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ノワル:私は暑い日が大好き!(実は、嘘です。暑い日はだらけてます。)

三十七、

 季節も夏になり、既に学ランを着ているような物好きもいなくなった。期末テストも近づいてきており、俺は憂鬱になるばっかりだった。セレネ、ソーラ、ノワルもいろいろあったが徐々に成長しており、この調子で行けばあと一週間後には完璧に戻れるのではないだろうか?もしかしたらそのまま成長していき、怪獣サイズになるかもしれない。

 そんなくだらないことを考えていた昼休み・・・・俺はしたじきで自分を扇いでいた。昼休みなのに生徒にやる気は微塵も感じられず・・・・暑さに苦しんでいた。俺たちの高校には空調システムがあったのだが先日壊れてしまい、なぜか知らないが俺たちの学年だけ苦しんでいた。これはもしかしたら去年の冬に

「寒さなんていらねぇ!!」と断言してしまった俺の責任かもしれない。生徒は素直に机に突っ伏すかしたじきで自分を扇いでいる。クラスの大気は歪み、みんなの殺気が高まっていくのがわかる。張り詰めた空気・・・何か小さい音がしただけで喧嘩が起こりそうだった。このもやもやを誰かにぶつけたいのだろう。


「・・・・。」


 俺の隣でも中学生ほどの体格のノワルが息絶え絶えでぴくりとも動かない。このままそっとしておけばゾンビ・・いやミイラなんかになるのではないのだろうか?


「いやぁ、みんなぴりぴりしているねぇ。」


 こんな最悪の環境状況の中でも例外というものは存在しており、意外と近くにいたもんだ。


「そうね。」


 しかも、二人。瑞樹と双三は元気そうに自学などをしている。


「・・・・・。」


「零時、目が死んでるぞ?」


「情けないわねぇ。」


「・・・お前ら、きっと俺たちと根本的に作りが違うんだろうな・・・でも、どうやって・・・・ううん、もしかしたら体の中に冷却ファンが増設されているのか?それとも、自分の周囲にだけ特別なフィールドを展開し、適温にするという・・・・」


「・・・れ、零ちゃん・・・大丈夫?」


 むむ・・・死にそうな顔をしているノワルにそれを言われたら大変だな。かなり伝えるのが遅れてしまったがセレネとソーラは学校にいろいろと適当な嘘をついてレストランに行って何かをしている。あの姿でウェイトレスは出来ないのできっと皿洗いだろう。


「俺は大丈夫だぞ?」


「そう?いつもよりおかしさに磨きが掛かってたって思ったけど・・・」


 失礼だな・・・・俺はため息をついて水泳道具をけった。既に使用されており、今では不要なものだ。そのとき、廊下を乱暴に走る音が聞こえてきて、扉を誰かが開けた。皆の

「あちいんだよ!!黙ってはいってこい、この馬鹿!!」というとても息の合った視線が向けられる。


「みんな、今日の五時間目は急に体育・・・すなわちプールになったぞ!!」


「「「「うぉぉぉお!!」」」」


 皆が騒いだことは間違いなかったと伝えておこう。それはもう、違われるかと思ったくらいだ。

 さて、俺は再び水着を着用した。既に他の生徒は昼休みなのにプールに入って遊んでいる。


「れいちゃーん!泳がないの?」


 既にプールに入っているノワルが俺に尋ねてくるが俺は首を振った。


「まだ授業は始まってないぞ。」


「堅いこといってると・・・・。」


 ノワルはプールサイドにたって眺めていた俺に右腕を向け・・・・水をぶっ掛けてきた。その水は俺の目に入り、一時的だったが俺の視力が奪われる。


「うわっ・・・。」


「そんでぇ・・・・ほらっ!!」


 右足をつかまれてそのままプールにダイブ。途中プールサイドで頭を打ってしまった・・・よいこの皆、友達をプールに引きずりこむような友達を持つのはやめようね?


