ソーラ:私はシンデレラ!!
おとぎ話?第二弾です。
四十一、
桃太郎を聞いた夜、俺は再び寝付けなかった。そんな俺の元にソーラがやってきた。
「零時君、まだ眠ってないの?風邪、よくならないよ?」
「ああ、ずっと寝てたからな・・・。ええと、もうちょっと寝るのにかかりそうだ。」
ソーラは何気に快調で俺に風邪を移しただけのようだった。
「ねぇ、ちょうど面白い本が手に入ったから読んであげようか?」
ソーラはこの前共に寝転がってから俺への尋ね方がちょっと変わっていたのであった。
「そうだなぁ、お願いする。」
「うん、じゃあ・・・・『シンデレラ』だけどいいよね?」
「ああ、構わないぞ。」
俺は枕にきちんと頭を乗せ、聞く体勢になった。
シンデレラ? 読み手 ソーラ
昔々、あるところに継母などに虐げられながら生活している少女がいました。彼女の名前をシンデレラといいました。
「ソーラ!ここの埃がかんぺきにとれてないわよっ!!」
「すみません!セレネお母様!!」
「ここもよごれてますよぉ!因みにセレネさんの心も汚れてます!!」
「ごめんなさい!ローザお姉さま!セレネお母様の心は元からです!!」
「何だかこのお味噌汁、塩が効きすぎじゃないか?」
「申し訳ありません!ノワルお姉さま!!!!」
毎日毎日いじめられてしまうシンデレラは悲しみに打ちひしがれていました。
「・・・・手を抜いてるはずは無いんだけど・・・もしかしてあの人たちって潔癖症なのかな?むぅ、お塩もそんなに入れてないし・・・砂糖を間違えて入れたような気がするんだけどなぁ・・・。味覚障害かな?」
ある日、そんな家族のところにお城で舞踏会があるというお知らせがやってきました。
「これで内職生活ともおさらばできるわ!!あんたたち、必ず王子様のハートをつらぬくのよ!!そうすればこの生活ともおさらば!!」
「わかりました、悪役顔がとってもお似合いのセレネお母様。」
「おなじく了解しましたぁ!ニヤニヤ顔が私よりも似合うセレネお母様!」
「わかりました、実はどじなお母様!」
「ええい!うるさいわぁ!!真面目にやれぇい!!」
でも、シンデレラが行くのだけは許しませんでした。
「ソーラ、貴女のドレスなんて買ってないわ。」
「な、なんで?」
「悔しいけど胸のサイズが私たちとは合わなかったのよ!!売ってないの!!」
「そ、そんなぁ・・・。」
「まぁ、お留守番をお願いするわ!さぁ、他の二人は王子様が喜びそうなかくし芸を今から覚えなさい?」
「へぇーへぇー。私が手を叩いたら上から隕石でも落とそうか?」
「わかりましたよぉ。そんなの何か役に立つのかな?」
そして、舞踏会の始まる時間帯となり、継母たちは屋敷から出て行ったのでした。
「じゃ、行ってくるわ。きちんと屋敷の警護もしておくのよ?空き巣にも気をつけて。」
「はい、わかりました。セレネお母様。盗られるものは・・無いかと思いますがね。」
一人さびしく家に残ったシンデレラは泣いていました。
「・・・あ〜あ、私も王子様に会いに行きたかったなぁ・・・。」
嘆いている彼女の元へ一人の魔法使いさんが現れました。
「く、王子様は俺じゃねぇのか・・・・こほん、私は魔法使いの・・・」
「あ、零時君・・・。」
「・・・・剣山 零時。普段からミス一つなく仕事をしているお前を見て可愛そうになった俺はそんなソーラを舞踏会に連れて行ってあげようと思う。」
魔法使いさんは魔法を発動させるために必要なものをシンデレラに告げました。
「あの、魔法使いならその必要なものもついでに出せないんですか?」
「いや、ぶっちゃけいって面倒だし・・・。まぁ、物語上はそういうことにしてくれ。」
必要なものはかぼちゃとねずみとイモリかヤモリかかべちょろでした。
「あ、かぼちゃはできればおおきな奴がいいな。ねずみもできればかっこいいやつが・・・。」
