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ノワル:私は心優しいおばあさん!!

四十二、

 そろそろ夜中の時間帯・・・・よい子は眠る時間帯・・・・草木も眠る丑三時・・・・カーンカーンと神社の木から・・・・って、この近くにそれはないな。

 俺は散々寝ていたので全く眠れないでいた。夜空の月が綺麗だ・・・。

「零ちゃん、まだおきてるかなぁ?」

 扉をノックする音が聞こえ、ノワルの声が聞こえる。不審に思ったが俺は返事をした。

「ああ、おきてるぞ?まだ寝てなかったのか?」

「・・・・うん、ちょっと眠れなかったからさ・・・あ、ちょうど面白い話を作ったんだ。えっとね、傘地蔵なんだけど・・・聞く?」

「ああ、傘地蔵か・・・って、なんだっけ?俺、詳しく知らないからな・・・・。」

 ノワルは本を取り出していった。本というよりもバインダーである。

「そう?それなら新鮮さがあっていいかもよ?」

「それなら、よろしく頼む。」


 傘地蔵? 読み手 ノワル

 昔々、あるところに貧しいですがとても正直でやさしいおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんとおばあさんはとても仲良しでした。

「零ちゃん、私たち・・・おじいさんとおばあさん役になっちゃったよ?」

「ううむ、いつの間にかおじいさんか・・・時間が経つのが早いなぁ・・・・。」

 おじいさんとおばあさんは冬は雪をしのぐ頭に乗せる傘を手作りしていました。

「なぁ、ノワル・・・二番機の調子が悪い気がするんだが?」

「あ、それなら油をさしておけば動くんじゃないかなぁ?でも、機械が導入されて楽になったねぇ。」

「そうだな、作業は今のところ管理だけでいいからな・・・。」

 そして、手作りの傘を売って生計を立てていました。

「零ちゃん、楽な時代になったよね?インターネットで物を売買できる時代になるとは思わなかったよ。」

「そうだなぁ、でも、今回は『傘地蔵』だからさすがにインターネットは駄目だと思うぞ?」

「そこんところは大丈夫だよ。」

「何でだ?」

 今日もおじいさんは朝早く起きて作った傘を背負って都に売りに行きました。

「ね?売りに行くのはおじいさんなんだよ。」

「なるほど・・・。」

「零ちゃんが行っている間に私がインターネットで売るの。」

「やるな、ノワル。」

「じゃ、いってらっしゃい。」

 都に行く途中、おじいさんは空を眺めて雪が降るかもしれないと思いました。

「雪崩にならなきゃいいんだがな・・・・近頃、雪男が山で大声出したりするからなぁ。気をつけないと・・・・。スキーヤーも多いからな・・・。」

 そして、おじいさんが都に着いたときに雪は降り始めました。

「むぅ、降ってきたか・・・まぁ、そのおかげで傘が多く売れるかもしれないな・・・。」

 おじいさんは半日、いつもの場所で傘を売っていたのですが、雪が結構降ってきたので帰ることにしました。

「く、さすがに皆天気予報を見てたのか・・・五つ、あまっちまった・・・まぁ、明日売ればいいか・・・。」

 おじいさんは雪がもっと降ってくるまえに急いで帰り始めました。都ではいつもの華がなくなってしまい、どことなく静かでした。

「なんとなくだがナレーションも暴走を始めそうな雰囲気もあるからさっさと帰るか・・・。できればタクシーを使いたいんだがさすがに余分に金をもってきてないからな。」

 おじいさんは積雪三メートルを越すのではないかと思われるほどの量の雪の中を歩き始めました。

「お、遅かったか・・・ナレーションが暴走始めやがった!くそ、傘をかぶってもなんとなく意味が無いと思うぞ?新手の嫌がらせか?」

 おじいさんがいつも都へと向かっている道は既に雪が五メートルほど積もっており、通行禁止状態になっていました。

「魔法を使えば早いんだけどな・・・・。」

「まぁ、零ちゃんがそんなことをしたら天罰が下るだろうけどね。」

「おい、ここでおばあさんは登場しないと思うんだが?」

「あ、そうだね。ごめんごめん、私は家で待ってるね!」

 しかたなくいつもとは違う道を通って帰ることにしました。しかし、そんなことをしていたら夜になってしまうかもしれないと思ったおじいさんはおもむろに携帯を取り出してどこかに電話をかけようとしましたが電池が切れていました。仕方ないので違う道をまるで試験に落ちたかのような受験生のような感じで歩いて帰ることにしました。

