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零時:小さき高飛車

二十四、

 そのまま立っておくのも馬鹿らしいのでそのままセレネを背中に乗せて俺は家に帰った。所有品は誰にも盗られないように公園の遊具のひとつに隠しておいた。家に着いた俺はとりあえず眠っているセレネを俺の部屋のベッドに寝かせ、再び公園へと向かった。しかし・・


「・・・・ソ、ソーラ・・・・どうしてここに・・・・。」


 公園内へと足を踏み入れるとそこにいたのはソーラであった。儚げな印象を受ける少女だったのだが、今はいつもより力強く・・・いや、とても恐ろしげな魔王のオーラがなんとなく見える。目なんて俺の両目をしっかりロックオン。目をそらすことなんてできず、そらした瞬間に野生動物よろしく襲ってきそうだ。


「・・・ソーラ、俺が悪かった。」


「・・・・・他に何か言うことありませんか?」


 すでに夕日がほとんど沈んでおり・・・・辺りはだんだんと暗くなってきていたのだがソーラの顔はしっかり見えた。怒っているが少し、悲しそうだった。


「・・・ええと、ううん・・・・(な、何を言えばいいんだ?)」


 とりあえずソーラの近くに一歩一歩近づいてみた。その間に時間を稼いで俺の頭の中で何を言うべきかという天使と悪魔の争いが始まった。頼んだぞ、わが心よ・・・。


天使

「・・・俺と一緒にいてくれって言うべきです。ソーラがそれを望んでいるんですよ?」


悪魔

「馬鹿野郎、そんなことしたら他の二人と話すとき間違いなく微妙な雰囲気がまとわりつくぞ?ソーラエンドにはまだ早い。」


天使

「だが、彼女が望んでいます。ここで終わらせても良いのではないのでしょうか?」


悪魔

「だめだ。とりあえず今回は帰ってくれと言うだけで充分じゃないのか?」


天使

「・・・そうですね、今回はそれで行きましょう。他の方とのエンドもありますから。」


 俺の中でとりあえず議論に決着がついた。俺の足は先ほどよりも早くなった。


「・・・・帰ってきてくれないか?また、俺に魔法を教えてほしいんだ。」


 俺は右腕をソーラに差し伸べた。ソーラは俺の目をずっと眺めていた。き、際どい。


「・・・・・それはもちろんですよ、零時君。ですが、頼みたいことがあるんです。目を、つぶってくれませんか?」


 黙って頷いて俺は目を閉じた。セレネのときと同じようにソーラは俺に体を預けてきたので体重を支えたのであった。余談だが・・・ソーラの方がセレネより軽かった。


「・・・もういいですよ。眼を開けてください。」


 目を開けるとそこは雨が降っている公園だった。俺のよく知っている公園で先ほどまでいたところだ。だが、今ではなくなっている遊具もある。


「・・・・私ちょっとだけ用事があるので行ってきます。零時君、悪いけど濡れないようにあの遊具の下に行って私を待っててください。少ししたらもどりますから・・・・。」


 俺がよく行っている公園の中に屋根のついた遊具が一つだけある。それは唐突に雨が降ってきても子どもが濡れないように作られたものでその遊具の下に避難すれば確かに濡れないだろう。ソーラがいなくなったので俺は言われたとおりに遊具の下へと走っていった。しかし、そこには先客がすでにいた。腕を組んで俺を睨んできている。


