零時:紫翼の天使は・・・・・小さい子が好き?
三十五、
あれからやく三十分が経った。特に事態に変化は無かったのだが・・・・
「・・・・マスター、とりあえず児童相談所に相談しませんか?」
「違うだろ?まずは・・・・・警察に電話してから児童相談所に相談するべきだ。」
「・・・・それも違いますよ。」
「零時、まじめに考えてくれない?私、小さいままなんて嫌よ?」
「とりあえずその天使を探したほうがいいんじゃない?」
ノワルの意見に皆賛同し、とりあえず俺とローザ、ちび三人組でチームを組むことにした。
「うう・・・まさか機械にじゃんけんで負けるなんて・・・・」
「実力ですよ。というよりセレネさんがへぼいだけです。」
こうして俺とローザは彼女たちを小さくした犯人探しを始めたのであった。
「・・・でも、どうやって探すんだ?」
「とりあえず私のセンサーに感じた同等のものを探せばいいと思います。記録に残ってます。マスターは相手を見つけたときにすぐに捕まえることが出来るように準備をしておいてください。天使と言う者が本当に存在しているかどうかはわかりませんからね。」
それから十分後、俺は早速くたびれていた。いや、実際は面倒だ。
「ローザ、もう帰ろうぜ?」
「え、まだ十分しか経ってませんよ?」
「疲れた。というよりもういいんじゃない?別に小さくなっても誰も不便に感じてないと思うぞ?それに、俺も小さくなってもらったってぜんぜん迷惑掛からんからな。」
俺はそういって家のほうに歩き出した。ローザも俺の後ろを追いかけてくる。
「マスター、本当にそのままでいいんですか?」
「ああ、いいんじゃないか?長生きできると思うからな。」
俺は歩を遅くすることもなく家に帰り着いた。その玄関部分に人がいるようだった。
「あ、お客さんが来ているようですね?」
「そうみたいだな?」
俺は扉の前にいる人物に話しかけた。相手はこちらを振り返る。
「・・・あの、なにか用事があるんですか?」
「ん?ああ、失礼だが君はこの家の人かな?」
鋭い視線に四角のめがねをかけている人物だった。学ランを着ているのでどうやら高校生みたいだ。しかしまぁ、身長高い割に体もほっそりとしてはいない。
「あ、はい。」
「そうか・・・・では、剣山 零時君という名前かね?」
「え、ええ・・・。」
「ちょうどよかった。君に用事があってきたんだよ。ところで、そちらのお嬢さんは君の妹さんかね?」
「あ、違います。私はマスターの・・・ええと、その・・・」
もじもじしているローザを無視して彼は言った。
「さて、とりあえず君とそこの君に話しておきたいことがあるんだ。零時君、ここで聞いてくれてもかまわないのだが・・・・とりあえず名乗らせてもらいたいと思う。」
そういってきざみたいな感じで彼はメガネをついとあげた。
「僕の名前は霜崎 剣冶だ。とある高校の生徒会長をさせてもらっている。剣冶と呼んでくれて結構だ。」
「あ、そうなんですか・・・。」
「かしこまらなくても結構だ。僕も高校二年生だからね。」
ど、同級生だったのか・・・でもかなり相手からはプレッシャーを感じるぞ?
「マスター、固まらないでください。この人・・・・」
「あ、ああ・・・ところで、その剣冶は何か俺用があるんだろ?」
「実はだなぁ、君が魔法使いだと噂を聞いてね・・・悪いけど僕の言うことを聞いてもらいたいんだ。なに、簡単なことさ・・・言ったとおりに実行してもらえればね・・・・。」
彼は指を鳴らし、その音に反応するかのように空からセレネ、ソーラ、ノワルが落ちてきた。三人ともつかまっている。ロープでぐるぐる巻きにされている。
「・・・・さて、こんな姿を見たくなかったらはやく返事を聞かせてもらおうか?」
ええと、俺個人の意思としては別に三人が小さくなったままでもかまわないのだが・・・さて、なんと答えようか?