「どうでもいいんじゃないんですか?」
「ああ、別に構わんがな。なんとなくだ。」
用意してきた必要なものをシンデレラは魔法使いに渡しました。
「本業は学生だ。断じて魔法使いじゃないぞ?大体、魔法使いならソーラだっているじゃねぇかよ!俺だって王子様、やってみたい!!贅沢三昧最高!!」
「ほら、零時君・・・。」
「わかってるよっ!ちちんぽぽい?ほいさらさっら?(こんな呪文だったかな?)」
魔法使いが杖を一振りするとそこに現れたのはかぼちゃの馬車と使いの者、そして馬でした。
「あのう、なんですか・・・これ?」
「空を縦横無尽に翔るためにエンジンに違法改造を施した『ぱんぷきん号』だ。そして、使いの者はわざわざ別世界から召喚したメイド型ロボットだ。因みに執事とかもいるぞ?そして、この『ぱんぷきん号』のオプショナル・パーツとして今回選んだのは機械を超越した生命金属を用いて極秘裏に造られた『ぺがさすぅ号』だ。これは非常に貴重なもので、俺の小さき夢の・・・・」
「とりあえず、すごいのはわかったけど私の身なりじゃ・・・。」
「そうだな。」
最後に、シンデレラ自体の姿を綺麗にしてあげました。
「ほら、この地味なスーツなんてどうだ?」
「嫌ですよ!」
「じゃ、このメイド服がいいんじゃないか?俺の予想では俺が王子さまではないという時点であいつが王子様だと思うから・・・」
「他のがいいです!!」
「じゃ、このブレザーは?いや?それなら・・・このチャイニーな服は?」
「それなら学校の制服でいいです!」
「はいはい、了解しました。」
最後に魔法使いさんは言いました。
「残念ながら魔法の効力は午前零時で消えるだろう。そうすることによってソーラは下手すれば城内で働かなくてはいけなくなるかもしれないな。」
「・・・・ぷっ、零時でいいんですよね?零時君。」
「からかうのならさっさと行って結構だ。」
こうして、シンデレラはお城へ向かったのでした。そして、お城では既に舞踏会が始まっており、王子様は自分の気に入った娘を探していました。
「どれもまじめにドレスを着てまじめにしている連中だけだな。双三、意外性のある奴はいないのかい?僕としてはもっと変わった娘が好みなんだ。」
「いや、頭の中がまともな連中はそんなもんじゃないかと思うけど?」
「全く、コスプレ衣装で着てくれるようなサービス満点の心優しき姫君はいないのかねぇ?双三、この際・・・適当に誰かにコスプレしてもらってそれを花嫁としていいんじゃないか?」
「いやいや、さすがにそれはどうかと思うけど?これならまだ剣山のほうがまともなこといいそうだわ。」
「ふん、やつが王子様でも似たようなこというんじゃないか?たとえば『○ラミちゃんはどこにいる!』とか『エルガイ○みたいな奴は!』などしまいにゃ、『ねじと結婚したほうがましだぁぁぁぁ』って言いそうなんだが?」
「さすがにそこまでおかしいとは思わないけど?」
継母たちが王子様に謁見しにやってきました。
「あ、お久しぶりね。」
「あ〜君たちか・・・しかしまぁ双三、本当に期待できるような子がいないね。」
「おーい、何か一言ないの?」
「いってくださいよぉ!!」
「零時に言ってもらえば?残念ながら、僕、疲れてるし・・・。適当に遊んで帰って結構だよ。」
王子様は見向きもしませんでした。
「双三、今日は『萌える心を解き放て!』の三巻が発売されると思うから買っておいて。」
「しょーがないなぁ。」
そして、シンデレラがやってきました。城内は少しばかりざわつきました。
「何、あのこ・・・学校の制服なんて着てる!」
「ちょっと頭のねじがゆるいんじゃないの?」
「でも、萌えーってやつを狙っているのよ!」
シンデレラを見た王子さまはじきじきに彼女の元へとやってきました。