「ぶっはぁ!!」


「あははははは!!」


 俺は何とか息継ぎに成功し、ノワルをにらむ。まぁ、そこまで効果は無いだろうけどな。


「・・・ノワル、危うく病院にいくところだったぞ?」


「大丈夫!れいちゃんに何かあったら人工呼吸は私がしてあげるからね?」


「そういう状況に陥りたくは無いぞ!」


「ほら、そんなことより一緒に遊ぼうって!」


 そのまま俺は連れて行かれ、結局クラスの連中と昼休み中プールで遊ぶこととなってしまった。そして、授業は開始され、男子は男子に、女子は女子に分かれて授業が始まったのであった。


「零時、次は君の番じゃないか?」


「あ、そうみたいだな。」


 今日の授業は・・・五十メートルを息継ぎなしで泳ぐというものだった。勿論、それはあくまで目標であって別に達成しなくてもいいのだ。既に午前中に一度授業を行った挙句にお昼休みも無断でプールで遊んでいた俺たちの体力は赤ちゃんにもひねられるぐらいになくなっていたのであった。


「第一コース!剣山。」


「はい!」


 いちいち返事をするのは面倒でしょうがなく(はずかしい)俺はさっさとプールの中に入った。飛び込み台もきちんと備わっているのだが・・・・俺は使用しないことにしている。あれは去年のことだ・・・・飛び込み台から飛び込んだ俺は腹を強打そしてパンツが半分ほどずり落ちた挙句に水を思いっきり肺の中に吸い込んでしまったのだった。あれは正直言ってやばかった。


「位置についてぇ!よーい!」


 それ以降、俺はタイムはちょっと悪くなってしまうがプールの中に入ってスタートしている。ふ、誰にもパンツがずり落ちていたことをばれなかったことだけはラッキーだった。


「ドン!」


 俺は壁をけり、一直線にスタートした。隣を泳いでいる誰かとは結構距離が離れたようだ。ちなみに俺は体育の成績なんて平均より下だったりするが水泳のみ、他人より秀でていると自負している。まぁ、体力が無いのでそこまで長い間泳いでいると苦しくなってスピードが段々落ちていくのだが・・・・・


「・・・・。」


 さて、後半分だなと思って俺はそのまま回って壁をけりリターン。既にゴールは約二十五メートル前(当然だな。)に迫っている。ここからが正念場だ。


「ぼはっ!!」


 俺はわざと空気を吐いて正面を見据える。こうすることによって肺に空気が送られなくなってしまう。息継ぎをしていない俺は段々と苦しくなっていき・・・


「ぼはっ・・・ぼはっ・・・。」


 もだえ苦しみ、いつもより必死で手足を動かす。人間は追い詰められたときに力を発するのではないかと考えている俺なりの戦法だ。


「ぼ、ぼはっ!!(も、もうちょ・)」


 既に五メートルに迫る壁を目指して最後の一振りだと思って右腕を伸ばす・・・・が、壁に当たらずそのまま左手でタッチ。


「ぶはぁぁぁぁぁぁ!!」


 既に限界を超えて視界に霞が掛かっていた俺は海坊主のように水面に浮上。そのまま少量の水と共に空気を吸い込み(きっと微生物もすっただろうな。)吐き出す。(少量の微生物は飲み込んだだろうな。)


「零時、どうやら五十メートルを息継ぎなしで泳ぎきったみたいじゃないか?」


 瑞樹がそういってこっちに来ているがまぁ、確かにそうなのだろう。


「しんどい。」


「とりあえず次の人の邪魔になるからあがってきたらどうだい?」


「・・・・わかった。」


 俺はまるで氷の上に上るセイウチのように両腕で上ったのであった。そこへ、ノワルがやってきて疲れている俺の頭を押す。


「うぉっ!」


 力を失い、ぼろぼろの俺は当然のようにプールの中に落ちた。その後も何度か繰り返し、いい加減俺はめまいがしてきたのであった。


「あ、やりすぎた?」


「・・・・。」


 結局俺はノワルに引きずりあげられてふらふらになりながらも待っている瑞樹のところに戻ってたのであった。

 久しぶりに普通の学校生活を送ったような気がして俺はその日なんとなく幸せだった。


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