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御注文は?〜魔法使いと機械で!!〜

さて、今回から皆さんが待ち望んでいた?新しい話となります。まるっきり違っているというわけではありませんが・・・要所要所で変わっているところもあります。これまで明かされなかったこともこっちをみれば大体わかると思います。今回は小手調べ・・・あまり気にせず読んでください。では、次回から開始します!応援、よろしくお願いしますね!

壱、

 俺の名前は時柱ときばしら 零時れいじ

まったりと高校生活を送っている二年生である。

あ、違うか・・・・三年生だ。

そうだなぁ、趣味はねじをながめたり、機械をいじったり、そういうことだな。

世間では魔法が主流となっている世界なのだが、どうにも、俺には不得意教科らしい。学校にも『魔法』という教科が入っており、俺は常に赤点を取っている。チームまで作られており、俺はいつも一人だ。まぁ、誰だって不得意教科は存在するさ。別にこれで俺が落ちこぼれだと思ってもらいたくは無い。他の教科ならば平均的に取れていると自分では思っている。

 そんな俺だったのだが、ある日、親友である後鳥河ごとりがわ 瑞樹みずきと共に一学期の初めにとあるレストランに向かったのであった。そこから、俺の人生は百五十度(微妙だ。)変わってしまったらしい。それがいい方向であってほしいと願う日々である。


 さて、どれを注文しましょうかなぁ。いやぁ、迷うなぁ・・・・お金、全然無いから迷う必要なんてないんだがね。


「・・・・零時、先ほどから注文表を三十分ほど眺めていないか?お冷、何杯お代わりした?」


 その質問はタブーである。実際、お冷だけでお腹が充たされてきたことは秘密だ。セルフサービスだったらよかったのに・・・。そろそろ、店員さんの視線が恐ろしく感じられてきたぞ・・。


「しかしまぁ、そんな零時のおかげで僕は美しいウェイトレスさんを眺められるんだからね。」


「・・・・ああ、そうかい。」


 さて、困ったものだ・・・・オレンジジュースを頼むこととしよう。さて、どのウェイトレスさんに頼もうかなぁ?


「お、決まったのかい?僕がウェイトレスさんを呼んであげようか?」


「結構だ。そのぐらい自分で出来る。」


「ほほう、それじゃ、これで零時の趣味の女の子が誰かようやくわかるよ。これは裏情報だ。学校の者たちに流せば意外と高値で情報を買ってくれるかもしれないな。」


「・・・勝手にしろ。」


「それなら勝手にさせてもらうよ。」


 手を上げて近くにきそうなウェイトレスを呼ぶ。その間、瑞樹は俺に尋ねてきた。


「・・・あのドジウェイトレスがいないね?」


「知るかよ、別に俺たちには関係ないだろう?」


「まぁ、確かに。」


 やってきたウェイトレスは元気いっぱいそうな人物で、長い髪をリボンでまとめていたのであった。瑞樹はそんなウェイトレスさんを見上げてニヤニヤしている。


「御注文はお決まりでしょうか?」


「あ〜僕じゃないよ、そこの人。」


 まるで他人扱いする親友だな・・・まぁ、そういう性格なのは重々承知している。


「・・・・オレンジジュースでお願いします。」


「かしこまりました。すぐに運んできますのでしばし、お待ちしていてください。」


 こういう店員さんはいい店員さんだ。たまに注文を引っ張ってくると睨みつけてくるからな。


「・・・・零時、きちんと魔法の勉強はしているかい?」


「おいおい、魔法が使えない俺が勉強しても意味無いだろう?」


「でも、君の妹君は使えるだろう?」


「・・・・あいつと俺は血がつながってないの!だから、あいつが使えても俺が使えないことに別に問題は無い。」


「劣等感を感じてない?」


「感じない感じない。」


「兄貴としての威厳は?」


「威厳?別に話さない相手に対して威厳もくそもないだろうに。」


「妹君は君と話したがっていたけど?」


「知らない知らない。」


 全く、なんて野郎だ。

確かに俺には一歳年下の妹がいるが、俺にとっては邪魔・・・ではないが、あまりかかわって欲しくない。

劣等感を感じているわけではないが、あの才色兼備な妹は(勿論、俺が苦手な魔法の科目も主席である。

)俺にとって爆弾の一つである。

先生からはからかわれ、母さんからはバカにされ、父さんには間抜けにされ、犬には嫌われる・・・というものだ。常に爆弾は爆発してる。だが、そんな俺にも唯一優しくはしてくれないが拒絶しない一人がいる。それは、俺の部屋に飾っている『メルナ』と呼んでいるロボットである。これは俺が廃工場で拾ってきた物である。


