから現れたのか知らないが、俺の後ろに八重先生が腕を組んで立っていた。
「・・・先生、弁当の時間ぐらい、もらえないでしょうか?俺、新部活発足の書類を書かないといけないんですけど・・・今日中に出すって生徒会長に・・・」
どうにかして昼休みをまったりと過ごしたいと思っていた俺だったのだが・・・八重先生は首を縦には振ってくれず、俺がかわりにがっくりと首を縦に振ったのであった。
「ゼロ君、ゼロ君は今年受験なんだよ?受験生がよく意味のわからない部活を勝手に発足した挙句にそこで遊んじゃダメでしょ?有望な転校生を勝手に入部させちゃったって他の部長さんが嘆いていたわよ。生徒会長さんだってゼロ君についての処罰書をどれだけかかされたことか・・・私だってゼロ君が毎日夢に出てきて眠れない毎日を送ってるのよ。本人がお昼休みぐらい勉強したって罰は当たらないわ。いや、苦しみなさい!」
そういってその場に泣き崩れる先生・・・・俺、そこまで問題児だったのだろうか?別に何か騒ぎを起こしたり、暴力沙汰になって停学にだってなってないぞ?
「あの〜先生、俺がわるかったのならあやまりますから・・・その、顔をあげてください。真面目に昼休みの間は勉強しますから・・・はぁ、やれやれ・・。」
そういうと先生はぱっと顔をあげて俺の両手を掴む。その力が異常に強くて痛い
「・・・わかってくれて、先生嬉しい!」
「・・・先生、顔が近いです。あと、手がめちゃくちゃ痛いんですけど?」
「照れちゃって・・・可愛い!」
「・・・・。」
思い込みが激しい人だったなんてな・・・困ったもんだ。しかし、困ったところに意外な人物が俺を助けにやってきたのであった。
「あのう、八重先生・・・・すみません・・・・。」
教室の扉を開けて俺を見ているのは瑞樹だった。俺がこの教室になってから・・・いや、八重先生がこの教室にいる間は一度たりともこの教室に来たことはなかった。まだ、一ヶ月ぐらいしか経っていないけどね。
「ん?何かな?瑞樹君?」
「ええと、僕のお姉さんが職員室で八重先生のことを探してました。なんでも、話があるそうです。」
「そう?」
そういって名残惜しそうに俺の両手を触って先生は旅立ったのであった。はやく、生徒離れして欲しいもんだな。いや、俺が出来ていないほうなのだろうか?
「ふぅ、やっぱり零時にはイロモノがお似合いだよ。うらやましい限りだよ。」
「おいおい、みんなに失礼だぞ!まぁ、それはいいや・・・それでどうかしたのか?」
「おっと、そうだった・・・実はね・・・」
俺の近くまで来ると一枚の写真を伏せて俺に渡す。
「・・・この写真は?」
「これはね・・・・生徒会長の例のあれだよ。」
「・・・なるほど。それはわかったのだが俺に渡す理由はわからんぞ?大体、その写真になんの価値があったんだ?いたずらに彼女を泣かしただけだったぞ。」
この前の生徒会長の泣き顔を思い出す。あれは正直やりすぎたと思う。
「・・・いや、それは零時が悪いと思うんだけどね。それさ、零時が処理するべきだと僕は思うよ。それ、確かに撮ったの僕だけど零時が使用しちゃったからね。言葉に力があるんだし、物体だってそれなりの力があると信じられているだろう?どうも、それをもっていたら僕が呪われてしまいそうなんだよ。実際、今だってきついぐらいさ。」
真面目そうにそういっている瑞樹。その表情が暗いのがこの写真がただものではなかったことを証明している気がする。
「昨日だって恐ろしい夢を見たし、刻々と体調が悪くなっている気がするよ。」
「・・・?でも、写真は全部処理しただろう?あるのは生徒会長が所持していた一枚だけだと思ったんだけど?」
「勿論、世界にあの写真は一枚だけさ。僕はそれを生徒会長から返してもらっただけだよ。それが生徒会長のところにあるといろいろと面倒だろうからね。ま、そういうことがばれれば零時が退学になってしまう・・・それだけは避けたいのが僕たち、『シチュエーション部』の部員の本音だよ。」
いつの間にか廃部となった『小説部』の代わりに『シチュエーション部』がそのポストにおさまってしまっていたらしい。困ったものだ。
「俺に渡したところでこの写真が効力を発揮して俺の夢をぶち壊してくれたらどうするんだ?」
