零時:今回はまぁ、『〜の存在意義』って題名かな。
二十一、
次の日、俺は約束どおりといっては何だが・・・・時間通りに公園にやってきた。今日はいい天気だ・・・。まぁ、いい天気なのだが・・・それが必ずしも、いい結果を出すとは限らないんだがな。天晴れって奴ですか?
「・・・・零時君、きちんと来てくれたんですね?」
「ああ、ソーラが言ったからな。それに、今日は別に用事なんて無いから。」
「・・・・・そうですか。」
「・・・・・あ、ああ。」
お互い、話が続かない気がする。ソーラは元から話が得意といった感じじゃないからな。うん、これもしょうがないことなんだろうなぁ。しかし、今日は何処かに行くのだろうか?いつもよりソーラの表情が厳しい気がするな。
「ソーラ、今日は何処かに行くのか?」
俺の質問にソーラは頷き、俺の目をしっかり、じっくり、くっきり眺め・・・口を開いた。うう、そんなに睨まれると少しばかり、びびります。
「・・・・昨日零時君を襲った不埒な輩を操っていた黒幕を退治に行きます。」
おやおや、なんともまぁ・・・・物騒な話だこと。ん?それにしては気になることがあるんだが・・・・これはまぁ、他の二人に言われたことだ。
「・・・なぁ、なんであの二人を連れてこなかったんだ?」
俺の素朴な質問にソーラは台本を読みながら答えるような感じで口を開いた。心なしかその目はまぶたの中の大海を泳いでいる気がする。これも気のせいか?
「・・・あ、あの二人が傷ついたら零時君は悲しみますよね?私なんかより・・・。」
「・・・いや、俺はソーラが怪我しても同等に悲しむぞ?それに、あの二人・・・いや、セレネは確かに来たらソーラが心配するだろうから、やっぱり連れてこなかったほうがいいのかな?とりあえず、ソーラが怪我をしても俺は心配する。」
俺がそういうとソーラは微笑んだ。まぁ、その微笑みは冬に間違って咲いてしまったタンポポのような小さな微笑だった。だが、俺の心が安らいでいくのを感じる。おっと、とち狂ったことを言ってる場合じゃないな。
「・・・・ありがとう、零時君。じゃ、そろそろ行きましょう?」
「ああ、そうだな。じゃ、さっさと俺を狙っているという変人の顔を拝んでいつも通りの人生を歩みますかね?しかしまぁ、このご時勢に黒幕なんてなぁ・・・。」
そして俺たちは二人並んでその場を後にしたのであった。
「・・・・ノワル、目標が移動を始めたわよ。ちゃんと確認できた?」
「分かってるよ!見てれば分かるって!!で、あの二人がどこに行くか分かってんのセレネ?」
「さぁ?それを確かめるために私たちが動いてるの!!ほら、行くわよ。」
「あ、待ってよ・・・・。別にいいんじゃないかな?」
俺とソーラが電車に乗り、隣町へとついて・・・この昨日の場所へと再びやってきた。昨日は空を飛んできたので電車代などいらなかったのだが・・・
「なぁ、なんで昨日みたいに空を飛んでこなかったんだ?魔法使いならそんなこと余裕だろう?」
「・・・・今日はスカートをはいてるから無理ですよ。」
「ああ、なるほど。確かに飛んだら見えちゃうな。」
そんなものなのだろう。俺は納得してソーラにしたがってログハウスへの中へと足を踏み出したのであった。無用心だと思われてもしょうがないが、俺として箱の中に捕らわれていた猫の身なのでここがどのような構造なのかは分かっているつもりだ。それにソーラが言うには辺りに敵の姿は無いらしい。
「・・・彼女たちはこの時間・・・ここにはいませんからね。調査済みです。」
「そうなのか?しかしまぁ、いつの間に調査したんだ?」
ログハウスの中は昨日と特に変わりが無かった。生活感がまったくないといってもいいくらいに室内は綺麗だし、水道などはひねっても水が出てくることは無い。家具だって置かれていないのだ。埃も一部分を除いてきちんと積もっている。
「なぁ、本当にここが敵の拠点なのか?全く生活感が無いぞ?」
「・・・・・ほら、ここのテーブルの下を良く見てください。開きますよ。」
ソーラがテーブルの下に入って色々といじくっていた。すると、テーブルの下に扉が現れる。ありがちだけど、意外と分からないものだなぁ。そして俺たちの前に姿を現したのは階段だった。面白いことに足元が淡い光で照らされている。
「・・・・行きましょう、零時君?きっとこの先に面白い人がいますよ。」
「ああ・・・・そうだな。できればまともな人間がいて欲しいな。」
下にいるのは竜か鬼か・・・もしくは天使か・・・・とりあえず一般常識に考えてまともなものはいないと考えていいだろう。俺の望みは薄い。
階段を下りていったのだが・・・・そこにはとてつもなく広い空間が広がっていた。そして、俺たちが下りてきた階段に防火用のシャッターらしきものが下りる。あっさりと閉じ込められちまったな・・・・俺たち。
『ようこそ、零時。』
閉じ込められた俺たちの耳に放送が入る。うぅむ、声が変わっていないのはありがたいのだが、知り合いの声ではないな。まぁ、知り合いの中に俺を誘拐しようなんて考える奴はいないからな・・・?いや、そういえばノワルがいたっけ?
