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幽霊:いないいない!ばぁ♪

十三、

 月が天空に輝いている夜は基本的に公園で魔法を操る?勉強をすることになっていた。無論、監督をしているのはソーラのほうだ。セレネは今頃家で何かをしているに違いない。明るいときはセレネで暗くなったらソーラが教えている。


「・・・・今日は魔法を使った肉弾戦の練習をしてみたいと思います。」


「・・・魔法で肉弾戦?魔法で遠距離先方が取れるのならそっちを鍛えたほうがいいんじゃないのか?しかも、誰と戦うんだ?」


「・・・・確かに、魔法の最大の利点は『離れて攻撃できる』ことですが、あまりにすばやい相手には全く威力を発揮できません。それと、護身用です。」


 ソーラは俺に何かを教えてくれるときは丁寧な口調になる。まぁ、普段は寡黙で冷静なのだが、教えてくれるときは嬉しそうで楽しそうで・・・・とても人間くさいところがありそうなのだ。そういうのもいいのかもしれない。


「へぇ、でも近付いた敵に思いっきり強い魔法を使えばいいんじゃないのか?自分には魔法は効かないんだろ?」


「・・・・零時君、それでは、近くにいる仲間に当たったりしますよ。魔法使いは基本的に三人で一組です。それに、衝撃なんかは普通に受けてしまうんですよ。」


 そうなのか、全然知らなかったな。まぁ、魔法使いが三人で人組なのは知っていたが。それならそれでさっさと教えてもらうかな。俺もソーラに話をしたいし。


「じゃ、そういうときの対処の為にそれをするのか?」


「・・・・・ええ、この技術を覚えれば素人の魔法使いにはほとんど勝てるでしょうね。同じ肉弾戦の練習をしている方々にも五分の戦いを約束できると思います。それに、この肉弾戦は・・・・どちらかというと古代魔法を使う人たちのほうが得意なんですよ。近距離と遠距離の魔法を一度に使えますからね。」


「じゃ、ちゃちゃっと教えてくれ。」


 それから・・・・・さまざまな失敗を経て、俺は・・・必要なのか知らないが、対魔法使い用のための武器を作り終えたのであった。基本的な剣の形だ。


「・・・・はい、なかなか・・・いいですね。その剣の作り方を覚えておけば、小さくしたり更に大きく出来ます。それを作り出して振り回す場合はその剣の形のイメージを強く持ってくださいね。イメージが消えたりしたらその剣も姿を消しますから。あとは近くに電線など危険物が無いことを確認してください。」


「ああ、わかった。(それ、凧揚げのときに注意すべきことなのでは?)」


 そしてこのとき、俺はソーラにノワルの事を話し始めたのであった。それから・・・・俺の苦労は再び始まったのだろう。いやいや、人生は苦労の連続だ。


「なぁ、この前戦った奴を俺の代わりにこのチームの中に入れたらどうだろうか?実力だって結構良かったんだろ?それに、意外といい奴だと思うぞ?」


「・・・・あの方をですか?何でまた?零時君、事情を事細かに教えてください。」


 俺は彼女の事を事細かに説明し、そこまで悪い奴でもないと伝えておいた。俺が言ったことを信用してくれたのかどうかは分からないが、ブランコに座ってソーラは考え、答えを出した。考えたのは一こぎの間だけだ。


「・・・・そうですね、仮にもチームリーダーはセレネなのですからそのセレネがどういうかまでは分かりませんね。セレネに対して彼女は結構怒っていましたから・・・・まぁ、実力はとてもすばらしいですし、最下級の私たちのチームに入ってくれれば、仕事の能率もよくなると思います。まぁ、彼女もセレネの事を嫌っていますからどうなるかまではわかりませんがね。」


「じゃ、ソーラは賛成か?」


「・・・・ええ、私は賛成ですが、その方をチームに入れると零時君はどうするんですか?余ってしまいますよ。」


 俺の事は既に考えている。そのことを俺なりに伝えてみた。簡潔に・・・・。


「補欠要因。」


「・・・・・なるほど、私たちの誰かに問題が出来たとしても零時君が代わりに何とかできるということですね。でも、セレネにどうやって伝えるんですか?それに、あの方にはまだ説明してませんよね?」


 そうだった、俺はまだ・・・ノワルに自分が魔法使いでセレネたちのチームに入っていることを伝えていない。そして、彼女にそのチームに入らないかともまだ伝えていないのだ。え?無計画で無責任?しょうがないじゃん。


「・・・今日のところはいったん家に帰りましょう。とりあえず、この話はセレネに話しておいたがほうがいいでしょうね。」


 そういってソーラは眼鏡をはずした。そして、手に持っていた手帳をしまい、先に歩き出した。俺もその後を追うことにした。


「そういえば、ソーラって今のところ若手NO1なんだよな?」


「・・・・うん、そうらしい。だけど今の若手は零時君。」


「でも、何で最下級のチームなんだ?」


「・・・・処罰が多い。減給される事、二、三回。」


「なるほど、それもセレネのせいだな。ソーラがそんなことをすると考えにくい。」


「・・・・一人の責任はチームの責任。彼女のフォローを出来なかった私のせい。」


 厳しい世の中だと思いながら俺たちは綺麗な月を眺めながら自宅に帰りついたのであった。玄関を開けるとセレネが俺たちを待っていたようだ。


「ソーラ、零時・・・・今日は遅くなかった?怪我でもした?」


「・・・・零時君と話しをしてた。セレネ、零時君から話があるって。」


 ソーラにそういわれ、俺は不思議そうに視線を向けてくるセレネに先に俺の部屋に行ってもらうことにしてソーラと再び話をし始めた。


「なぁ、今から言って大丈夫かな?でも、俺よりソーラのほうが・・・。」


「・・・・私が思うに、セレネに話すのはあなたが一番の適任者。それに、今言っても後で言ってもあまり変わらないと思う。それに、私はセレネに話すことよりやらなくてはいけないことがある。悪いけど、お願い。」