「そのときはそのとき・・・冗談だよ、握った拳を下ろしてくれ。その写真、とりあえず君が処理するのが一番だと思うんだ。なんとなく、それが僕にはわかる!」
いや、断言されたってな・・・しかし・・・まさかパンチラ写真に人を呪う力が出てくるなんてな・・・これはある意味価値のある写真なのかもしれない。
「まぁ、何かあったときは僕たちに連絡してくれ。」
「・・・・連絡して欲しいぐらいならこれを渡すなよ・・。」
「彼女のことを異性として見れない我が校のへたれ男子生徒は君を誇りに思う。では・・・おっと、時間だ。ばいばい、零時。」
そういって瑞樹はその場からまるで魔法使いみたいに・・・いや、魔法使いなのだが、とりあえずそこからいなくなった。的確に言い表すなら忍者か成仏した怨霊だな。
「あれ?瑞樹君は?」
「ええと、帰りましたよ。多分、男子トイレにでも行ったんじゃないんですかね?」
戻ってきた先生にそう告げると微妙に休憩が出来たことを瑞樹に心の中で感謝しながら再び小テストのやり直しと向き合ったのであった。
放課後、俺は部室にて書類を書いていた。俺専用の机には角がついてます。(自慢)
「零時様、代わりましょうか?なんだかとても疲れていますけど?」
瑞樹の一声によってリボンを解いてさらさらの銀髪を揺らしながら俺に近づいてきたルナはそんな嬉しいことを言ってくれる。うん、こういうものもいいもんだな。
「いや、そろそろ終わるから大丈夫だ。」
集中している俺の耳に雑音が紛れ込んでくる。
「う〜ん、ソルは髪の毛が短いから・・・髪型と状況が限られてくるな・・・ツンデレキャラなのはそのまんまだし、ここは意外性をもってしおらしいキャラで行ってみようか?」
「・・・?どうすればいいんだ?」
真面目に聞いているソルのおつむが心配されてしまう。大丈夫だろうか?
「雅ちゃん、やっぱり君は『魔女っ子』になるべきだと僕は思うんだ。僕が君の衣装を準備してあげるからさ。」
「え〜っ!私、やっぱり『正義のヒーロー』がいいな。レッド役がいい!!」
雅も雅だな。それより俺は一人でも欠けちゃったら廃部になる可能性が出てくるし、さっさとここはこの書類を提出してこよう。
「じゃ、書類を渡してくるから・・・・問題を起こさないようにしてくれよ?」
「大丈夫、零時じゃないんだからだれもそんなことはしないよ。」
今、とても失礼なことを言ったのは誰だろうかと部屋を見渡したのだが、みんなはしれっとした表情で自分がしたいようなことをしていたのであった。
「・・・・・とりあえず、俺が一時間たっても帰ってこなかったら先に帰っててくれ。俺、今日もバイトがあるからな。」
「は〜い。」
皆、返事だけはいいんだよな・・・。
コンコン・・・
「ちょっと待ってください。」
怒っていない生徒会長、パトリシア・T・ロードウェルの澄んだ声が聞こえてくる。俺は言われたとおり、生徒会室前に立って待つことにしたのであった。
それから数分後、生徒会室の扉が開いて瑞実が姿を現した。
「あ・・・零時・・・・。」
「あれ?瑞実?なんでこんなところにいるんだ?」
「・・・用事・・先生が部活に入るなら書類を生徒会長に渡して来いっていったから・・・。」
そういえば俺たちの学年の転校生って瑞実だったのか?それまで見たこと無かったし・・・いや、どっちかというと転校というより復学というものかもしれないな。
「ふぅん?それで、これから部活?それならがんばりなよ?」
「・・・うん。」
そういって瑞実は幸せそうな顔をして俺の前からいなくなったのであった。もしかしたら成仏したのかもしれない。さすがにそれはないな。
「どうぞ、はいって結構ですよ。」
馬鹿なことを考えていると生徒会室の中から生徒会長の声が聞こえてくる。
「失礼します。」
「・・・とうとうノックすることを覚えてくれたんですのね?私は嬉しいですわ。」
本当に嬉しそうな顔をするパトリシアに俺はため息をついたのであった。やれやれ、この小娘さんは・・・。
「それで、何か御用かしら?」
「ええ、新しい部活の発足を・・・きちんと書類に書いてきました。」
そういって俺はパトリシアに書類を渡したのであった。以前は拒まれていたのだが今は拒むことなく、それを受け取って眼鏡ごしにそれを見ている。
「・・・・今回もすごい発足理由ですね。」
