ローザ:マスターはちょっとおまぬけ人間
あ、今気がついたけど三十回目だ・・・
三十、
俺はネイを下ろして話を聞くことにした。勿論、彼女が再び襲い掛かってこないという保証書もないので俺の脇には戦闘態勢のローザ(戦闘能力は不明)が控えていた。
「まず、その書類のことを教えてもらえないか?できれば詳しく話して欲しい。」
「・・・・・しょうがないわ。私は負けたのだからね・・・・あの書類の内容は『全人類の支配』についての事とそれを実行する魔方陣が書かれているらしいのよ。」
うわ、いきなりそこまで飛躍するのか・・・それならすごく重要な書類だな。
「それってどういうことだ?」
「そのまんまの意味。でもあの魔方陣が未完成っていうのは私以外誰も知らないわ。私がそれを知ったのはちょうどその書類がレストランの掃除をしていたときに知ったの。」
「もっと詳しく話してくれないか?」
「ええ、勿論それは構わないわ。あの日、私がお客さんからお金を払ってもらったときにあの書類を頂いたのよ。その時も魔方陣の説明をその人から教えてもらった。一種類だけだったけどね。その書類は上の人に渡してもいいけど詳しく説明まではするなって言われたのよ。よくわからなかったけど他にも色々と魔法使いに役立つ魔方陣が書かれていたかわ。彼が私に教えてくれたことはちょっとしたことだったけどね。『貴女が悪いと思ったときはこの書類を隠していただきたい。』そういって彼は出て行った。その後、私は上の人たちがこの書類を悪用するって事をたまたま聞いたのよ。だからこの書類を隠したの。」
つまり、彼女は書類を上に渡したのだ。それで俺は非常に簡単に思ったことを口にした。
「その書類を燃やせばよかったじゃないか?」
「・・・残念ながらそれは無理だったわ。何回も試してみたけど燃えなかったの。」
恐ろしい書類だ。大体紙じゃないんじゃないか?燃えない書類か・・・・。
「だからこの金庫の中に書類を隠したのよ。ここなら安全だからね。」
「ううん、でも今更になって取り出そうとした理由は?世界征服でも始めるのか?」
「・・・・違うわよ。他の二人がその魔方陣を試したいの。それが原因で毎朝毎晩毎日けんかになってしまうのよ・・・・。あの書類が本物かどうか確かめたいって言ってたわ。」
「ちなみにあの二人が試したい事って何だ?」
「・・・・力と美っていってたけどそれを信用できないわ。」
ごめん、聞くだけ無駄だった。まぁ、本当だということにしてそれはおいといてとりあえずこの書類をこのままに金庫にいれておいたほうが良いのではないだろうか?
「なぁ、ここに入れていたほうが安全じゃないのか?こうしておけば誰にもとられないわけだし・・・・。ここ、三つのコインがないと開かないんだろう?」
「・・・はたしてそうかしら?もしかしたら私の思いつかないような方法で上の人たちもしくは私の姉妹が書類を手に入れてしまったらどうするの?目も当てられないわ。」
「でも、だしたところで変わらないんじゃないのか?襲われると思うぞ?」
「確かにそうだけど・・・返り討ちにすればいいことよ。」
ネイがそういったところでどこからか爆発音が聞こえてきた。階段のほうからだ。
「・・・どうやら今日が私の姉妹の書類奪取作戦の日にちだったみたいね。迂闊だったわ。」
とても冷静に呟くネイだったのだが俺としてはうかうかしていられないような状況だ。むぅ、俺はどうすればいいのだろう?ネイは悪い人ではなさそうだ。
悩んでいる俺を見てネイは言った。その目は静かで冷えているみたいでもあった。
「あなた、この書類を守りたいのならあの二人をどうにかするべきよ。どうやら貴方にこの魔方陣が書かれた書類は必要ないみたいだからね。」
「まぁ、たしかに俺は要らないけどな。」
「あの二人がどこから攻めてくるかはわからないわ。できれば手伝ってもらえるかしら?」
差し出された右腕に困って俺はローザのほうに視線を向かわせた。困ったな。
「マスター、今の私たちはお手伝いさんですよ。ご主人様が言うことは聞くべきではないかと思います。ですが私のマスターは貴方です。お任せしますよ。」
「・・・・・そうだな。俺がやることはきまっているのかもしれないな?」
先にローザがネイに頭を下げ、俺もそれを真似た。不器用だったがしょうがない。
「・・・感謝するわ。悪いけど二人には悪役になって欲しいの。」
「どういうことだ?」
「そうね、一応この書類をもって逃げてくれないかしら?場所は・・・」
俺に書類を見せて彼女は作戦の説明をしてくれた。