「・・・妹と最後に話したのはいつだい?」


 唐突にそう尋ねられて俺は考えてみた。


「・・・・・そうだなぁ、小学生だったかな?」


 それ以降、俺は視線を逸らし、廊下であったらポケットから文庫本を出して無理やりそれを顔面にくっつけ、朝食の面では妹よりもすばやく食べて逃げている。く、悔しくなんてないやい!!

 そこまで話していて俺の元にオレンジジュースが運ばれてくる。俺はそのオレンジジュースをすぐに飲み干して席を立った。


「帰るのかい?」


 だって、俺は既に注文した品を食べ終えた(この場合は飲み干した。)のだから既にここにとどまる用事等無い。俺が帰っても構わないだろう。いや、むしろ邪魔になっているほうの可能性のほうが高い。


「ああ、帰る。だってここにこれ以上いても店の繁盛の邪魔になるだけだからな。それに、そろそろ家に帰って授業の予習をしないとな。俺はお前みたいに頭の構造がすっきりしていないからな。」


「全く、僻みやだねぇ。ま、何か授業でわからないことがあったら僕に聞いてくれ。何でも教えてあげるよ。」


 そういって頼もしい俺の親友は俺と同じく、席を立ったのであった。勿論、瑞樹はにやりとしている。そして、どこか名残惜しそうにウェイトレスの面々を見渡したのだった。


「・・・・どうせ、家に帰ったらあのウェイトレスを人形で作るんだろう?」


「そうだね、何回か練習してみようかな?零時、この仲の誰かと仲良く慣れたらそのときは写真に収めて僕のところに持ってきてくれ。」


「・・・・ま、仲良くなる機会なんてないだろうがな。」


 そういってお互いに会計を済ませたのであった。そこでも、出てきたのはあのリボンをしているウェイトレスだった。先ほどからずっとこの人は俺たちを見ているのだ。まぁ、それもしょうがないことだろう・・・千円以下の注文で一時間近くいたのだからな。


「ありがとうございました。」


 そういわれて俺たちはレストランから出たのであった。このレストランは過去一度、雇用としたのだがウェイトレスの不注意で小火騒ぎがおき、そのときはいけなかった。


「とりあえず、たまには妹さんと話をしなよ。」


「へぇへぇ、わかりましたよ。」


 帰り道、近所ということなのでそのまま歩いて帰る事にしていた。勿論、これからは瑞樹の家に行かせてもらってパソコンでもさせてもらおうかな?ああ、家にパソコンほしいなぁ。


「瑞樹、今日来ても良いか?」


「全く、先ほどの僕の話を聞いていたのかい?たまには家庭サービスをしないといけないよ。」


「・・・へ、家に帰ったらサービスするぜ。それに、俺だって帰宅部だ。家に帰ってきたらきちんと洗濯物を入れてたとんでるんだぞ?夕食だって母さんが前日に買い置きしているものを使って作ってるんだ。」


 別に料理がうまいわけではないのだが(レシピはきちんと母さんがテーブルの上においてくれている。)そうでもしないと部活で遅くなっている妹と顔をあわせてしまう可能性だってある。


「やれやれ、でも・・・残念ながら今日は僕用事があるんだよ。」


「用事?」


「ああ、従姉妹がなにやらこの校区に引っ越してきたらしくてね、それで色々と手伝いに行かなくてはいけないんだ。そろそろ、時間だから僕はこれにて失敬するよ。」


 そういって既に見えてきている自分家に向かって走り始めたのであった。残された俺はなんともいえない感じにとらわれたのであった。


「・・・・置き去りかよ・・。」


 まぁ、しょうがないだろう。奴はそういう性格なのだ。そして、残された俺としては奴との付き合いは長い。それに、確か小さい頃に瑞樹の従姉妹とも会ったことがあるような気がする。あっちが覚えているのか知らんがな。


