微睡(まどろ)む石の徴(しるし)
どれほどの時間が経過したのか。
あるいは、
そこには時間などという
概念すら存在しなかったのか。
蓮の意識を現実に引き戻したのは、
頬を刺すような冷たい雨の感触だった。
「……っ……はぁ、はぁ……」
肺の奥が焼けるように熱い。
泥の混じった石畳を掴み、
蓮は必死に身体を起こした。
視界がひどく歪んでいる。
景色全体が、
古いブラウン管テレビのノイズのように
絶えず震えていた。
顔を上げると、
そこは先ほどの廃神社の境内だった。
しかし、何かが決定的に変わっている。
世界から「奥行き」が消え、あらゆる色彩が、
まるで誰かに彩度を絞られたかのように
薄汚れて見えた。
「夢、じゃ……なかったのか……」
蓮は、激痛の余韻が残る右手に目をやった。
そして、絶叫しそうになるのを
喉の奥で押し殺した。
右手の指先。
爪の生え際から第一関節にかけて、
皮膚が完全に**「どす黒い、質感の硬い石」**へ
と変貌していた。
それは、
何百年も雨風にさらされた墓石のような、
冷徹な色をしていた。
指を動かそうと力を入れると、
関節の奥で「ミシリ……」という、
生身の人間からは決して発せられるはずのない、
硬質な摩擦音が響く。
蓮は震える左手で、その石化した指に触れた。
感覚がない。
いや、正確には「触覚」が死んでいる。
代わりに、指先の芯から、微かな、
だが確実な**「脈動」**を感じた。
それは蓮自身の鼓動ではなく、
何か異質な存在が、
彼の肉体を介して呼吸しているかのような、
不気味なリズムだった___。