「・・・・そうだな、俺が先にソーラにいったんだし・・・・分かった。がんばってみるよ。」


「・・・・がんばって、零時君。私、応援してくるから・・・。」


 ソーラに見送られて、俺は自室の扉を勢い良く開けた。今日の夜は母さんがいないので・・・・彼女たちがいなかったらとてもさびしい夜になっていたのかもしれない。それに関しては騒がしくなった我が家にはお礼を言っておかなくてはいけないだろうな。


「どうしたの?気合はいってるけどさ?・・・で、話ってのは何、零時?」


「あ、ああ・・・実はな、ある魔法使いをこのチームに入れたいんだが?」


「ふぅん、その子はきちんと実力が備わってるんでしょうね?」


 お前が言えるのかと思ったが、一生懸命やっているその姿に俺は近頃応援してやりたくなっていた。実際、応援もしているのだがな。まぁ、セレネはまだ成長途中だし、ソーラが言うには前よりは(ちょっとだけ)よくなったそうだ。


「まぁ、実力はあるだろうな。それに、セレネが知ってる奴だぞ?」


「へぇ、私が知ってる子でまだチームに入ってないそんな子、いたっけ?もう一度言うけど私の知り合いのほとんどは実力のあるチームを組んでるわよ?」


 不思議顔でそんなことを言っているが、確かにそうだろうな。まさか、あのノワルが今から言う相手とは一ミクロンも思っていまい。さて、話を切り出してみるかな。セレネの顔は犯人を推理している名探偵のようだ。


「実は、この前・・・・俺を誘拐していったノワルだ。」


「・・・・却下。なんで、私があの女と仲良くしないといけないのよ?」


 やはり、そう来たか・・・・頬っぺた膨らましているセレネを見ながら俺は心の中でため息をついた。おいおい、子どもじゃないんだから・・・・。


「いやまぁ・・・いいだろう?そうすればこのチームの実力も上がるわけだし・・・・・。チームの人数は一人余っちまうが・・・」


「どうせ、外されるのは私でしょ?零時も見てたわよね?あの無様な戦い方・・・・それで、ソーラの首を絞めているのは私って思ったんでしょ?そう・・・なんでしょ?うう・・・・」


 急に泣き出してしまったセレネ・・・・おやおやこいつも泣くことがあるなんてな。てっきり血も涙も流れていないような非常な奴と思っていたんだが・・・。いや、冗談だ。ソーラが言うにはいつも影で泣いていたそうだからな。意外だ。


「いや、セレネは上達しているからな。このチームから外れるのは俺だ。素人の俺が配属されるのはちょっと的を外れた意見だからな。」


「え?で、でも・・・・私は零時の能力は誰よりも強いと思うけど?」


 涙を流すのは止まったのだが、困惑している顔に俺は理解してもらうために事情を告げた。強がりな奴には真実を告げ、合理的に解決する方法がお勧めだ。


「・・・・確かに、俺は誰よりも強いらしいが、理由はそれだけじゃない。お前がクビになったとき、お前の悲しそうな顔を見たからな。俺は・・・悪いが同居人の暗い部分はできるだけ見たくないんだよ。明るい奴なら、そのままで・・・・そして、暗い奴は静かでもいいから見た目は暗くてもいいが、心の中は明るくなってもらいたいんだよ。例え、それが誰であろうとな・・・・。」


 俺の話にセレネはぽかんとしていた。いかんな、どこかこいつは頭がおかしくなったのかと思われているようだ。まぁ、俺としては真面目な考えをしているつもりなのだが・・・。セレネには笑顔が・・ソーラには真面目な顔が似合うし。


「と、とにかく!俺に魔法を教えてもらっているのだから、俺がセレネたちに恩返しをするのは当然だと思っているんだ。だからさ、どうだ?俺がノワルをなんとしてでも説得するからさ?そうすれば二人とも給料上がるんだろ?」


 俺はセレネの喉元を掴むような勢いでセレネの目を見たのであった。迫力に押されたであろう、セレネが俺の質問に頷いた。


「う、うん・・・わかった。ありがと、零時。」


「いや、何・・・・当然の事をしたまでだ。これで、俺の話は終わりだ。じゃな、俺は風呂に入ってくる。」


「あ、ちょっと待って。零時、何であのノワルに説得できるの?」


「ん?それは・・・・ノワルが俺のクラスにいるからだが?」


「って、嘘!!あの子、学校行ってるの!」


「あ、ああ・・・・」


 そして次の日・・・・俺はちょっと驚くことになる。そして、後悔もする。


いやぁ、どうもどうも・・・作者の雨月です。久しぶりにここに投稿したなかで一番古いやつを感慨深げに眺めていたのですが・・・まぁ、微妙なものですね。その後もそのシリーズにいたっては色々と出した気がしますが・・・。さて、その話題は置いといて、今回の話はどうだったでしょうか?まだまだこの章に入ったばかりなのですが・・・。まぁ、比較的にこの話はちょっとしたおまけのようなものです。じゃ、皆さんまた今度。

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