第二章 ロマンチックな怪談話?
ここから学校での話になっていきます。今後とも、よろしくお願いします。
十一、
あれから、一ヵ月後・・・俺は今では会計係ではなく、雑用係として働いている。仕事は主に皿洗いだ。それ以外は特にない。
「おら、新人!皿追加だ。」
「はーい。(くそ、面倒だな。)今すぐにでも洗ってみせますよ。」
そのおかげで今では俺が自宅の食器を洗っている。どんな皿でも俺にかかればぴかぴかだ。まさか、一ヶ月以内にここまで皿洗いが上達するとは全く思っていなかったがな。うぅむ、俺はもしかして魔法使いよりもこっちの方がいいのかも?
そろそろ俺のバイト時間も終わりを告げる。強いては俺以外の人もだ。
「よし、今日はもう帰っていいぞ。ご苦労だったな。」
「はい、おつかれさまです。じゃ、お先に失礼しますね。」
既に学校も始まっており、色々と大変だ。さて、まずは・・・・ちょっと俺が二年生にあがったときの話をしよう。回想が少しばかり長いが付き合ってくれ。
俺ともとうとう二年に進級し、今日も瑞樹が俺を学校に誘いにやってきた。
「ほら、早くしないとおいて言っちゃうよ。」
「わかってるよ。今行くから・・・じゃ、学校行ってくる。」
「零時、行ってらっしゃい。」
「・・・零時君、行ってらっしゃい。」
わざわざ玄関から出て俺を見送ってくれる二人にありがたいとおもいつつ、俺は瑞樹のほうに向き直る。そこにあったのは瑞樹のニヤニヤした笑みだった。
「僕というものがありながら浮気?」
「・・・俺は男だ。お前に興味など無い。俺が興味があるのは機械だけだ。」
「へぇ、まぁ、僕はあの子達可愛いと思うけど?あの子たちには興味ない?」
「・・・可愛いとは思うが、それ以上の感情は無いだろ、お前も?」
「勿論だよ。僕が視線を交わす相手は僕のハニーたちさ。」
できれば、一緒になりたくなかった。また同じ教室かと思うと周りの視線がいたいぜ。うん、こいつ以外の友達がなかなか出来ないんだよなぁ。
そんなことを考えながら学校への道を目指す。学校に近付くにつれて人は多くなっていき、中には緊張しているような表情・・・きっと一年生に違いない、そんな顔が学校へと吸い込まれていく。ここだけだといつもの日常だ。
新しく俺のクラスの友達となる(俺としてはどうでもいいが)連中の面を眺めていると、ふと、後ろから声を掛けられた。振り向けば黒髪の美少女だ。誰?
「おいっす、零ちゃん。元気だったかな?私はいつも通りだったよ。」
「・・・どなた?」
俺の目の前に現れたのは、黒髪を腰まで伸ばしている女の子であった。隣の席の瑞樹が茶化す。ニヤニヤの表情の中に共学が浮かんでいる。
「おいおい、それは何でも・・・浮気のしすぎじゃないか?モテオ君?」
「だから、何でそうなるんだ?現に、俺の目の前にいる女子を俺は知らないぞ?」
俺がそういうと目の前の女の子は怒ったようだ。この表情、何処かで見た気がしないでもない。さて、どこでこのやんちゃそうな表情を見たのかな?
「零ちゃんって酷いんだぁ?ちょっと髪の毛の色を変えただけで私の事を忘れるなんてさ。どうせそのかぼちゃみたいな頭の中にはあの二人の事しかないんだ?」
「・・・・その口調・・・ノワルか?」
「あったりぃ!!さすが零ちゃん!!忘れないで覚えていてくれたんだ。」
俺を見て今度はニコニコしてくる。だが、この席の持ち主は・・・名前が違うはずだが?ノワル・ダークなんて名前はこのクラスにいないぞ?スパイ?
「ノワル、その席の持ち主は黒道 暗菜という人だぞ?」
俺がそういうと、彼女は笑いながら俺に告げた。全く、健康そうな笑い方だ。
「黒道 暗菜っていうのはね、私の偽名。」
「偽名て・・・。俺はお前の事をなんて呼べばいいんだ?」
「ま、零ちゃんが私をなんて呼ぶかは任せるよ。じゃ、一年間よろしくね。」
「あ、ああ・・・。」
俺たちのそんなやり取りを見ていた瑞樹だが、うんうんと頷いていた。おい、何が言いたいんだ、我が親友よ?その意味ありげな微笑みも気になるぞ?
「とうとう、零時にも春が来たんだね?しかも、春一番は三つほど・・・いや、後一つも出てくるかも・・・・・」
「瑞樹、何が言いたい?返答によってはお前の頭の中を冬にしてやろうか?」
「さぁね?たまには考えたほうがいいんじゃないかな?ふふふ・・・。」
はぁ、と俺はひとりでため息をつき・・・・担任の先生が入ってきたのでおしゃべりはそこまでとなった。まぁ、面倒なことになりそうにないからいいか。
今日は始業式なのでやることも特になく、午前中には放課後となってしまった。持ってきていた筆記用具などをかばんの中に入れ込み、瑞樹とともに帰ろうとしたのだが、ノワルが再び俺たちに話しかけてきた。何だ、その微笑みは?