簡潔に説明するならば俺とローザがネイをこの場で倒したような感じ(壁に張り付け)にしてフォルスとティフルが来たら二人を強引に倒して脱出。それ以後はネイに教えられた場所へと逃げる。勿論、彼女は残って俺たちを追ってくるそうだ。ちなみに彼女の芝居がばれてしまったら大変なので彼女は当然俺たちに本気で襲い掛かってくると・・・・さて証明終わり。
「あの二人が来たようね・・・。」
あらかた説明も終わり俺たちがネイを壁にイモリかヤモリかかべちょろのように貼り付けるとちょうど噂をしていた二人がやってきた。俺とローザは悪そうな顔をして二人に笑いかける。まぁ、ローザの顔は元から怖いから大丈夫だろうな・・・って変な顔だな。
「・・・・・ローザ、ばれたぞ。」
「そうですね、ニヤニヤ。逃げましょう、マスター、ニヤニヤ。」
ローザの演技力がしょぼいことに俺は内心呆れつつも呆然としているティフルとフォルスに向かって魔法をぶつけた。そりゃま、盗ろうとしたものを目の前で盗られたので唖然としていたのだろう・・・・あっという間に俺とローザはその場所を駆け抜けていった。
「ローザ、一応あの扉を壊しておいてくれないか?一発大きな奴を頼むぜ?」
通りぬけてきた黄金の扉を指差して俺は隣を走っているローザに頼むが顔が怖い。
「合点承知ですぜ、マスター。ニヤニヤ。任せてください、ニヤニヤ。」
いや、何もここまでそんな変な顔しながら答えなくても構わないのだが・・・と思いつつもローザは早速行動を起こした。顔はニヤニヤ目は半分つりあがっていて完璧に悪だ。
爪を黄金の門へと向けるとローザはどこから出したのだろうか・・・・ミサイルをぶっ放した。無尽蔵なのか知らないがミサイルは何発も何発も発射されている。一発?
「ストップ!!撃ち方やめぇ!!」
「了解。ニヤニヤ。」
すでに黄金の門などどこにも存在していないようで・・・・彼女たちは完璧に生き埋めとなってしまった。しまった、やりすぎたかもしれない。さて、責任は命令した俺だろうか?それとも思った以上に非常識だったローザのほうだろうか?ううむ?
「マスター・・・階段付近に誰かがいます。ニヤニヤ。」
ばたばた走っている俺とローザの前に人影が姿を現した。未だににやけている。
「・・・美奈さんか・・・。」
目の前にはお手伝い長さんが静かに立っていた。その目は俺たちから外れない。
「・・・零時さんローザさん、これは何の騒ぎでしょうか?」
「・・・・すみません、言えないんです。」
「・・・・そうですか・・・今回は見逃します。ですが、次回はさすがにそう見逃してあげることはできませんよ?ローザさん、元はそのような表情ですか?」
「ありがとうございます。ええ、ローザの顔はこんなにひどいんです。」
俺はローザを見て嘆いた。俺とローザが横を通るときに彼女は俺たちに尋ねてきた。
「・・・・零時さん気をつけておいてくださいね?今度は本気で行きますから・・・。」
「え・・・それって・・・。」
振り返るとそこには誰もいなかった。俺とローザはとりあえず地上に出ることを目標にして階段を駆け上がって行ったのであった。まだニヤニヤしている。
屋敷に鳴り響く警報から逃げるように俺とローザはネイから指定された場所へと向かってとりあえず空を飛んでいくことにした。俺はローザの背中に乗っている。
「マスター夜風が気持ちいいですね?」
「そうか?俺はちょっと寒いと思うぞ・・・って何のんきに言ってんだよ。ローザ、とりあえず敵がいないか注意しながら飛んでくれよ?相手がよくわからん奴らだから処置のしようがない。お、やっとニヤニヤ顔が消えたか・・・・心配したぞ?」
落ちたら痛いでは済まされないようだったのでローザにおんぶされるようにしがみついている。まぁ、自分で空を飛べばいいのだがあまり自信がないから遠慮しておこう。
「へぇ、ローザって意外とやわらかいんだな?」
「まぁ、女の子ですから。でも、正直言ってさっき(ニヤニヤ)のは失礼なことですよっ」
「ぎゃっ!!鼻血が・・・・。」
「・・・マスター(ニヤニヤ)しっかりしてください!!でも自業自得ですね。」
俺とローザは思いっきり騒ぎながら夜空のつかの間の散歩を楽しんでしまったのであった。く、ローザのにやついている顔がかなりむかつく。くそったれぇ!!
そして、指定されていた山の中・・・・といってもほとんど近いところだったのだがその山頂へと降り立つ。
「ええと、ここか・・・・・。」
公衆トイレの中に入って指定されていたとおりの扉へと入ったのであった。
皆さんのお陰で三十回を突破することが出来ました。いやはや、これからもよろしくお願いしたいものです。さて、予定ではあとニ話程でこの章は終わりです。不躾ですがローザファンのかたがいるなら何か一言もらいたいと思います。誰も願ってないかもしれませんが、この作品は形はどうあれ結構長続きさせたいと思ってます。それではまた今度・・・・




