ローザ:私がマスターを治します!!
三十九、
風邪、二日目・・・・俺はごほごほ言って自室の隣の部屋で寝ていた。今日は平日なのでセレネ、ソーラ、ノワルは学校に行っている。外は小雨が降って物悲しい。
「げほげほ・・・。」
「マスター!どうしたんですかっ!!」
やってきたのはローザだった。おいおい、午前中なのにくるなんて相当暇なんだな・・・・。もしかしたら友達俺以外いないんじゃないか?と心配してしまう。
「風邪・・・・ですか?なにやら顔が赤いようですね。」
「ああ、そうだ・・・・ごほごほ。」
「てっきりマスターは風邪を引かない特殊な体質だと思っていました。」
何とかは風邪を引かないといいたいのだろうか?俺はこう見えてもバカではない。
「因みに『ひまわり』が好きだった絵描きさんは?」
「ゴッホ・・・ゴッホ・・・」
「まぁ、冗談はそれまでにして大丈夫なんですか?」
「ローザが見て大丈夫だと思うならローザを眼科に連れて行かないといけないな。」
「むぅ、見て具合が悪そうだというのはわかります!とりあえず安静にしてください。」
してます。ローザが来てから咳がひどくなった気がします。ああ、時が見えるよ、ララ○。
「とりあえず、風邪は他人に移せば治りますよ。」
「単純だな、オイ。」
「ということで私に移してください。」
そういってローザは俺のベッドに入り込んだ。
「人肌で温めます。」
「お前、機械だろ?風邪、引かないだろうし・・・人肌でもないぞ?」
「些細なことです。」
適当だな〜おい。隣にローザは寝転がり、俺は何も言わずに静かにしておいた。ローザははじめのほうは俺にいろいろ(この前のメルナの末路を聞いてしまった。うう、可愛そうに・・・。)と話していたがそのうち本当に眠ってしまったようだ。
「スースー・・・・」
「可愛いものだな・・・。」
「ずずずずずっずっずずっずっずずずずっずっず」
「・・・・・。」
「ぐぁぁぁぁぁ・・・・。」
いびきか叫び声かどっちかにしてもらいたいものだ。めちゃくちゃ怖いぞ。俺はため息をつき、精神を集中。我が静かなる心の領域に何人も触れられるものなし・・・・という感じに集中していた。俺も段々と夢の世界に引き込まれていく気がする・・・・・。
「ますたぁ・・・・。」
「ぐはぁぁぁ!!」
だが、それも一時の虚ろなる夢だった・・・・寝ぼけたローザの踵落としが俺の無防備な鳩尾にクリーンヒット。その威力はたんすの角で小指を打った感じに似ている。何もしたくない虚脱感に襲われ、更にベッドの上でのた打ち回る日々・・・・・そんな日々が続くのは嫌なもんだ。
「なんのこれしきぃ・・・。」
「がじがじ・・・。」
ローザに噛み付かれながらも俺は気合で寝ようと努力していた。生まれて初めて寝るのに努力した。その努力はなかなか報われなかった。
「ますたぁ・・・おいしいです。」
「ぎゃぁぁ!!」
「・・・・えいっ・・・。」
「ぐはぁぁあ!!」
「・・・・・とぉっ!!」
「くぅぅぅ・・・。」
「あたたたたたたたたたたたたっ!!お前はもう、死んでいる。」
「あべしっ!!ってお前、絶対おきてるだろ!!」
ローザの顔をびーって伸ばしてやったのだがなかなかおきない。さらさらしている金髪をまとめてちょんまげにしてやろうかと思ったのだがまぁ・・・・俺が我慢すればいいことだ。
「せりゃっ!!」
「差l;ばあおsぢらヵだばkだらだ!!」
おい〜うぃ〜く、股間にアッパーはなしだろっ!!ああああああああああああああ・・・・・目が涙で濡れちまうぜ・・・・・痛くて、涙が出ちゃう・・・男の子だもん!!この痛みは男にしかわからんぜ・・・・
「ローザ、静かに寝てくれ。これは命令だ。」
「・・・・りょ〜かいですっ・・・・。」
本当に静かに寝てくれるのかとても心配だったが俺はとりあえず静かにして眠ることにした。ローザにきちんと毛布をかけ、俺も目をつぶる。今度こそ、俺は夢の世界に引き込まれていったのであった。
「お、帰ってきたかローザ?」
「はい、ただいまですっ!!」
ローザは自分を造ってくれた科学者の元へと挨拶をしていた。この男は彼女が
「マスター」と呼んでいる男の父親らしいが彼とは全く性格が違うのであった。
「全く、また零時の元に行っていたのか?」
「ち、ちがいますっ!市内をパトロールしていたんですよ!」
「ははっ、ちなみに君たちを造った理由は世界征服のためだったのだけどね・・・・それより、零時はどうだったかな?」
「風邪を引いていました。」
「そうか・・・・あいつも大変なんだなぁ・・・・ローザ、明日もいってやりなさい。」
「はいっ!!任せてください。」
男はローザの頭をなで、告げた。
「ローザ、嘘はついちゃ駄目だ。」
「え、嘘なんてついてませんよ?」
「・・・・零時が風邪を引くわけないだろう?」
「いえ、私も確認しましたが風を引いていました!!私も信じられなかったのですがそれは事実のようでした。」
そういって本当に驚いたような表情を見せるローザ。彼の
「マスター」が見たら悲しむかもしれない。
「そうか・・・てっきり私の息子はおばかさんだと思っていたのだが違ったようだな。だが、これである意味私もうれしいものだ。」
そういって本当にうれしそうにしている男。彼の息子が見ていたら怒り狂って強力な魔法をぶつけた挙句に甕棺墓に投入してしまう可能性もある。
「あの、みんなはどこかに行ったんですか?」
「ああ、彼女たちはお使いに行ってるよ。」
ローザのほかにも似たようなものはおり、ローザがいないときは他の人たちがローザの本来の仕事など(家事)を行っているのだ。
「全く、愛娘を盗られたような気分だよ。」
男は呟き、置いてあったコーヒーに手をつけた。その姿を見ながらローザは珍しくため息をついた。
「・・・あの、なんでマスターの母上のところに戻らないんですか?」
「ん?それはね・・・・戸籍上死んでしまっているんだ。さすがにそれじゃ、帰れないだろう?今更帰ったって何もしてあげることないからね。」
行方不明も七年経てば死亡扱い・・・・ローザは悲しそうに顔を伏せた。
「・・・なぁに、会おうと思えばいつでも会えるさ。」
男は呟いて天井を指差して肩をすくめたのであった。そして、その地下の秘密基地の基地の上では更に病状が悪化した零時が咳をしていたのであった・・・・。