「ほら、双三・・・完璧なコスプレの女の子がきたじゃないか!!このとてもきらびやかな日にあえて学校の制服でやってくるようなぐっとくるようなメガネっ子が!!」
「・・・・はぁ、それってなんだかけなしているような感じがするんだけど?で、王子さまはどうしたいんですか?」
「決まっている!」
王子さまはシンデレラのところまで辿り着くと右手を差し出してダンスの申し出をしました。
「・・・そこの君、僕と結婚してくれ!」
「って、ナレーションと全く違うぞ?王子様?」
「双三、それをいうならこれまで一度もかすってないところもあったぞ?」
「いや、ほら・・・そこはきちんと話に筋が通っていたからいいと思うけど?」
「どうせ、王子様が踊り終わった後に『僕と結婚してくれ』っていうんじゃないのか?」
「シンデレラってそうだったっけ?」
ダンスを踊っていると午前零時を告げる鐘が鳴り始めました。シンデレラは慌てて言いました。
「あ、私はこれで・・・・。」
「双三!お前が文句言っているうちに午前零時になっちまったぞ!!彼女、用事があるから帰っちまったぞ!!」
「はいはい、追えばいいんでしょ、追えば・・・・。」
「そーそー、今日の僕は王子様だからね。因みに双三は防衛隊長さん。」
階段を駆け下りる途中、シンデレラのガラスの靴が取れてしまいましたがシンデレラは気がつきませんでした。
「はぁ、何でわざわざガラスの靴を階段のところに置いたんだろう?零時君がきちんとおいてくるようにって言ったからおいてきたけど・・・。」
それから数日後、王子さまはシンデレラのことを忘れられず、落として行ったガラスの靴を手がかりに探しだすことにしました。
「はぁ、このガラスの靴の持ち主はどこに行ってしまったのだろう・・・・。」
「私たちのクラスにいるんじゃない?」
「む、せっかく人がまじめに演じようと思ったのに・・・・。」
「今更遅いと思うわよ?それに、あのガラスの靴にはきちんと名前まで書いてありましたが?」
「話、変わっちゃうと思うよ?クラスの女の子がシンデレラですか?話は変えない!!」
「いや、既に変わってると思うけど?」
そのガラスの靴は当然、意地悪な継母たちのところにもやってきましたが三人の中に該当者はいませんでした。
「え、ちょっとまだ試してないよ?」
「あんまりですねぇ・・・強行する気です!」
「まぁ、いいんじゃない?ガラスの靴がわれても困るし・・。」
そして、シンデレラの番になりました。するとどうでしょう、ぴったりとあいました。
「あ、これは私のです。ほら、ここのところに名前が・・・・。ほら、ここですよ、店長さん。」
「あ、本当ですね・・・じゃ、王子様が呼んでいるんで来て下さい。」
こうして、シンデレラは王子様と結婚しました。
「待てーい!!悪いがそのソーラは俺が頂いた!!」
「れ、零時!」
「こ、ここでも強行する気ですか!」
「零ちゃん、それはどうかと・・・。」
「ふ、出番が少ない俺はなんでもするぜ!!ソーラ、ついてこい!」
「はいっ!!」
そして、幸せに暮らしたそうです。
「・・・って、それはずるいでしょう!!」
「たしかに・・・さすがに最後の零ちゃんはなしでしょ・・・。」
「マスター!帰ってきてください!!」
めでたしめでたし。
俺は話の途中から半分寝ていたのであまり聞いていなかった。
「あの、どうでした?」
「あ?ああ・・・よかったんじゃないのか?シンデレラは王道なストーリーだと思うからな。まぁ、久しぶりに聞いて面白かったと思う。」
「そ、そうかな!私、ちょっと心配だったから・・。」
何が心配だったのだろうか?ああ、意外と読むのが下手だったのだろうか?
「零時君、今日は聞いてくれてありがとう。」
「ああ、どっちかというと俺が世話になったようなもんだから気にしなくていい。」
そういうとソーラはほほを染めて去っていったのであった。いいことがあったのか?