「零ちゃん、瑞樹君、何処か行こうよ?」
「そうだね、何処か行こうか?」
面倒だね、全く持って面倒だ。俺としてはさっさとかえって魔法のお勉強でもしたいのだが?ノワルは信じられるが『古代魔法振興会』は信じられん。
「あ〜俺はちょっと用事が・・・・」
「勿論、零ちゃんも行くよね?」
満面の笑みでそう言われ、俺が答えた返事は・・・・・ふ、決まってるぜ。
「あ、そうだな・・・三人で何処か行こうか?」
すまん、セレネ、ソーラ。今日はお土産を買って帰るから、許してくれ。
俺が心の中で二人に頭を下げていると、瑞樹が話しだした。どうやら、教室の一角を指差しているところを見ると俺に何かをしてもらいたいらしい。
「零時、三人だったら二人が話していると一人が余るから、あの人誘おうよ?」
教室の一番隅のほう、そこには眼鏡をかけ、みつあみの見るからにがり勉タイプの女の子が一人、座っていた。時折、眼鏡を人差し指で上げている。
その女の子を見てノワルが呟いた。珍しく真剣そうな顔だ。
「あの子、確か・・・・学年主席の・・・・」
「そ、学年主席で二年になった双三 稲穂だよ。彼女とお友達になれれば、勉強を教えてくれるかもしれないからね。」
瑞樹が何かを企んでいるのは目に見えて分かっている。ノワルは何も疑っていないようだが、俺は知っている・・・瑞樹は学年次席だ。トップとの差はわずか、十点。そんな頭の持ち主が何を教えてもらおうってんだ?みつあみの仕方か?
「というわけで、零時、彼女を誘ってきてくれ。」
ほら来た、ほら来た。絶対来るって思ってたさ。第六感って奴だ。
「却下だ。」
「零時、君は誰かにお勉強を教えてもらったほうがいいんじゃないのか?」
それは・・・・たしかにそうだろうな。これからはバイトとか魔法の勉強とか色々頭の中に入れなきゃいけないし、ここは・・・妥協するのも一つの手かもしれないな。まぁ、別に友達が出来てもかまわないだろう。
「わかった、ちょっと行ってくる。」
「君の交渉術をとくと拝見させてもらうよ。まぁ、素人さんだろうからね。」
「がんばって、零ちゃん!!応援してるよ!!」
あの二人がそこまで言う相手なのだから、きっと・・・只者ではないに違いない。何だか、ノワルが彼女を見たときの反応も気になるし・・・。
俺は意を決して彼女に話しかけた。そのとき、彼女は既に二年の授業を範囲の教科書を広げ、ノートに問題を解いている。なんて、努力家なのだろう。
「ええと、双三・・・・俺たちと一緒に何処かに行かないか?」
俺をちらりと見て、こういった。鋭い眼光が俺の目玉にささってぬけない。
「何処かにいこうかって?貴方、勉強をなめているのね?」
「い、いやそういうことじゃなくてだな・・・。息抜きって奴だ。」
ここで、俺の後ろにやってきた瑞樹にバトンタッチ。瑞樹の背中に隠れ、ノワルに目で訴える。あいつはやばい。向かってくるものは全て倒す性格だ。
「・・・・零ちゃんかっこ悪い。」
「いや、あの体中から発せられるオーラには勝てない。ぶっちゃけ、俺がこれまで生きていた中で最も苦手とするオーラだ。言い訳じゃないぞ?」
俺とノワルが話していると、瑞樹が相手に話しかけた。奴ならできるかも・・?
「やぁ、双三さん・・・どうかな、僕の使いの零時が君を誘ったんだけど?」
おいおい、いつから俺はお前のパシリになったんだ?そしてお前、何そんなさわやか系で話しかけているんだ?いつものようにしつこい感じを全面的に出せ。
話しかけられた相手は今まで見えなかった幽霊が見えてしまって驚いたような勢いで瑞樹を見た。そして、かけている眼鏡を上げ下げ・・・相手を確認し、手元の手帳(真っ黒だ。)を眺める。その手帳も気になる。
「・・・あんたが、後鳥河 瑞樹ね?ふん、なめた真似をしてくれたわね?」
なめた真似?何かこの子にしたのだろうか、瑞樹は・・・・意外とスケベ?
「ノワル、なんだかさっきより剣呑な感じがするんだけど?」
「そうだね、なんだか・・・稲穂ちゃんが一方的に瑞樹君を嫌っているようだけど?ほら、瑞樹君はさわやかに笑ってるよ?」
ここに、後鳥河 瑞樹と双三 稲穂の因縁の決着が始まったのであった・・・・・いや、別に始まらないけどな。ただ言ってみただけだ。
瑞樹を睨みつけ、双三は次のように述べたのであった。目には炎が・・・・。
「全く、進級学力テストのときにわざと一問飛ばすなんてあんたも勉強ってものをなめてるでしょ?何、そのにへらってしている笑みは?」
今回の話であらたな登場人物が姿を現しましたね。まぁ、本格的に食い込んでくるのはもうちょっと後になりそうですが・・・。この場を借りて申し上げますが、もしかしたら新しい作品を書くかもしれません。そのときはまた、よろしくお願いします。




