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幽霊:誰がじゃ、ごらぁ?ああ?ぶらさがっとるもの消すぞ?

十七、

 さて、長い長い回想も終わり、セレネのチームの補欠要因となった俺は日々、皿洗いを行っている。皸になったらどうしよう?

 近頃は代わったことも無く、俺の家にやってきたノワルも今ではすっかり家の一員となっており、セレネとたまに対立するぐらいで平和である。まぁ、家の中で魔法を使っているわけではないので別にいいのだが・・・。

 そして、学校生活でもさりげない教室の生徒Aとして俺はこの二人に友達と話すようなことも話しているのだが・・・・未だにこの二人の人気は衰えておらず、俺が話をする機会はほとんどない。専ら、あちらのほうから俺に話しかけてくる。

 そして、俺がそんな平和な日々を送っていると、瑞樹がある学校の話をしてくれた。久しぶりに二人だけでの昼飯のときである。


「零時、『満月の時雨』って怪談知ってる?この前小耳に挟んでさぁ〜。」


 それがほぼ、トラウマとなっている俺は渋い顔をしながら瑞樹を見た。

近頃奴は頻繁に図書館に出入りをしているらしくそれ以外にもこの学校の長である校長ともタメ語で話しているところが目撃されている。噂ではこの学校を侵略し・・・学校名を『草木萌高等学校』などにするといわれている。まぁ、ほんとかどうかは知らないがな。俺が気にしていることはそんなことではなく、その話だ。


「・・・・ああ、あらすじぐらいなら知ってるぞ?それがどうかしたか?」


「じゃあさ、実はその話しに続きがあるの知ってる?」


 さてと、ここでこの高校に言い伝えられている怪談『満月の時雨』のおさらいといってみようか?ノワル曰く『実はね、この高校に言い伝えられていることなんだけど・・・・満月の日・・・あ、これは満月が出ている間じゃなくて、お昼でもいいだけど・・・・屋上で暗い感じを出しているとさっきの化け物が姿を現すんだって。』ということだった。


「で、続きはどうなってんだ?化け物にストーカーされるのか?」


「ううん、違うよ。その相手を見たものはね、夜中に学校に行くと雨が降り出した挙句に校舎内の窓から見える月は必ず満月になるんだって。雨が月に恋をしたって校長先生が言ってたよ。はは、面白い話だよねぇ。」


「ふぅん?なんだかファンタジーなお話しだな。で、それが続きってわけじゃないだろ?全然話がつながっていないと思うぞ?」


 瑞樹が言ったのはただ単に補足のような話だ。


「・・・・本当に満月の日にその場所に行くとね、恋人か何かを失ったこの高校の元生徒が姿を現すって言うんだ。勿論、実体は持っていないらしいんだけど・・・・誰かに頼りたいってところじゃないかな?だからさ、その男子生徒に頼られた場合は満月の夜の日に必ず彼と戦うことになるんだって。」


「なんで戦うんだ?一般市民がろくに化け物とたたけるとは思えないが?」


「さぁ?校長先生は教えてくれなかったからわからなかったよ。うん、でもそこまでそのお化けか幽霊が悪いって話は聞いていないんだって。」


 さて、何故このような平和な世界でそのようなことをしなくてはいけないのだろうかと思いながら俺はこの話をどうやら他の三人に詳しく話しておいたほうがいいのではないかと思い始めていたのである。

だってさ、この前の満月の日に屋上まで行ったのは良かったけど・・・俺はあいつと戦っていないぞ?それに、俺が冗談で言ったとおり、ストーカーになられたら色々と困るのではないかと思うのだ。別に俺に同行できるものではないと思うのだが、これでも俺は魔法使いらしい。つまり、俺もその幽霊と同じように非常識な存在なのだ。

 早速俺は昼休みにソーラ(他の二人は弁当の批評を行っている。)と一緒に弁当を食べながら俺の身に起こったことを詳しく話した。


「・・・・なるほど、だからあの時帰ってくるのが遅かったり・・・震えていたりしていたんですね。そんなに怖かったんですか?」


「ああ、今でもあれはトラウマだ。今度の満月まで結構時間があるから・・・魔法の力で何とかできないかな?後さ、この前ソーラに教えてもらった肉弾戦が役にたったんだ。ぜひとも、もっと教えてもらいたい。お願いできるか?」


 俺の頼みにソーラはふぅむと唸った後に頷いた。


「・・・・いいですけど、零時君に条件がありますね。」


「条件?一体全体それは・・・?」


「・・・・ええ、満月は簡単に出すことが出来ますよ。だけどそれはセレネに頼んでください。そして、肉弾戦を教えるのも構いません。私は零時君の師匠ですからね。ですが、その相手に対して油断は絶対にしないでください。そして、最後・・・・これが一番大変です・・・・」


 さて、一番大変な条件とはなんだろうか?ノーダメージで勝てか?それとも、三分以内に相手を倒せとか?とりあえず俺が戦うのにある程度つらい条件がつくことは間違いないようだ。ははは、平和な世の中じゃねぇな。


「・・・・零時君の剣では誰一人として傷つけないでください。」


「はぁ?それはどういうことでしょうか?」


「・・・・その言葉、そのままの意味ですよ、決して相手に怪我を負わせてはいけない。そして、ついでに言っておきますが零時君も絶対に怪我をしないでください。あなたが傷つくと私たちが・・・・・悲しくなりますからね。」


