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朱色のゲートウェイ ー境界ー  作者: 此花 陽
第2章:偽りの黄金、熱狂のハッキング
8/10

スイートルーム


 生放送の爆発的な「事件」から一ヶ月。


 有馬蓮はもはや一人のタレントではなかった。


 彼は、現代日本における

 **「実在する神」**へと

 神格化されていた。


 鬼童の冠番組を乗っ取る形で始まった新番組

『境界の福音』は、視聴率という概念を

 超越していた。


 蓮がただ椅子に座り、

 石化した指先を動かすだけで、

 株価が変動し、法案が通り、

 人々の流行が変わる。


 彼を「演出」する者はもういない。


 テレビ局の役員たちは、

 蓮がスイートルームから送る

「念」のメッセージ一通で、

 文字通り額を地面に擦り付けて従った。


 蓮の住まうホテルの周囲には、

 昼夜を問わず数万人の

「参拝者」が静かに取り囲んでいる。

 

 彼らは叫ばない。


 ただ、蓮が吸っている空気を

 共有したいという一心で、

 何時間も立ち尽くしているのだ。



「……これが、俺の作った世界か」



 蓮は、ホテルの特注の

 巨大な鏡の前に立っていた。


 右腕はすでに肩まで完全に石化している。

 石の表面には、複雑な幾何学模様のような

 亀裂が走り、そこから淡い朱色の光が

 脈打つように漏れている。


 それは「黄金の鎧」のようにも見えるが、

 蓮にとっては、自分を内側から食い破る

「檻」に他ならなかった。


 蓮の周囲には、選りすぐりの

「信者」たちが控えている。


 かつて彼を「不良在庫」と呼んだスポンサー、

 彼を無視したプロデューサーたちが、

 今は蓮の脱ぎ捨てたシャツを

 奪い合うようにして洗濯し、

 彼が口にする水が最高級のものであるかを、

 涙を流しながら毒見している。


 そこに「人間」の意志は介在しない。


 蓮の能力によって、彼らの前頭葉は

「蓮を全肯定すること」にのみ

 最適化されていた__。



蓮の右目から石の破片が零れ落ちる。

翌日の生放送。視聴者は見た。


司会席で、かつての帝王・鬼童が、蓮の靴に頬ずりしながら、

自分の舌を噛み切りそうな勢いで「蓮さま」と連呼する姿を。


そして蓮の背後に、巨大な、真っ白い白鷺色の鳥居の幻影が、牙を剥くように現れたことを。

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