「さぁて、家に帰ってごろごろでもしましょうかね?」


 誰に問いかけるでもなく、俺は歩を早めたのであった。


 勿論、今日の夕食は決まっており、それを作るのも良いかもしれない。

弐、

 人間、誰にだって予想できないことはあるものだ。いや、それが普通であって欲しい。その日の夕方、まだ妹が帰ってくる前のちょっとしたゆるりな時間である。

「あ〜そうそう、そういえば今日、父さんが下宿人を連れてくるんだって。ほら、前に行ったでしょ?」

「・・へぇ、下宿人?それはまた・・下宿人?そんなのいつ言ったっけ?」

 自作のハンバーグ(微妙に形がずれている。)を器用に箸で抓みながら俺は首をかしげた。下宿人の話なんて聞いたことが無い。

「あ、そうか・・・そのとき・・・いや、いつも零時はすぐにいなくなるから聞いていなかったのね?実はね、父さんの親友の無奈月さん家の娘さんがこっちのほうに引っ越してきたらしいんだけど・・・・それがまた大変らしくてね、ストレスで倒れたりしたんだって。」

 ストレス?

「ああ、一人暮らししているから学校行った後に放課後二つぐらいバイトをかけ持ちしているらしいのよ。それで、無理がたたっちゃってね。それで、その話を聞いた父さんがお人よしで生活費を出してもらわなくて結構な代わりに家事を手伝ってもらうようにしたのよ。ま、それだけじゃないんだけどね。」

「あ、そうなんだ。まぁ、俺にはあまり関係なさそうだな。」

「そうね、そろそろ来る時間帯だから、挨拶ぐらいはしなさいよ?未だにみやびとは話をしていないんだからね。女の子に優しくしないといけないわよ?」

 雅とは俺の噂の妹である。まぁ、どうでもいいことではあるが・・・。そういって避難がましい視線を送ってくるので俺はさっさとハンバーグをいの中に押し込んで席を立とうとしたのであった。すると、玄関のほうからチャイムが鳴り響く。


ぴんぽーん


「あ、零時、見てきてくれないかしら?」

「へぇへぇ。」

 そういって食器を置いて俺は玄関のほうに歩き出した。別に急がなくても結構だろう。そう思って玄関を開けるとそこにはどこかで見たことがあるようなリボンをした少女が重そうな荷物を持って立っていた。

「あ、やっぱりあなただったんですね?」

「あ、ウェイトレスの・・・。」

 そこに立っていたのは俺のオレンジジュースをにこやかに運んできたウェイトレスでそれに、会計時も俺達を見ていたウェイトレスで、更に、なにやらじろじろこちらを見ていたウェイトレスでもありますな。

 そのウェイトレス少女(名前不明)は俺に頭を下げてきた。

「はじめまして!私の名前は無奈月むなづき 瑠奈るなです。これから、よろしくお願いしますね?私があなたを一人前にします。」

 一人前に?誰を?俺を?何の?

 考え込む俺だったが、ささいな問題だと頭の中の俺たち(重要な事柄については脳内にて、至急対策委員会が設置される。)は決定したようだった。

「あ、どうも・・よろしくお願いします。」

 物事をはっきりいうタイプなのだろう。きっと、俺より年上に違いないと思って頭を下げて敬語で答える。だが、そんな俺に彼女は笑って言った。

「私とあなたは同い年ですからそんなにかしこまらなくてもいいですよ。」

 言っている本人がかしこまっている。

「・・・そうか?それなら・・・・まぁ、とりあえず、荷物を貸してくれ。俺が運ぶからさ。」

「あら、瑠奈ちゃん・・・うちの亭主と一緒に来るって思ってたけど?」

 母さんが出てきたので俺は引っ込むことにした。勿論、預けられた荷物はとりあえず、先ほどまで俺がいたリビングへと運んでおく。きっと、ここで話をするだろうからお茶を残して俺は自室へと戻ったのであった。その後に、雅の声がしてきたので危なかったといえるだろう。

 自室にこもった俺は日記帳を見やる。

その日記帳は俺が妹と話さなくなった日から付けられており、主に何か面倒なことがあった日にのみ、書かれている。

最近会ったことといえば『今日、理科の小テストにて 人間の体の約六割を占めているものは何か? という問題において回答は 何かよくわからない液体?いや、体液? と回答したところ、理科の担当の先生に呼び出され、叱られた。