「おいおい、俺は携帯なんて持ってきてないぞ?それに、結局違う道に行くのなら初めからそういえばよかったのにな・・・・。」

 歩いていくうちに売れ残ってしまった傘が重く肩に乗りかかってきます。これもおじいさんの商業能力が皆無だったからです。

「ぐ、それを言われるといたいな・・。」

 ああ、なんとふがいないおじいさんなのでしょうか・・・今頃、家でおばあさんがふがいない爺はいらないと思っているかもしれません。

「零ちゃん、私は零ちゃんがいてくれるだけで嬉しいよ?」

「ありがとな、ノワル。だけど、馬鹿みたいに雪が降っているとこにおばあさんは出てこないと思うぞ?」

「あ、そうだね。」

 おじいさんは一人で妄想をし始めました。ああ、目の前には・・・・

「零ちゃんはそんなことしません!」

 とりあえず寒すぎたのでトイレに行きたくなったおじいさんは辺りを見渡して適当にチャックをおろして準備をしました。

「それもどうかと思うぞ?」

 おじいさんはパンツをずらそうとして自分がかけようとした物がお地蔵さんだったことに気がつきました。

「・・・・すんごい罰当たりなことをしようとしているな・・・俺。」

「全く、何をしようとしてるのよ!!」

「零時君、さすがにそれは・・・。」

「マスター、下品です。」

「そうだぞ、零時。」

「きたないわね、剣山はトイレにいくこともできないの?」

 おじいさんが確認するとそこには6体のお地蔵様がいました。

「一、二、三、四・・五・・あれ?6体いないと思うぞ?」

「まぁ、そこのところはいいんじゃない?」

「いっそのこと、マスターが最後のお地蔵さんになったらどうですか?」

「いや、そんなことをしたら誰がおじいさんになるんだ?」

「・・・・おじいさんは天に召されたとか・・・。」

「それ、死んでるよね?」

 お地蔵さんには段々と雪が降り積もってきており、おじいさんはそんなお地蔵さんを見てとてもかわいそうになりました。そこで、自分が不甲斐無いばかりに売れ残ってしまった傘をお地蔵さんの頭に乗せてあげる事にしました。