「誰だ?」
俺の問いかけに応じたものなのか知らないが暗闇だけを覆っていた空間に明かりが与えられる。そして、俺たちの前にいたのは三人の美少女を前にして立っている男だった。おっさんだ。まぁ、かっこいいワイルド系のおっさんだ。
「・・・いやぁ、最後に顔を見たのはいつのときだったかな?久しぶりだな、我が息子よ。お父さんの顔を覚えているかな?」
「・・・・!」
む、息子?それはもしかして・・・・
「・・・ソーラ、お前実は男だったのか!」
「・・・・違います!今ここで言っているのは零時君の事です!」
そんなこと知ってるさ。ただちょっとだけ場の雰囲気を和ませようとしてみただけ。だって、ここの雰囲気は殺伐としているんだからな。
「って、その前にいる美少女たちは誰だ?俺の親父はそこまでスケベ心満載なのか?」
俺の問いかけに俺の親父だと名のった者は不適に笑った。そして、ろくに顔も見ていなかった美少女の一人が前に出てくる。
「お、お前は・・・ローザ!!くくく、久しぶりだなぁ・・・・。」
「お、お久しぶりです。」
「・・・・零時君、機械の名前は覚えることが出来るんですね?私が学校で名のっている偽名を覚えてますか?」
「い、いや・・・このローザとは昨日会ったばかりだし、ソーラの偽名よりも本名のほうを大事にだな・・・・。」
たじたじとなっていたら俺を船に乗って助けにやってきてくれた人がいた。
「あ〜、悪いが時間が無いので話を進めさせてもらおう。零時、お前もこっちに来い。」
「へ、誰がそんなことでそっちにいくものかってんだ!」
俺の意思は意外と強固なものだ。それに、セレネたちにも申し訳ないからな。色々と助けてもらったりもしたし・・・・。
「こっちにくればこいつらをいくらでもいじらせてやるぞ。」
「わかりました。お父様・・・今そちらへ向かいまーす!!へっへっへっへ!!」
俺が彼らのところに行こうとすると・・・・突然俺の上にあった天井が落ちてきた。俺はあっさりと下敷きになってしまった。ぐはぁ!