「え、別に小さくてもいいんじゃないか?ほら、小さいほうが可愛いから・・・。」
「そうか、君はこのような三人が趣味なのか?お兄ちゃんと呼ばれたいのかい?いい趣味とは思うが・・・本当にそれでいいのか?」
俺が相手から再び質問されて俺は黙ってしまった。
「れ、零時って小さい子の方が趣味だったの?」
「・・・おにいちゃん、どうなの?」
「おにーちゃーん!ノワルをたすけてぇ!」
「・・・・え、二人ともなに言ってるの?」
「・・・・三人とも黙っていてくれ。話の邪魔をしてもらいたくは無いんだ。」
あいにくだが俺にはそのような趣味は無いな。
「零時、僕としては彼女たちを連れて帰りたいと思うぞ?今は我慢してる。」
「・・・瑞樹、いつの間に俺の隣に来たんだ?しかも、いつもより目が怖いぞ?」
「あ、本当ですね・・・ぎらぎらしてます・・・。」
いつの間にか瑞樹が相手を見ていた。その手にはカメラが納まっており、捕まっている三人をカメラで撮り始めた。
「・・・・ふむ、なかなかの友達を持っているな。僕と趣味が合いそうだ。そこの君、理想の女性は?」
「(舞台は夕焼けで)僕を下から見つめて(さり気無く)右手を差し出してきてくれる子。もしくは朝寝ている僕の上に馬乗りになってほっぺを抑えて『朝だぞっ、お兄ちゃん!』って言ってくれる子だよ。他にも理想の女性像は・・・いるが秘密だ!」
「ふ、意見が合いそうだな。どうだ、今度僕の高校の近くにある喫茶店で詳しく話し合おうじゃないか?そのときはぜひとも僕のおつきのものも連れてこよう。彼も喜ぶ。」
「いいねぇ。実にいい。そのときは君のハニーも見せてくれないか?」
「いいだろう。ぜひともそうさせてもらう。」
ちょっと・・・俺が入り込むのは無理のようだ。俺は二人が友情を育んでいるところを見て固まっていた。
「・・・・さて、零時君はどうかね?」
「うん、零時はどう思う?」
「何が?」
「「機械の擬人化した奴。」」
はもりやがった・・・・。
「ええと、簡単に説明すると機械だよ?」
「あ、そうなのか?ううん、俺としては人型の機械が・・・・いや、ごついのが・・・。」
「マスター、あの・・・もうちょっとまじめにやってもらえないでしょうか?」
「ええとだな・・・・?・・・・はっしまった!!」
危ない危ない・・・もうちょっとで俺もあっち側に行ってしまうところだった。
「と、とりあえず!!剣冶の用件がまともなものだったら俺は条件を飲む!!」
「簡単だ。ここに召喚獣を呼び出す大きな扉を作ってくれればいいんだ。出し方はそう念じればいいだけだとおもうのだが?どうだね?」
「だ、駄目ですよ!!お兄ちゃん!!」
そういうのは捕まっているソーラだった。
「間違って化け物が姿を現してしまったら・・・・」
「・・・・まぁ、しょうがないだろ。そうすりゃソーラたちを解放するって言ってるんだし・・・。」
「約束しよう。もしも僕がその約束を破ってしまった場合は君の家に『とってもぷりてぃなお人形』を送らせてもらう。何、僕は嘘をつかないことをモットーとしている。」
「ほら、こういってることだし・・・。」
俺は三人に笑いかけて最後にこういった。
「なぁに、出てきたら出てきただ。」
そういって俺は右腕を振り上げた。剣冶は近くでそれを見ているし、瑞樹も俺を見ている。三人は間違いなく咎めるような視線を向けてきている。ローザはなにやら考え事をしているようだった。俺は早速念じる。
「・・・・よし、きたぁぁぁ!!」
俺は右腕を振り落とす。そこに、一つの門が現れた。
「うむ、礼を言おう、剣山 零時君。これで僕は帰ることが出来るようだ。じゃ、約束どおり『ぷりてぃなお人形』を君に後日遅らせてもらいたいと思う。何か聞きたいことがあるのなら教えよう。」
その門のがかすかに動き始めるのを見て俺はとりあえず口を開いた。
「あんたは一体何なんだ?」
「天使だ。」
「・・・・・。」
「なぁに、冗談じゃないさ。ほかに聞きたいことは?」
「ええと、セレネ、ソーラ、ノワル・・・あ、そこの三人を小さくしたのは剣冶か?」