 』まぁ、このくらいなら書くほどでもなかったのだが、この後のことを読めば俺が何故この日記に書いたのか理解していただけるとおもう。

『・・・・瑞樹に見せてもらったところ奴は 夢と希望 と書いていやがった。何故、あいつが呼ばれずに俺が呼ばれたのだろうか?どう考えても、俺のほうがまともな回答を書いていると思うのだが・・・・』そこまで読んで俺は首を振った。そして、久しぶりに日記の一番初めの欄を眺める。そこには、妹と遊んでいた・・・いや、最後に遊んだ日のことが書かれている。

『・・・・今日、妹の雅に頼まれて拾ってきた本に魔力をそそぎこんでみた。その結果、俺はなにやら変なものに取り付かれてしまったようだ。魔法を使うことが出来なくなってしまった。じいちゃんに話したところ、

「これは二人だけの秘密じゃぞ?お前が魔法が使えなくてもけんかに勝てるようにじいちゃんが武術を叩き込んでやる。」という結果が返ってきた。』

 この日記はまだ続いている。

『本日から妹と全く話すことの無い生活が始まった。原因はちょっとややこしいことで、じいちゃんが言うには

「魔力を打ち消してしまいかねんから、一ヶ月はあまり話すでないぞ?」といわれたからだった。とりあえず、一ヶ月の辛抱である。』

 それから一ヶ月後の日付が掲載されている。

『本日、苦労の末あって魔法の代わりとなるらしいちょっと難しい武術を会得した。なんでも、相手の魔法を一度食らえばその分の力が戻ってくるそうだ。そして、手に入れた魔力はずっと維持されるそうである。』

 そんで、最後にこの妹がらみのことが一言で終わっている。

『話を雅にしたら

「変態みたいだね。」といわれてしまった。』

 そう、これが未だに俺が雅と対等に話し合えない理由である。妹なんかにこんなことを・・・いや、確かに一度食らわなくては俺の魔法は発動しないのだが(今のところ平和なために一度も魔法を己のみに食らったことなど無い。)それがまた、じいちゃんいわく癖になるといっていた。変態さんだ。

「・・・ま、しょうがないわな。」

 そう思いながら俺は月が出ている夜空を窓から眺めたのであった。そして、頭痛が俺を襲い始める。

「あ〜頭が痛いぜ。」

 これも妹が関係している。

というより、俺が魔法を使用できなくなった根本的理由の本質・・いや、元凶の本の効果だ。

あの本は呪いを読み解いたものに与えるものだったのではないかと今の俺は考えている。

唯一、ひらがなで書かれていた部分には『ふくさようとしてこれはつきをみるとあたまがいたくなります。

』とあったのだ。

つまり、あの本を読んでから俺は常に夜は頭痛が待っているのだ。月なんて見なくてもいいと思うのだが、そうもいかない・・・・窓から必ず俺の部屋は見えるようになっている。つまり、常に俺の頭の中では『脳内プロレス お月様編』があっているのだ。ああ、なんだか俺も変な影響を受けてきているかもしれん。

 そんなことを考えながら静かに顔を下に向けているとノックをする音が聞こえてきた。普段なら狸寝入りをしている時間帯である。

「ええと、瑠奈ですけど?零時様、いますか?」

 様?様ってなんだ?

「あ〜おきてるけど?何か用事があるの?」

「本日の魔法の勉強をしましょう。」

 魔法の勉強か・・・・これも母さんに言われたことなのだろう・・・いや、そういえばそんなことをいっていた気もしないでもないな。

「・・・あ〜残念ながら俺は魔法が全く使えないんだ。だから、気にしなくて結構だよ。じゃ、俺明日も早いからお休み・・。」

 そういって俺は部屋の電気を消して本当に布団の中にもぐりこんだのだった。だが、今回やってきたという下宿人は一筋縄ではいかないような人だった。

「・・・・本当に使えないんですか?」

 寝たといったのに尋ねてくる。

「ああ、本当だ。」

 これも事実だ。だって、俺を教えたじいちゃんが行っていた。因みに、きちんと魔法に成り代わるような体術だってじいちゃんから習っているので魔法を使ってくる相手でも勝つ自身はある。

「・・・昔は使っていたと雅さんがいってましたけど?」

「昔の話。確かに、昔は使ってた。詳しくは雅に聞いてくれ・・・・。」

 そういって俺はなんとなく嫌な予感がしたので窓を開けたのだった。別に、そう・・・・不穏な空気を片付けようかな・・・と思っただけだ。


どごーん!!