「・・・・・。」


「・・・誰、あんた?」


 遊具の下にいたのはソーラにそっくりの幼女であった。その目はソーラとそっくりなのだが目が釣りあがっている。ま、子どもがにらんできても別に怖くもなんともないけどな。

 俺は黙ってその子の対極側に座ってできるだけそのこを見ないようにした。目の前からは無視されたことでさらに目つきが悪くなっている幼女が俺をにらんできている。


「・・・私を無視しないでくれる?」


「・・・・・あ〜さっさと雨やまないかなぁ・・・・。」


 俺は独り言をぶつぶつとひとりでつぶやいていた。すると、何かが音をたてて千切れた。


「無視しないでって言ってるでしょう!!私を誰とおもってるの!!私は最高の魔法使いなのよ!!」


 魔法使いって本当にどこでもいるんだなぁ・・・・。

 のんきなことを言っていると俺の目の前の女の子は俺を遊具の外に出そうと俺に何かをぶつけようとしたらしい。だが、俺はあっさりとそれをよけた。そして、呟く。


「・・・・へたっぴ。」


「・・・許さない!!」


 俺は遊具の外に出た。女の子も俺を追いかけてきた。そして、公園での果し合いが始まったのであった。雨がかすかに降っており、俺の視界を少し遮っている。


「・・・・・あんた、私を馬鹿にするなんていい度胸してるじゃない?」


「は!よく言うぜ・・・可愛くないがきなんて相手しても面白くないからな。俺としちゃあ、その態度自体が気に食わないね。もうちょっと素直になれないのか?」


 返事には恐ろしいほどの速さで俺に向かってくる水の槍だった。どんなに速くたって別に対処のしようはある。俺は俺を包み込むようにして水の盾を作った。


「・・・く、あんたも魔法使いだったの?」


「さぁな?お前が素直になったら教えてやるよ。」


「・・・・言ってなさい!!病院に送ってあげるわ!!」


 それから約一時間ぐらいの間俺は手加減をして遊んであげた。すでに三十分のところで敵は息切れしており、俺は一方的に敵を追いかけていた。


「ほらほら、どうした?俺がタッチしたら今度はお前が俺にタッチするんだぞ?」


「きゃー!!」


 とても楽しそうに俺から逃げている。ううむ、やっぱり子どもだな。俺としてはさっさと帰って着替えたいんだが・・・・まぁ、たまにはこういうのもいいかもしれないな。


「きゃっ!!」


 さすがに疲れていたのだろう・・・ぬかるみに足をはまらせて女の子はこけそうになった。俺はすでに彼女の後ろにいたのであっさりとこけるのを阻止することができた。


「さ、これでタッチでお前が鬼といいたいんだが・・・・今日はここまでだ。今日は帰りな。お前はずぶぬれだからな・・・・・。」


「何よ、せっかく私が遊んであげてるのに・・・・もうちょっと遊んだって大丈夫よ。」


 俺は目の前の女の子の頭を叩いて告げた。


「・・・・一人で遊ぶのも良いがたまには他の連中とも遊べよ?あとな・・帰らないんなら今度は気絶するまで攻撃して警察に連れて行くぞ?」


 俺の本気が伝わったのだろう・・・・あっさりと相手は身を引いた。


「・・・わ、わかったわよ・・・・と、ところで明日もここに来るの?」


「・・・・さぁな?ま、いつかはまた会えるさ。じゃ、気をつけて帰れよ?」


 一瞬だけ暗い顔した幼い魔法使いだったが俺が右腕を差し出すとちょっと意外な顔をした。不思議そうに握っている俺の右腕を注意しているようにも見える。


「・・・・今度会えたときにこれを返してくれよ?俺にとって大事なもんだからな・・・。」


 それは俺がいつも大事にしている機械のねじだった。そうだなぁ、自慢の?一品だ。


「・・・・わかったわ。また、会いましょうね?約束よ?」


 そういって俺の前から姿を消したのであった。


 俺は再びあの遊具の下に向かい、とりあえず濡れた学生服を脱いで水を飛ばしていたらソーラが戻ってきた。全く濡れていないのが不思議だ。


「・・・・零時君、ありがとう。」


「いえいえ、こんなことぐらいお手の物ですよ。」


「・・・・目、つぶって。」


 俺は目をつぶった。俺の耳にソーラの疲れたような声が聞こえてきた。


「・・・・悪いけど・・・お姫様抱っこ・・・・お願いできるかしら?」


 体重を俺に預けてきて、ソーラは静かになった。俺はソーラを抱え、耳元で少しばかり他人がいたら言えない台詞を言ったのであった。


「・・・仰せのままに、お姫様?」


 気取って言ってみたのは良いが・・・・疲れているときにやるべきことじゃないね。目を開ければあたりは真っ暗。すでに俺が住んでいる町は暗闇の支配下に変わっていた。あれからどのくらい時間がたったのか知らないが公園の外灯がその存在意義を思う存分に発揮していたのである。よいこは帰る時間だった。


「・・・・さすがにお姫様抱っこはやめといたほうがよかったかな?」


 鞄をそのままにしておいて再び俺は家へと帰る道に足を踏み出す。しかし、その時間帯は人がよく通る時間帯なので俺はある程度人にばれないように家へと向かったのであった。勿論、俺が抱えているお姫様が目を覚まさないように・・・・・


「・・・・現行犯で逮捕だ!!そこの少年!!」


 あ、先ほどのおまわりさんだ・・・・今のご時世には珍しい熱血タイプだね・・・・。俺は明日のことを考えずに走り出した。明日の朝の太ももの具合がとても心配だ・・・・とは言っていられないので俺は走る。

 その間ソーラは一度もおきずに幸せそうに眠っていた。しかし、俺にはまだ・・・・


どうも、近頃誰かに追われているような気がしている(きっと中間テスト)気がする雨月です。さて、冗談はさておき今回の話はどうだったでしょうか?データが消えてしまう前とは大体同じようになったのですが思い出せない部分もあったのでこんな形になりました。ええと、もうひとつ伝えたいことがありますが、評価、感想をしてくれたりメッセージをくれたりした方々、非常にうれしいです。特にうれしいのは短編のものから応援してくれている方です。まだまだ文章などが雑だったりよくわからなかったりするところもありますが、そういう時は突っ込んでもらって結構ですのでこれからもよろしくお願いしたいと思います。では、また今度・・・・。

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