 微笑んだソーラに力強く頷こうとしてやめた。自惚れるのはよくない。


「・・・だけどさ、あの化け物はめっちゃ強かったぞ?絶対怪我する。」


「・・・・ええ、彼と同等に戦うことは不可能ですよ。そんなのはわかります。」


 じゃ、駄目じゃん?そう思った俺の考えを見透かしたのだろう、ソーラはこう言ってくれた。その顔は誰が見ても安心できるような静かな微笑顔だった。


「・・・・大丈夫ですよ、私は無理ですが、私のかわりにセレネがが零時君をあなたが理想としている戦い方ができるようになんとしてでもサポートします。」


 微妙に不安を覚えながらも・・・・その後、その他の二人に事情を説明し、俺はその夜・・・・早速挑戦しに行こうとしたのだが、セレネが止めた。


「待った、たった一日近接戦闘を習っただけでそんな相手に勝てるわけ無いじゃない。私だってサポートできるか不安なんだから・・・・。」


「だけどよぉ、こういうものはさっさと終わらせたほうがいいんじゃないのか?ほら、そしたら他人に迷惑掛けなくていいだろ?」


 現に彼女たちと俺はバイトをサボっている。まぁ、店長さんにはソーラが話してくれたらしい。(正直に話したらがんばってこいといわれたそうだ。)これ以上誰かに迷惑を掛けるのもどうかと思うね。俺だって迷惑を受けている。


「じゃ、あと一時間だけ練習して・・・・」


「だから、それが意味ないって言うの。まぁ、確かに迷惑はかかっているから・・・・しょうがないわ、私が気合を入れてついていってあげる。」


 セレネは三日月であったはずの月に向かって人差し指を向けた。すると、月は徐々に満月となっていった。これはまた、凄いマジックだこと。お月見だな。

 そして、そのまま四人で校門前へと向かっていった。特に途中で変わったことはなく、これがまた・・・・不気味なことでもあった。(途中、知り合いに会って茶化された。)黒猫も見なかったな。


「・・・・・零時君、ここから先はセレネと行くといいですよ。」


「・・・・俺としては出来るだけ人数がいたほうが安心できていいんだが?」


「零ちゃん、私たちがまわりにいたら大剣を振り回せないよ?零ちゃんが剣を短くしても相手が持ってた剣は長かったんだしさ?内輪もめは見苦しいよ。」


「あ、なるほど・・・・。確かにそうだな。」


 とても悲しいがここで二人とはお別れなのだろうか?いやいや、人生たまにはいいこともあるさ!!そして、逆もまた然りなのだ!!(どちらかというと俺は逆のほうが多いと思う。)悪いことがおきませんようにとお祈りしておこう。


「ま、セレネと一緒に行かせるのはとても不安で不満なんだけど・・・私も一度零ちゃんと一緒に行ったんだから今回は見逃してあげるよ。」


「・・・・零時君、今度は私の番ですから。セレネ・・・がんばってきてね。」


「う、うん!私に任せておいて!!絶対に零時には世話をかけさせないから!」


「さてさて、師匠方のお話も終わったから・・・それじゃ、ま、行きますかね?」


 校門のところ(校舎内にはたまに見回りがいるのだ。)で別れ、俺とセレネは二人で校舎の中に侵入(この高校の決まりでは深夜に学校に入ったものは一回目は厳重注意で二回目は校長先生を裁判官として裁判に掛けられるらしい。)したのだった。誰もいませんようにと祈るばかりだ。

 校舎内はとても怖く、俺はセレネの裾の辺りを力強く握っていた。そんな俺にセレネはあきれたような視線を向ける。む、なんだその顔は?


「・・・零時、もしかして怖いの?」


「ち、違うぞ。俺が怖いものは一番がセレネで時点が母さんとソーラとノワル、後は・・・・追試と補修、掃除当番に・・・・あとはちょっと幽霊が苦手だ。」


 真面目に答えたつもりだったのだが、セレネは更に呆れたような表情の中にも何か聞きたいような感じを受ける。顔が幽霊よりも怖い。


「・・・・ねぇ、何で私が零時の中で一番怖い対象なの?」


 いつの間に俺の手を掴んでいたのか知らないが、俺の右腕が煙を上げており・・・セレネのつかんでいるほうの手からは炎が出ている。

 こういうときは取り乱してはだめだ。相手を刺激するだけだからな。うん、心の中にはソーラを浮かべて・・・・残りの半分はお茶目で気楽なノワルを思い浮かべてみよう。彼女たちの口調を真似てこの場を丸く治めなければ・・・・。


「失礼、ちょっと違った。訂正しよう、セレネの一部分が怖い。」


 俺を掴んでいたほうの煙が消えた。セレネは今度は心配そうに俺の顔を覗き込んできた。ふむ、今のところは大丈夫だな。ここが正念場だ。


「ええっと、それって・・・どこかな?知らないうちに零時を馬鹿にしてた?」


「いや、はっきり言うが・・・お前の間近で見る寝顔が怖いの♪」


 俺の右手が真っ赤に燃える!!お水をかけてと必死に叫ぶ!!


「じょ、冗談だセレネェ!!お前の寝顔は意外と可愛いから・・・・ぐあぁっ!!」


「き、きえてしまぇぇぇぇ!!後、人の寝顔をじっくり干渉するなぁ!!」


 どう考えても深夜の校舎の中でこのようなことをするととてもじゃないが、色々と心配になってくる。今頃見回りのおじさんがこっちに走ってきているに違いない。だって窓ガラスが一枚ばかり溶けてしまったからな。


「す、すまん、セレネ。今はふざけてないで屋上へ向かおう。」


「ふん、ふざけているのは零時の頭の中よ!全く、こういうときに限って・・・。」


 そりゃごもっともだと思いながらまた俺はセレネに隠れるようして階段を上り始めたのであった。ああ、興奮醒めたらまた闇が怖くなったわな。


「いやぁ、セレネが先に歩いてくれるおかげで俺はセレネの背中を見るだけですむ。うん、意外とセレネはたくましいな?え、何で褒めてるのに睨むんだ?」


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