「まぁ、微妙に頭にくる台詞も含まれていた気がするが今回だけは見逃すとして・・・・さて、お地蔵さんが可哀想だから傘でもかけてあげるかな?」

「いや、できればそのあったかそうなコートもかけてくれると私、うれしいなぁ。」

「あ、ずるいです!!私も!!」

「私も・・・・寒い。」

「じゃ、僕も寒い。」

「そうねぇ、私も寒いわ。」

「く、なんてがめつい野郎達だ・・・・って、襲い掛かってくるなぁ!!うわぁ!!」

 しかし、おじいさんがもっている傘の数では一人だけお地蔵さんの頭に傘を載せる事が出来ませんでした。

「俺が寒いわっ!!既に下着だけだぞ!!」

「ま、心があたたかいことでさ・・・ね?」

「マスター、あっためてあげますからこっちに来てください!」

「ここに・・・寝てもいいよ。」

「ははっ、もてもてだねぇ。」

「まぁ、風邪を引かない程度にしておかないといけないわよ?」

 おじいさんは自分の頭に載っている傘を最後のお地蔵さんにかけてあげました。

「因みに、俺の所持品は既に頭の上に乗っている傘だけです。これをあげたらさすがに・・。」

「じゃ、私たちの出番はこれでいったん終わりだから・・・。」

「ばいばーい、マスター!」

「気をつけて帰ってね?」

「零時、雪崩に気をつけろよ?」

「家に帰ったら復習するのよ?」

 おじぞうさんを助けたおじいさんは家に帰り着きました。

「れ、零ちゃん!なんで下着姿で傘をかぶってるの?大丈夫?」

「・・・・寒い・・あたためてくれ。」

「零ちゃん!!ええと、もう・・・するの?まだ夕方だよ?」

「・・・妄想はいいからお風呂に投げ込んでくれ・・・。」

「うん!背中流してあげるね!!」

 そしておじいさんはおばあさんにおじぞうさまのことを話しました。

「・・・とりあえず、ろくなお地蔵様じゃなかった。うん、あんな性質のわるそうな連中を見たのは初めてだ。」

「・・・そうなんだ・・・。」

「追いはぎだな・・・俺の衣服を剥いでいきやがった。警察に通報したほうがいいかもしれん。」

「気をつけないといけないね。」

「そうだな・・・じゃ、そろそろ寝るか。」

「うん♪」

「・・・・・なんか、うれしそうだな。」

 そして、おじいさんとおばあさんは眠り、その日の夜に・・・・恐ろしいことが起きたのです。

「なんだか話が変わってきてる気が・・・・。」

 ごとっ・・・ごとっ・・・という音が外から聞こえてきており、おじいさんは目を覚ましました。そして、外を見て驚きました。

「くそっ!!後を付けられてたのか!!あの偽地蔵達め!」

「零ちゃん、あれが零ちゃんが言ってたお地蔵さん?」

「ああ、そうだ。」

 なにやらおじぞうさんたちは何かを運んできているようでした。

「はぁ、疲れるなぁ・・・。」

「まぁ、これも人助けです。」

「零時君のためだからね。」

「ギブアンドテイクってやつだね。」

「傘のお礼がこれほどの野菜なんて馬鹿らしいわ。」

「・・・・・野菜を持ってきてくれてるのか?」

 おじぞうさんたちは昼間のお礼として大量の野菜を持ってきたのでした。

「・・・零ちゃん、いいお地蔵様たちだね?」

「・・・そうだな。俺が間違ってた。」

 おじいさんはそんなお地蔵様達を見て嬉しくなってきました。

「・・・・でも、よくよく考えてみたら俺の財布が無いんだが・・・・。」

 おじぞうさまたちは家の前まで野菜を持ってくるとその野菜を置いて帰り始めました。

「いやぁ、途中でひろった財布、結構入ってたよね?」

「これから朝まで飲み明かしますか?」

「二日酔いになるかもね?」

「僕の“ハニー”達のためにお金にすこし使わせてもらおう。」

「まぁ、いまから分ければ十分よ。」

 おじいさんとおばあさんはおじぞうさまに感謝しました。

「・・・・貴様ら、許さん!!」

「れ、零ちゃん?」

「う、うわっ!!零時がマジで怒ってる!!」

「じょ、冗談です!!マスター!!」

「本当だよ!!嘘じゃないよ!!」

「・・・双三がやれって言ったんだ。」

「瑞樹!あんたなんて事を・・・・。」

 めでたしめでたし。


 俺は本当に眠りかけていたまぶたを無理やり上に押し上げて、話し終えたらしいノワルを見やった。

「・・・・ありがと、ノワル・・・・俺、そろそろ寝そうだわ。」

「あ、そう?それならよかった♪」

「じゃ、おやすみ・・・・・。」

「最後に感想聞かせて。」

「・・・・面白かったぞ。」

 ノワルは笑って部屋を去っていったのであった。内容はよく覚えていないのだが・・・。


今回の話は傘地蔵でした。どうだったでしょうか?元は真面目に書こうと思っていたのですが傘地蔵の話をあまり知らなかったので詳しく書くことができていなかったと思います。そろそろ、剣山零時の物語も終わりを迎えようとしており、先に言っておきますが『御注文は?〜魔法使いで!〜』は終わりません。短編小説で出ていたのに出ていない登場人物もいたので出したいと思うし、他にも出したい人物もいます。では、また今度!!

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