苦笑するパトリシアに対して俺も苦笑するしかなかった。まぁ、『ありとあらゆる状況において人間の心はどのような対応をするかを研究したい為に発足。』というものだ。
「それに、メンバーもぎりぎりですわね。もう一人、欲しいところです。」
「別に、パトリシア生徒会長の部活じゃありませんし、これが限界です。我々のほかにも部員を欲しがる部活は掃いて捨てるほどありますよ。」
「そうなのですか?」
「ええ、そうです。」
生徒会長には内緒だが、雅を入部させたときは色々と裏工作をしたものだな。結局、瑞樹がヒーロー物のおもちゃで釣って入部させたのだ。まぁ、他の部活ではお金を使用するところもあるくらいだからそれほど意味不明な部活も存在している。
「実際、俺たちは苦しいですからね。でも、書類に不備は見つけられないでしょう?」
そういって生徒会長をじろじろと見ると、彼女は書類に未だに目を通していたのだった。
「しょうがないですわ。認めざる終えません。」
そういって生徒会長の認可証を押して、俺に返す。書類は各自で保管しておかなくてはいけない。もしも、この書類を無くしてしまったら廃部確定である。
「じゃ、俺はこれで・・・ところで、他の生徒会員の方々は?」
「・・・この時間帯にはほとんどの人が帰宅していますよ。残っているのは私だけです。最終戸締りまで残ってするのが仕事だと・・お姉さま・・いえ、前生徒会長が申していたことですし、この学校は大体由緒正しき高校ですからね・・・・私のように上のものがきっちりとしておかなくてはいけないのです。」
そういって生徒会長であることを誇りにしているのかなにやら胸をそらしている。
「・・・まぁ、あまり帰りが遅くならないようにしないと近頃は物騒ですからね。気をつけてください。じゃ、俺はこれで・・・。」
そういって生徒会室を後にしたのであった。
「お待ちなさい。私もそろそろ出るころですので、バイト先までお供しますわ。」
「・・・?今日はバイトの日でしたっけ?」
「ええ、そうです。ほら、このとおり・・。」
似合いそうもなさそうなかわいらしい手帳を俺の目の前に突きつけて生徒会長は再び胸をそらしたのであった。なにかコンプレックスでもあるのだろうか?
「・・・・本当ですね。」
「敬語を使わなくていいといっているでしょう?年下だから・・・。」
「はいはい、わかりました。」
そういって俺は首をすくめる。
廊下を共に歩いていると、校舎内から外の様子がよく見えていた。校庭の隅のほうを通って瑞樹達が帰っているところを確認できる。ここから見ると瑞樹のハーレム状態のようにも見えるもんだな。近くにいる男子運動部の連中が殺気を発しているな。
「しかし・・・なんであんな客が来ないところにわざわざバイトを雇うのかしら?」
「・・・。」
「ちょっと、聞いてらっしゃるの?」
「あ?」
「・・・・もうっ!だから、何であなたのバイト先の助平なおじいさんは全く客が来ない店を閉めないで続けているのかしらって言っているのよ!」
両手を振り回してそう叫んでいる生徒会長だったが、俺はそれをちょろっと見ただけで再び瑞樹達のほうを向いている。
「おーい、瑞樹!」
窓から手を振っているとあっちも気がついたようで手を振りかえしているのだった。
「もう!」
「・・・さぁね?なんだか裏でやってるって噂だけど?俺たち、バイト君が知ってはいけないことなんじゃないのかな?」
そういって俺はお茶を濁してその裏で何かをしていると噂されているバイト先へ向かうのだった。さて、今日から・・・バイトも更に増えるらしいし、大変になるに違いないだろうな。今日から何かが始まる気がする。
まず、後書きの前に・・この場を借りて感謝の意を伝えたいと思います。読んでくださった方、評価をしてくださった方、そしてわざわざこんな作者にメッセージをくれた方・・・本当に嬉しいです。名前を挙げていいかわかりませんので、伏せておきますが・・・・何度かメッセージをくれた方には本当に下げる頭も無いくらいです。約一年ぐらい前に自分もここの小説を読んで、投稿することにしましたが・・・これを読んでくださっている作者の方々の中にもそういう人がいるのではないかと思います。(多分、百人に一人ぐらいかな?)そういう人にはこれからもがんばってもらいたいと思います。




