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ローザ/零時:私は鶴!/俺はナレーター!!

今回でおとぎ話は終わりです。どのおとぎ話?が面白かったか教えてくれたらうれしいと思います。

四十三、

 次の日の朝、俺は未だにベッドの上の人という奴だった。微妙に熱があり、誰も俺を学校に行かせようとはしなかった。暇なものだ。やることは特に無いし、かといって寝ようにも寝れない。このままではいけないと思ったが特に自分に出来ることはないようだ。

「マスター!お独りでは寂しいと思って私も参上しました!!」

「でたな、風邪の悪化菌!なにしにきた!」

 俺は近くにあったドライバーをローザに向けた。せめてもの抵抗!気休めである。

「看病に来ました!大丈夫です!」

「何が大丈夫なんだ?」

「具合の悪いマスターなんて赤子も同然です!私に倒せない相手ではありません!!」

「・・・・。」

 俺はため息をついてローザに言った。ドライバーは当然のように向けておく。

「結局、何しに来たんだ?本当に悪化させるようなことをしたらばらすぞ?」

「あ、ええとですね・・・この本を読んであげます!!」

 そういって取り出したのはなにやら『鶴に恩返し』という童話だった・・・?

「・・ん?それって何か違う気がするぞ?鶴が恩返しを・・・」

「そうですか?とりあえず聞いてください。」


 鶴に恩返し 読み手 ローザ

 今は昔、あるところに貧乏爺さんが住んでいました。彼は暇人でした。

「まぁ、どうせまた俺が爺さんだとは思ってたさ。へ、かまわねぇよ。」

 貧乏爺さんは今日も今晩のおかずを探しに山に行きました。勿論、徒歩です。

「さて、今日の晩飯は山鳥の目玉焼き・・・?じゃなくて山鳥の産みたてタマゴの目玉焼きを作るかな?」

 そして、貧乏爺さんは罠に掛かった鶴を見つけました。痛々しそうでした。

「そこのマスター、私を助けてくれませんか?」

「あ〜めんどくせぇや。まぁ、助けてやるよ。・・・・・お、怪我までしてるじゃないか・・・・家にきたらどうだ?」

「はぁ、ありがとうございます。」

 貧乏爺さんは鶴を家に連れて帰りました。

「ほら、風呂にでも入りな。」

「重ね重ね、すみません。このお礼はいずれ、します。」

 そして、鶴を騙して鍋に入れて鶴鍋にして食べてしまいました。

「うん、命はおいしく頂かないとね。所詮これが鶴に出来る最大の恩返しだ。」

 おなかも膨れてめでたしめでたし・・・・


 俺は非常に首をひねることになった。まぁ、確かにそうだろうが・・・・

「ローザ、なんだか話が途中から違うぞ?」

「え?あってると思いますよ?」

「いや、題名から間違えてるし・・・・本当は『鶴の恩返し』だぞ?」

「・・・・?どんな話ですか?教えてください。」

「じゃ、あんまり覚えてないけど静かに聴いてな。」


 鶴の恩返し 読み手 剣山零時

 今は昔、あるところにおじいさんがいました。

「はぁ、私は女なのに・・・これも零時の所為・・・まぁ、しょうがないわね。さて、今日も裏の山の畑に行って野菜を取った後は魔法で熊でも捕まえてこようかな?」

 おじいさんは今日も山へ行き、自給自足の生活を送る為に必要なものを探しに行きました。

「よし、これだけあれば充分かな?」

 そして、山を降りる途中に熊用の罠に引っかかっている鶴を見つけました。

「セレネ、悪いけどこの罠取り外してくれないかな?こけてひっかかったんだ。」

「あ〜う、うん・・・(その罠、私が仕掛けた奴だ・・・ソーラも引っかかるんだなぁ。)」

 おじいさんは鶴を助けてあげました。

「ええと、元気でね、ソーラ。」

「うん、じゃあね、セレネ。」

 おじいさんは鶴を助けた後、家に帰り晩御飯を食べていました。

「まぁ、結局野菜しかとれなかったけどね・・はぁ、お肉が食べたいなぁ。」

 すると、誰かが戸を叩きました。

「すみませーん、旅のものですが・・・。」

「あ、はーい!今開けます!訪問サービスとかはお断りですけどね。」

 扉を開けるとそこには白い着物を着た女の人が一人立っていました。彼女は・・・ええと・・・(しまった!何でおじいさんの家に住まわせて欲しいって言ったんだっけ?)とりあえず何か言いました。

