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零時:小さき泣き虫

二十三、

 放課後、俺はサングラスをつけて一人で帰宅していた。五十メートル先にはセレネとソーラが帰っている。ノワルの姿は見えない。


「・・・・うう、あの二人もてっきりついてきてくれるとおもったんだが・・・。」


 瑞樹と双三は全くの傍観者で俺に親指を立てて

「がんばれ!」といって送り出してくれた。サングラスも二人からのプレゼントだ。しかし、これはどっからどう見ても怪しい人物だ。周りの視線が痛い。


「・・・・しかしまぁ、考えによってはいい作戦かもしれないなぁ・・・・でも、セレネとソーラが別々に行動してるっていうのが考えられないんだけど・・・。」


 俺がよく行くプラモ屋の前でセレネとソーラは別れた。ソーラはそのままプラモ屋へと入っていき、セレネはそのまま帰り始めた。


「・・・・とりあえずセレネの後でも追いかけるかな?」


 ばれないように電柱の陰に隠れたりゴミ箱の中に入ったりほかの帰宅している人物の後ろに隠れたり・・・・警察に追いかけられたりしながら俺はセレネを追いかけた。お花屋さんの前でとまって花を見ていたりもしており・・・そのときだけは笑っていたりもした。


「・・・・ううむ、今のうちに話しかけたほうがいいかもしれんな・・・。」


 こそこそと俺はセレネの後ろに回りこんで・・・・口をあけ・・・・


「あ、すみませーん、この花、ほしいんですけど・・・。」


 セレネが店員に話しかけて俺は潔く退散した。俺、何やってんだろ・・・・・。

 そして再びセレネが動き出し始めて当然のように俺はセレネの後を追いかけていった。もうちょっとで俺の家なのだが近所の公園の中にセレネが入っていった。俺も匍匐前進のような格好で追いかける。後ろからほえてくる犬がとてもうるさい。


「・・・・零時、何か用?」


 俺のほうを見ていないのにセレネはそう答えた。


「・・・・・う、気づいてたのか?」


「・・・・零時、おばか?」


 セレネはくるりと振り返っていた。その手に握られていた花は白い薔薇だった。俺の顔をちょっとだけ見てからセレネは再び俺に背中を見せた。なんとなく、面白がっているような感じでもある。


「・・・・用があるのなら聞いてあげるわよ?」


 もったいぶったように俺に話しかけてきた。今、セレネがどのような表情をして俺の話を聞いてくれるのか・・・・それはわからなかった。


「・・・・セレネ、すまん・・・。」


「・・・・なぁに?それじゃ・・・よくわからないよ。」


 どことなくセレネが増長している様な感じがしてならないが・・・・(きっと今の表情は人を見下したような感じだろうなぁ。)悪いのは俺なのだろう・・・・・。


「・・・・俺がセレネたちを怒らせてしまってすみません。」


「・・・本当にそう思ってる?」


「おもってます。」


「・・・・じゃ、質問・・・機械と私・・・達、どっちが大事?」


「・・・・。」


 いまだにこちらを見ておらず、何を考えているのかもよくわからない俺にとってこの答えが今後、完璧に分かれ道となっているとしか思えなかった。


「・・・・機・・・い、いや・・・きまってるって!セレネたちが大事だ!!」


 決して機械と言おうとしたわけではない。そして、いつの間にか俺の目の前に顔を近づけてセレネが睨んでいたからでもない。だ、断じて私は見えない暴力に屈したわけでは・・・。


「あっそ、ちょっとは安心したわ。零時、先に私は・・・いや、ちょっと行きたい所があるの。付き合ってくれない?」


「・・・もちろんOKだ。」


 目をつぶってくれと言われたので素直に目をつぶるとセレネが俺に体を預けてきた。俺はちょっと驚いたのだが素直にセレネの体を支えた。


「・・・・目を開けてよし。」


 再び目を開けるとそこに広がっていた光景はいつかのレストランの地下室であった。


「零時、隣の部屋から誰かの泣き声がしない?」


「・・・・ああ、さっきからうるさいぐらい聞こえてるんだが?」


「泣くのやめさせてくれないかな?」


 そういったセレネの顔はいつもと違って湿っていた。もしかしたらセレネの妹さんとかだろうか?まぁ、それはおいといて俺は素直に再び従った。相手を怒らせた人が一番悪いのだ。


