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『かかって来い、私の初恋!~』 『これが恋だって、気づかなかった。』   作者: 季波


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42/50

第42話「すごいじゃん」

商品化。 その二文字が、まだ自分のものにならない。

だけど。

一つだけ決めていた。

冬休みに入る前に。

(今日は話そう) 柊に。



教室へ入る。

柊はいつも通り友人と話していた。

声を掛けようとして。

やめた。



休み時間。



声を掛けようとした瞬間。

柊は友人に呼ばれてしまった。



やっぱり無理だった。

気付けば放課後だった。



「……何やってるのよ私」

凛は小さく呟いた。

帰り支度をしていたその時だった。



「真白」



聞き慣れた声。

顔を上げる。

柊だった。



「帰んないの?」



「帰るわよ」



「じゃあ行くぞ」



当たり前みたいに言う。

凛は少しだけ驚いた。

気付けば一緒に校門を出ていた。

しばらく沈黙が続く。

言わなきゃ。

そう思うのに言葉が出てこない。



「なぁ」

先に口を開いたのは柊だった。

「昨日の話」



「っ」

心臓が跳ねた。

「昨日?」



「美琴が騒いでたやつ」

覚えていた。

当たり前なのに少し嬉しい。



「……あの、これ」

凛はスマホを取り出した。



画面を開く。

何度も読んだDM。

柊へ差し出した。



「どれ?」

柊は画面を見る。

数秒。

もう一度読む。

さらに最後まで読む。



凛は落ち着かなかった。

変な文章だったらどうしよう。

勘違いだったらどうしよう。

そんな不安ばかり浮かぶ。



やがて柊が顔を上げた。

「すごいじゃん」



あっさりと言った。

「え」

思わず声が漏れる。



「いや、すごいだろ」

柊はスマホを返した。

「商品化の話なんだろ?」



「まだ決まったわけじゃないわよ」



「でも声掛かったんだろ」



「そうだけど」



「じゃあすごいじゃん」

当たり前みたいに言う。



凛は少しだけ肩を落とした。 「……それだけ?」



柊は首を傾げた。



「何か変か?」



「もっとこう」



「もっとこう?」

「驚くとか」

「昨日の美琴みたいに?」



「うん」 「もっと驚くと思ってた」



柊は少し笑った。

「いや」

「俺は『やっぱり』って思った」



「真白さ」



「なによ」



「好きな物に一直線だった」

「ずっと変わらないもんな」

「だから、いつか誰かが見つけると思ってた」



凛は黙る。

海へ行った日も。

花火の日も。

休日も。

工場で塗装していた。

「だからじゃね?」



「え?」



「そういうの」

柊は前を向いたまま言う。



夕方の風が吹いた。

凛は返事ができなかった。

胸の奥が少しだけ熱い。

「……そうかな」



「そうだろ」

即答だった。

しばらく二人で歩く。

やがて駅が見えてきた。

その時。

「創作フェスでまさか、出店側になるとはな」

柊が言った。

「俺必ず行くから」



「うん」



「じゃあ頑張れよ」

短い言葉だった。

だけど。

なぜか美琴に褒められた時より。

祖父に褒められた時より。

嬉しかった。



「……うん」 凛は小さく頷いた。

そして思う。

(私、柊のこと本気で好きなんだ。)

駅へ向かう柊の背中を見つめる。



(やっぱり。) 少しだけ笑う。

(最初に話したかったのも、柊だったんだ。)


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