「あの・・・・・この家に住まわせてください。」

「うん、別にいいよ。」

 そして、その夜・・・・お鶴と名乗った女の人は障子のある部屋に入り、不思議に思っている貧乏なおじいさんに言いました。

「ええと、私がこの部屋に入っている間は決してこの部屋を開けないで下さい。もし・・・開けたら・・・。」

「あけない!絶対にあけないから!!そんなに怖い顔をしないで!!目、光ってるよ!!」

 こうして、貧乏なおじいさんとお鶴の生活は始まりました。そして、お鶴が来た次の日の朝・・・・お鶴は綺麗ないったんもめんを渡しました?

「どうぞ、私がお作りした木綿の布です。」

 あ、いったんもめんじゃねぇや・・・そうです、お鶴は木綿の布を作っていたのでした。

「ありがとう、ソーラ。」

「いえいえ、住まわせてもらっているのでこのくらい当然のことです。おじいさん、おじいさんはこの布を都で売ってきてください。」

「うん、わかった!!」

 その日の夜もお鶴は一人で障子のある部屋に入っていったのでした。次の日、おばあさんはいいました。

「あれ?ノワルがおばあさん役なの?」

「しょうがないじゃん!!文句言わない!それに、おばあさんは冒頭あたりで登場してないような・・・。」

「まぁ、うろ覚えだからね・・・適当になってきたんだよ。」

「とりあえず・・・おじいさん、お鶴さんはなにをしているのですかねぇ?」

「さぁなぁ?お鶴さんの布は高く売れるからなぁ」

 そして、ある日・・・・好奇心に負けたおじいさんは障子に穴を開けて中を覗こうとしました。

「なんだか・・覗き魔になった気分・・・。というより、覗くならいいよね?」

「こら!おじいさんが覗き込むんであっておばあさんは覗き込まないはずよ!!」

「いいじゃん、硬いこと言わないでさぁ?」

「むぅ、あんたがソーラの部屋を覗き込むのが気に食わないの!」

「へぇ、セレネって・・・」

「そういう趣味でもありません!!あんたみたいなオヤジ性格の奴は撃退よ!!」

 覗きこんだ部屋の置くには鶴が一匹いて、自分の羽で布を作っていました。

「やっぱりソーラって何をさせてもうまいんだねぇ・・・。」

「因みにセレネは何をやらせてもだめだねぇ。」

「むかっ・・・できるわよ!」

「へぇ、どじっ娘のあんたに何が出来るの?零ちゃんに頼りっぱなしじゃないの?」

「むぅ・・・。」

「・・・お二人とも、そこで何をやってるんですか?争うと一発でばれますけど?」

 鶴が覗かれていることに気づき、おじいさんたちに言いました。

「の、覗きなんて・・・私、もうこんなところで生きていけません!さようならっ!!」

「ああっ、違うのよ!!話も変わってるし!!おじいさんは犯人ではありません!!」

「そうだよ!おじいさんじゃなくて全部セレネが悪いんだよ!!」

 そして、おじいさんたちの手元にはお鶴が最後に作った綺麗な布が残ったのでした。おじいさんとおばあさんはその布を大切にしたそうです。

「セレネ、それさっさと売って何かおいしいものでも買ってきて。」

「ええ!何を言ってるのよ!!」

「だってさ、その布が売らなくてもお金くれるの?ごはん、私たちに食べさせてくれる?」

「・・・まぁ、確かに・・・。」

「思い出?そんなものはアルバムで充分!金になるものは売っちゃえ売っちゃえ。」

「うわ、冷たっ!!」

 めでたしめでたし


 俺は途中から調子に乗っていっていたのでローザの状態をあまり確認していなかった。

「ZZZZZZZZZ・・・」

「うぉ、寝とる・・・・。人が折角、話をしてやったのに・・・まぁ、いいか。」

 俺のベッドにいつの間にか入り込んでいるので揺り動かし、ローザを起こしに掛かる。

「おおい、ローザ。おきろよ。」

「・・・・zzzzzz」

「微妙に反応が変わったなぁ・・・。」

 めんどくさくなった俺はローザをそのままにして自分も寝る事にした。そして、事件が起こったのが夕方である・・・。

 とてつもない衝撃を感じて俺はベッドの上から落ちた。

「ぐはっ・・・。」

「零時!!」

 ぐいっとそのまま掴まれたかと思うと視線がふらふら・・・KO寸前のボクサーみたい。そして、目の前にはセレネのアップの顔が・・・・しかも、微妙につり目がちの目は俺に言外での非難を行っている。