「・・じゃ、行ってくる。」


「うん、行ってらっしゃい。」


 俺が扉を開けて泣いている本人を見つけた。


「・・・・。」


「うぇ〜ん・・・。」


 隣の部屋にいるセレネにそっくり・・・いや、セレネをそのまま小さくしたような少女が泣いていた。床は彼女の涙でぬれていた。し、しかし・・・非常にうるさいな。


「お、お〜い、何で泣いているんだ?」


「うぇ?うぇーん!!」


 ちょっとだけこっちを見たのだが再び泣き出した。ううむ、ここは何か面白い芸当をしたほうが良いに違いない。


「・・・・そうだなぁ、ほら、これを見てな!この右腕には何も仕掛けがありません・・・・ですが、この右腕を・・・・さて、これからどうしたものだろうか?」


「ぐすっ、何か見せてくれるんじゃないの?」


「何、ちょっと待ってろ・・・今、何するか考えてるからな・・・」


「無計画だよ。」


「・・・よっしゃ、できた・・・この右腕をお前の目の前に持っていくと・・・ほらっ・・・」


ぽんっ!!


「し、白い薔薇が出てきた・・・。」


 ちなみにこの薔薇は先ほどセレネが持っていたものだ。ちょっと、頂いてきた。もちろん、黙って。


「なぁ、何で泣いてたんだ?その薔薇あげるから教えてくれないか?教えてくれるだけで良いんだ。」


「・・・あのね、私がんばってもいつも失敗ばっかりやって今日も私の代わりに友達がかばって怒られてるの・・・私いい加減・・・・どうしたら良いのかわからなくて・・・誰にも認めてもらえないの。」


 そういうと再び顔を伏せようとしたので俺は両手で女の子の頭を固定した。


「・・・・・いいかい、君が誰かは俺は知らない。君はがんばってるんだろ?」


「・・・・うん。」


「だったら・・・・だったら君がするべきことはひとつだ。これからもそのがんばりを続けることだな。」


「で、でも・・・・これまでずっとやってきたのに・・・だめだったよ?」


「大丈夫だ。自分のだめなところをほかの人に尋ねろ。心の支えをもってがんばれよ?」


「・・・・うそつかないよね?」


「当然だ。誰にも認められないっていうのなら今度あったとき俺がお前を認めてやるよ。」


 俺の答えに満足したのだろう・・・・彼女はうなずいて俺がやってきたところとは違う扉から出て行った。よくよく見てみたら俺がやってきたほうの扉はロッカーの扉だった。そのロッカーの中からセレネが出てきた。ロッカーの中はとても広い空間につながっている。


「・・・・セレネ、ここは・・・」


「零時、帰ろう?私、もう疲れちゃったからさ。」


 俺の言葉をさえぎってセレネはいつもよりあせったような声でそういった。俺も黙ってうなずいてセレネが出てきたところへ戻っていった。


「零時、また目をつぶってくれない?」


「わかった。」


 俺が目をつぶると今度は後ろからセレネが俺の背中に乗ってきた。俺は黙ってセレネをおんぶして目をつぶったままであった。

 どのくらいおんぶしていたのだろう・・・一向にセレネが何も言ってくれないのでいい加減足が疲れてきた。覚悟を決めて目を開けると公園に戻っており、背中のセレネが寝息を立てていることにようやく気がついたのであった・・・・。


いやぁ、慌てて復元しようにももう、頭の中にしか残っていないデータは頭の中の消しゴムが消していってますね。今のところはもう前書いていたものと全くの別物となってきていますが・・・・。また更新が遅くなるかもしれないですがよろしくお願いします。

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