「ちょっとまったぁぁぁぁぁぁ!!」
「そんなこと零ちゃんが許しても私が許さないからね!」
瓦礫の下から這い出てみると二人の見知った顔がそこにいた。そして、相手に向かって人差し指を向けて高らかに宣言している。ついでにもう一人の人影も相手に向かって叫んでいる。
「わ、私がいるからそんな機械なんて要らないのよ!!」
「・・・・・いえいえ、私がいるから零時君にはそのようなものは無用なんです。」
「ちがうよぉ!私がいるからだよ!そんなの不必要。」
そんな勝手なことを言ってくれている三人の足元に這っていき・・・俺は立ち上がった。うう、今のは本気で死ぬかと思ったぞ、二人とも。
そんな俺を見て親父と名乗った人物は俺を哀れむように見てこういった。
「息子よ、お前も色々と苦労しているのだな?」
「うるせいや!!あんたが俺の親父ってわけでもないだろ!いいか、俺はその女の子の機械じゃない、その機械を絶対に諦めないからな!!こうなったらここであんたを倒してでもその三人は絶対に手に入れてみせる!!覚悟しやがれ!!」
「・・・・まるで悪役だな?」
そんな哀れみを俺に向けたのだが俺は既に魔法を相手に放っていた。あの三人が俺の所有物になるまでさほど時間は要らないだろう。うわははははは。
だが、親父?は悲しそうに首を振っただけで・・・それだけだったのだが俺の攻撃(火球、水流、電撃)をすべて右腕で防いで見せた。うお、化け物?
「ふ、お前は機械を物として見ているのか?・・・そして、その三人の事もそう見てはいないだろうか?そんな風に見ているのなら・・・お前は間違っている。」
親父?の言葉にその場が凍りついた。俺側にいる三人が俺に何かを問いたそうな表情を向けている。誤解を解くには正直に真実を告げるまでさ。俺は機械の事を物としては見ていない・・・・そして、この三人の事も・・・・。
「・・・・俺はセレネ、ソーラ、ノワルの事をそんな物としては認識していない。何事にもかけがいの無い存在だ。例えるなら月、太陽、暗闇だな。どれも必要だ。俺の頭の中では俺を見守ってくれている存在だって思っている。それに、だ!!これがあんたが誤解していることだが・・・俺は機械の事を物だとは思っていない!!一つの存在!一つの意味!!そんで、一つの命だと考えている!!」
更に辺りが凍りついた。あれ?何か俺は間違ったことをいったのだろうか?その沈黙を破ってセレネが俺の前に立った。
「・・・・機械と私たち・・・どちらが大事?」
今はそんなことを言っている場合ではないと思う。
「セレネ、今はそんなことをいっている場合じゃないと思うが?いいか、目の前にいる敵はあいつだ。俺ではないぞ。」
「答えてよ。」
「そんなのあれを倒した後でも話せるだろう?いいか、出現率の低いモンスターを前にしたときの気持ちってわからないか?そんなときは間違いなくしとめるだろう?それが今なんだよ。で、あんたに聞きたいことがあるんだが本当にあんたが俺の親父なのか?」
俺の質問に親父?は威厳たっぷりに頷いた。
「勿論だ。今でも母さんには悪いと思って家を出ている。というより、夫婦喧嘩がおきてしまってな。あれは凄かった・・・まさか釘バットをもってくるとは私も分からなかった。あいつときたら手加減なしで私を叩いてくるのだからな。」
体中の傷(男の勲章)を見せながら俺たちに泣きながら話してくる。
「・・・因みに聞くが何故だ?」
「私の趣味をやめさせようとしたからな。おっと、話をしすぎたようだ。最後に・・・教えてやるが私が所属しているこの組織の統領は私ではない。ふふ、いつかは彼女がお前に会ってくれるさ。じゃあな。」
「あ、ちょっと待て!!」
追いかけようとしたのだが俺はセレネ、ソーラ、ノワルに囲まれてしまった。どの人の顔も俺を睨んできている。そして、俺に向かって・・・・・
「ふんっ!!」とそれぞれいって何処かに言ってしまったのであった・・・・何がしたいのだろう、この人たちは・・・。
立ち去る三人の後姿をぼさっとした感じで俺は眺めていた。
どうも、皆さん、お久しぶりです。まぁ、そこまで経っていませんが・・・・・。今のところ一応、次の章の冒頭までは書いているのですが、いかんせん、時間が無いので更新が毎日出来ていない状況です。それと、皆さんの反応を見てます。まぁ、アクセス数なのですが・・・。それはおいといて、今回以降の話をしたいと思います。ちょっとばかり心の動きというものがあったと思いますが・・・・まだまだですね。次は零時の心の整理です。応援などがあれば動くスピードが速くなるかもしれません。角が生えて、赤くなって、3倍のスピードで・・・・動きたいなぁ。