「ああ、そうだ。なぁに、このまま小さいままってことはない。今さっき解除したらあと一週間もたてば元の大きさに戻るんじゃないか?」
それなら安心だ。俺は口を閉じた。今度は瑞樹が俺の隣に来て剣冶にたずねる。
「・・・・剣冶、“ハニー”と彼女、どっちをとる?」
剣冶はかなりかっこいい顔になった。そして、瑞樹を見据えて答えた。
「勿論、“ハニー”だ!!瑞樹は?」
「僕も、“ハニー”だ!!」
最後に二人はしっかりと握手をして自称天使の意味不明な剣冶は門をくぐっていったのであった・・・・。残された俺は何故だかかなり無駄に疲れたような気がしてならない。
「・・・・・あの、結局あの人は何者だったのでしょう?天使とか言ってましたけど?」
「・・・・俺が知るわけ無いだろう?まぁ、俺としてはあまり関わりたくないような人物だったな。瑞樹みたいな奴は一人で十分だ。」
俺は捕まっていた三人を解放し、ため息をついた。
「・・・・零時、全く持って今回は軽率な行動だと思うわよ?」
「そうです、私はきちんと危ないといいました。」
「零ちゃん、意外と我を通す人だったんだね?」
どうやらご立腹のようだ。三人の頭から角が生えている・・・・鬼変化?もしかしたら成長して山姥となるかもしれない。うわっ、そしたらきっと小僧を食べるんだ・・・。
「何か言うことは?」
セレネが代表して俺をにらみつけてくる。
「・・・待ってください!マスターは貴女達を助けようとしたんです!あんな意味不明で頭の中からなぞの液体を出しているような人に捕まった三人が悪いんです!謝るのはそっちじゃないんですか!」
ローザは真っ赤な目を怒りに燃やして三人を睨んでいた。
「・・・・ローザ、いいんだ。」
「ま、マスター!!そんな・・・・。」
「きっと、セレネが地面に仕掛けられていたロープかなんかに引っかかってこけて二人が起こそうとしたところを剣冶に狙われたんじゃないのか?ほら、そうすれば一挙に捕まえることが出来るだろう?」
「・・・・そうみたいですね、セレネさん・・固まってますから・・・。」
セレネはローザが言ったとおり固まっている。俺はため息をついて三人に頭を下げた。
「言うこと聞かなくてすいませんでした。」
「・・・・・今回は不問にします。次回はこのようなことが無いようにしてくださいね?」
固まったセレネの代わりにソーラが答える。
「はいはい。」
「はいは一回だよ、零ちゃん?」
「はい!」
「・・・マスター・・・なんで・・・・。」
「零時、ところで今度彼から何か小包らしきものが届いたらそのときはぜひとも僕の部屋で一緒に見ようじゃないか?それまであけてはいけないよ?」
瑞樹が何故だかそういってきた。俺は不思議に思いながらも頷いた。
「わかった。何か剣冶から小包がきたらお前の部屋に持ってくよ。」
「じゃ、お取り込み中みたいだから僕はこれで失礼させてもらうよ。」
飄々としている瑞樹はそのまま帰ってしまい、残った俺たちはとりあえず家に入ることにしたのだった。ソーラは固まったセレネを引っ張りながら家に入り、ノワルは体を慣らすように歩いていった。俺も家に入ろうとしてローザが俺に尋ねてきた。
「マスター、なんで言い返さなかったんですか?悪くないのに・・・。」
俺はその場で立ち止まってローザのほうを見ないで答えた。
「・・・・お前が同じような立場になったらお前は俺に何か言い返したか?」
「・・・・いえ、言い返しません。マスターはマスターですから。」
「そうかい、俺もそうするときがあるんだよ・・・たまにはな。ローザ、晩飯食べてくか?」
「あ、はい・・・ありがとうございます!」
ローザは俺よりも早めに入っていき、俺が最後に家の中にはいったのであった。
そして、次の日・・・俺の元に剣冶からの小包が届いた。俺は約束どおり瑞樹の部屋でそれを開けたのだが・・・・。
「うむ、かなり精巧な作りじゃないか?」
「・・・・・。」
中に入っていたのはセレネ、ソーラ、ノワル・・・・とローザのよく出来た机に飾るぐらいの大きさの人形だった。俺は瑞樹からそれらすべての人形を奪い、代わりに瑞樹に渡して欲しいと書かれている小包を渡した。それが何かは俺は知らない。