「どうしてローザが隣で寝てるのよっ!!しかも!さっきまでの体勢は何!!」

「ふぁ?ええとだな・・・言ってることが・・・・わからないのだが?」

 がっすんがっすんと俺の体を前に後ろに振り回し、俺の視線は天井→セレネ→床→天井といった感じに無限ループ・・・さて、誰かがこの膠着状態を止めてくれるような救世主などは異世界から登場してくれないだろうか?いや、この際窓を蹴破ってでも登場して構わない。いっそ、召喚してみるか?

「どういうことなのよ!!あんた、ローザに触れてたわよっ!!え?どういうことなのよぉ!!」

「セレ・・・・・くる・・・し・・・ぐりゃ・・・世界が・・・まわ・・・」

「どうしてなのよぉ!!」

「説め・・・・いできな・・・・・」

 唐突にセレネが俺の手を離した。当然、俺は慣性の法則に従い、ちょうどセレネとは反対方向に降られていたのでそのままベッドにダイブ・・・よかった、死ななくて・・・。

「・・・セレネ、なんで零時君を振り回しているの?」

 救世主はソーラだった。俺はさしずめヒロインか?ああ、ドラゴン(セレネ)に監禁状態のお姫様(俺)を助けてくれたのだ・・・ありがとう、勇者ソーラ

「だって!零時ったらローザに触ってたのよ!!しかも!!触れてる面積が大きい!!」

「・・・!!!」

 こちらを見た勇者の顔は魔王だった。手のひらを返したように俺の胸座を勇者(いや、魔王だな。)は掴み、再び俺は前後左右に振られ始めた。心なしかセレネよりも激しい・・・。

「・・・・どういうこと・・ですか?」

「ソー・・・敬語は・・・やめたんじゃ・・・?」

「零時君が近くにいると思えるときはタメ語です。ですが、遠くに感じるときは敬語です。」

「こ、こんなに・・・近くに・・・いるのに・・・。」

「いえ、地球から土星ぐらいの距離を感じます。」

 離れていても心は一つ。摑まれていたら心はばらばら・・・ってことなのか?たまにしか見ないからいいものなのか?同じ機械をずっと見ていたら確かに構造などを覚えてしまうので飽きるだろう・・・そういうことなのか?新たな・・・・勇者よ・・・この魔王から私を助けたまえ・・・・。

「ただいま・・・って!ソーラ、何してるの!ご乱心?零ちゃんが苦しそうだよ!!」

 再び俺はベッドに倒れ、新たな勇者は期待を裏切らずに助けてくれた!!おお、君こそわれわれの光だ!!希望だ!!全てだ!!目に映る真実だ!!

「ノワルさん、由々しき事態です・・・。」

「え?どうかしたの?零ちゃんの風邪が実はインフルエンザだったとか?」

「違います。」

「じゃ、何?」

「ローザに触れたんです!!あの!零時君が!!しかも・・・」

「いやらしい手つきでよ!!」

「それってどういう・・・・」

 ノワルの顔が実は裏面のボス的存在であろう物体に変わっていく。さて、ここに村人Aの前にいきなり実力なら

 ドラゴン 魔王 裏面のボス

があらわたことになる。さて、こうなったら村人Aはどうするべきか・・・。

「あ、扉から逃げようとしてるわ!!」

「させませんよ!」

「逃がさないよっ!!」

「甘い!!」

 俺は窓から飛び降りたのだった・・・てっきり一階だと思ったのだが・・・

「そうだ!!ここは二階・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


久しぶりになりましたが、どうも。今のところ、後、一回までがこの章です。次章は剣山零時の物語、エンド編です。

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