 いきなり、そう・・・『これより、攻撃を開始します。

』などという台詞もなしに衝撃が走ったのであった。

その結果、俺は開けた窓から放り出され・・・家の庭に植えてある大きな木(この木何の木?木になる木・・・じゃなくて、気になる木。)に衝突。わらにもすがる思いで手を振り回すと偶然、木の枝を掴むことが出来た。背中には冷や汗がだらだら・・・・そんな俺は出てきた窓のほうを見上げると・・・窓から誰かが俺をさがしているようだった。

「・・・零時様、まさか窓から逃げようとするなんて・・・そこまで・・・」

 うわ、すんごく・・・悲しそうな顔をしないでほしいな。はっきり言うが、俺が悪いのではなく、君が悪い。俺がそんなことを思いながら相手を眺めていると・・・・彼女はどうやら部屋の中を見ている・・・と、一つのところで視線をとめた。因みに、そこには俺の日記がおいてあった。ああ、近くにあるのに遠く感じるぜ・・・うわぁぁぁ!!やめてくれぇ!!

「・・・ふむ、ふむ・・・」

「あわわわ・・・。」

 俺は木から自室に飛び上がろうとしたのだが・・・失敗。その結果、地球の重力に引かれて俺は落下・・・・先ほどはかろうじて助けてくれた庭の木は助けてくれなかった。おもいっきり、落下。下手したら死ぬんじゃないかと思った・・・・のだが、一瞬だけ浮遊感があったと思ったら俺はゆっくりと地上に降り立つことが出来たのだが・・・・

「うん・・・?」

 首をかしげてみると体が動かなくなってきた。そして、眠くなってきたのだが・・・・く、何故だ??俺は睡眠薬など飲んでいないぞ?ううん?

 そのまま、俺は眠ってしまった。


 夜空には月が出ていたので、彼は眠っていた。

「・・・雅、ごめんな。」

 ピンク色のベッドに寝転がって彼はそんな寝言を口ずさむ。その近くには、彼の妹が座ってそんな兄を眺めていた。彼女は過去からなぜか話してくれなくなっていた兄に不満と疑惑、そして怒りを覚えていた。しかし、話しかけることの出来ない自分にも同じ感情を抱いていた。

「・・・・兄さん・・・。」

 動かない兄に近づく。兄はまたぶつぶつといい始める。

「・・・・いや、正直言って恥ずかしいってもんで・・・あ〜ごめんな、ごめんな。」

 寝ていることには気がついているのだが・・・・妹は首を振る。

「うん・・・うん、私も悪いんだ。」

「・・・・あ〜、雅・・・そうだよな、やっぱり俺なんてお前の兄なんかじゃないよな。ああ、そうだよな・・・。」

 夢の中で妹から嫌われてしまった兄に対して現実の妹は首を振る。

「ううん!!そんなことないよ!!」

 彼女はそういって兄の眠っているベッドにしがみついたのだった。

「・・・・兄さんはいつだって私の兄さんだよ。に、兄さんが悪くないのはわかってる。」

 それはもう、感動ものである。因みに、零時を眠らせたのは彼の義妹、雅であり、寝言で零時の心情を聞き出す魔法をかけたのも雅である。

「・・・・私が悪いんだよ!!」

 因みに、この魔法はかけた本人が解除しない限り、永遠に続く。

「・・・ご、誤解も解けたところで・・・・兄妹のスキンシップを・・・・初めての・・・・」

そういって寝ている兄貴のベッドに入り込んでいく義妹、雅。それに対して零時は全くの無反応である。まぁ、しょうがないだろう。

「に、兄さん・・・私恥ずかしいから目を・・・瞑って?」

 既に、目は瞑ってある。しかも、目を瞑らせたのは彼女だった。

「・・・・にい、さん・・・・」

 彼女はそういって目を瞑り、寝ている兄貴の顔に近づいていったのであった。その顔は自分が悪かった・・・・優しかった兄さんはやはりそのままの兄さんだったのだと再確認した表情をしていた。

 身動き一つできない零時のまぶたが開いていき・・・目の前の雅と重なったのだが、雅はお構いなく彼の顔に迫っていく。


   〜END〜


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